サウスタウンの裏世界を牛耳る組織の大幹部。スキンヘッドの長身、口ひげにサングラスという強面の風貌に相応の、恐るべき身体能力の持ち主で、登場するほぼ全タイトル通して極限流空手の宿敵。
軍人時代に戦地の原住民から習ったと言われる棒術を駆使し、サウスタウンのごろつきたちを統制ある私兵集団に作り変え「魔王」と称されたカリスマ性の持ち主。
本名のイニシャルが「J」であること、年齢が35歳前後であること以外はその全てが謎。
「龍虎の拳(1)」の時点では、彼がユリを誘拐する前から、実はリョウとは因縁がある。金に物を言わせて裏社会を操っていたMr.BIGだが、リョウはいくら金を積んでも思い通りにならず、苛立ちを覚えていた。一方のリョウも、私腹を肥やすためにストリートファイトの大会を利用していたBIGに敵対心を覚えていた。
つまりユリの誘拐事件がなくても、いつ激突してもおかしくない関係だったのである(※1)。
※1
フランス語版Wikipediaには、「Mr.BIGは極限流空手からの先制攻撃を恐れており、一派に圧力をかけるためにユリを誘拐した」という記述がある。
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当初、ユリを誘拐して「Mr.カラテ」ことタクマを味方に引き込むことに成功するが、キングの裏切りでユリとタクマが逃亡し、リョウとロバートの手によって自身も敗れ、さらに武器の横流しが発覚。組織の中で苦しい立場にさらされる(「龍虎の拳」)(※2)。
※2
なお、スペイン語版SNKWikiによれば、「(ユリは)ギース・ハワードの代理としてMr.BIGによって誘拐された」という一文がある。
これは、ギースがBIGを手ゴマとしてユリを誘拐させたということなのか、BIGがギースを誘拐しようとしたが(トラブルが起こったか)代わりにユリを誘拐することになったということなのか、どちらにも受け取れるが、BIGがギースを誘拐したところで極限流にはなんの影響も与えられないため、前者が正しいと思われる。
これは、SFC版「龍虎の拳」で採用されたエピソードであり、海外(少なくともこのWikiの執筆者)ではこちらが正伝扱いになっている可能性がある。
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若き天才ギース・ハワードの出現によりさらに苦境に立たされ、ギースに宣戦布告して再起をかけたクーデター計画を発動するもギースの前に潰され、裏世界からもその名を消したが、虎視眈々と復活の機会を伺っている(「龍虎の拳2」)。
誘拐事件から何年経っても、そのスキンヘッドから連想される蛸や蛸のような男性を怖がらせるなど、ユリに強烈なトラウマを植えつけている。なお、彼のスキンヘッドは生まれつきのものであるらしい。
1946年7月4日生まれ。「龍虎の拳2」時、33歳。
出身地不明(「龍虎の拳」)、もしくはオーストラリア出身(「NEOGEO BATTLE COLISEUM」)。
身長187cm、体重81kg(以下にある「プリティーBIG」時は164cm、46kg)。血液型B。
趣味はブルースを聴くこと、サウスタウンの征圧計画を練ること。好物は日本食、フォアグラ、キャビア。特技はドラム演奏。
好きな言葉は「狼は生きろブタは死ね」。好みの女性は、心の隙間を埋めてくれる女性。幼少時を過ごした孤児院には毎年匿名で寄付を続けている意外な一面もある。
中国語版での表記は「比克先生」。
その過去は謎に包まれているが、アメリカ陸軍の特殊部隊にいたとされている。戦闘機の墜落事故に見舞われた空軍パイロット・ジョン・クローリーを命令違反を犯してまで救い、それ以来ジョンとは友好関係にあるが、命令違反の件で特殊部隊を除隊させられたようだ。サウスタウンの暗黒街とはいつごろから関係を持っていたかは不明だが、下野して以降はサウスタウンの闇に属する「組織」の幹部として(※3)、街のごろつきたちをまとめ上げて私兵化して君臨したり、密かにジョンと通じて米軍から武器を横流して資産と権力を築き自分の立場を強固にし、更に勢力を伸ばそうと非合法のストリート大会なども操っていた。
※3
なお、「SNKオールスター」などタイトルによっては彼自身が「組織」の生みの親であると解説しているものもある。
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……という、凄みの効いたプロフィールを持つ凄みの効いた男の筈なのだが、どのメディアで登場しても、いまいちパッとしない不遇なおじさん。開発中のあだ名はビク、ビク男、ハゲ。初登場のゲーム「龍虎の拳」ではジャンプができず、「2」ではそもそもストーリーに絡めなかった。
「龍虎の拳」でジャンプができなかった理由は、1993年のファミコン通信(現・ファミ通)でスーパーファミコン版が特集された際に「足が悪いから」と解説されていたが、これが公式かどうかは不明。そして続編以降はなかったことにされた(※4)。
※4
ただし、SFC版「龍虎の拳」のオリジナル超必殺技では「サイコクラッシャーアタック」に似た技を披露しているので、ジャンプはできなくても水平飛行はできた模様。
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コミックボンボンで連載された漫画「龍虎の拳」(ゴッセージ)では、不気味な敬語を喋り、棺桶に生息するというキワモノぶりを発揮。金のために戦場を渡り歩き、ベトナム戦争中から劇中の1979年までに、その棒で軽く五万人の首をはねたそうである(ベトナム戦争の最初期の1964年(
※5)から逆算しても、1年あたり3000人以上殺害という、異常なハイペースである)。
※5
ベトナム戦争の開戦の時期には諸説あるが、ここでは1964年8月のトンキン事件を契機とした。
なおこの戦争は1975年4月30日に終戦を迎えているので、それ以降の約4年間、BIGは別の戦地を渡り歩きながら殺戮を続けていたことになる。
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そうかと思えば「アンサイクロペディア」の「ユリ・サカザキ」の項目では、ユリの性格が「龍虎の拳2」で激変した理由について、「Mr.BIGは実はエイリアンであり、ユリは誘拐されたのではなく、アブダクションされて洗脳されたのだ」と、ついに宇宙人扱いされる始末である。
また、海外版「ART OF FIGHITING2(龍虎の拳2)」では名前も一定しておらず、アーケード版のインストカードでは「
MR.BIG」、ネオジオ版のパッケージ版では「
THE BIG」と紹介されている(日本で「THE BIG」というと、イオングループのディスカウントストアか、香川県のスーパーマーケットである)。
95年の「クイズ キング・オブ・ファイターズ」では、ギース、クラウザーともども秘密組織「Q」の手によって洗脳され、従わされているが、ギースが多数の部下とカジノバーを任される幹部、クラウザーが「Q」首領の側近を勤める大幹部なのに対し、Mr.BIGは昼日中からクイズシティーの公園をブラブラしている、下っ端の一人というか単なる怪しいオッサンである(本人曰く「下働き」)。
お前、これでええんか……。
(「龍虎の拳」ゴッセージ)
髪はあるけど胸はない。(KOFオールスター)
せめてもの救いは天獅子悦也著「龍虎の拳」「龍虎の拳2」(新声社)において、まさに「魔王」と呼ぶに相応しい圧倒的な存在感を示したことか。また1993年のアニメ版では部下のキングがコンピュータのデータベースを使いこなしていることから、自らの腕力に慢心することなく最新技術を取り入れる柔軟性も持ち合わせているのかもしれない。
だが、「龍虎2」から復活を果たした「KOF'96」では、両脇に美女をはべらせて「彼はすごいのよ」と言わせたり(なにが!?)と、その凄みを見せ付けたが、本人の新技が「カリフォルニアロマンス」だったり、「ボスチーム」の中では一番弱かったりと、微妙にキワモノに戻ってしまった。
天獅子版「龍虎の拳」でも、ゴッセージ版「龍虎の拳」でも、「分身戦法(残像戦法)を駆使してリョウとロバートを苦しめる」という設定が共通なのは面白いところだが、天獅子版では「気の力を極めると分身を操ることも可能」と、まさに「魔王」の名に相応しい解説が成されていたのに対し、ゴッセージ版では最初から三人のBIGが一人にみせかけて戦っていたという素晴らしすぎるオチがついた
(一人でもかなりの数の分身攻撃はできるので、「分身攻撃×3」が脅威なのは確かである。その後、リョウとロバートの斜め上をいく発想の逆転技でやられてしまったが)。
「君はヒーロー」でコラボ出演した際には、ギースがリョウに敗れた直後のタイミングで、再度組織で地位固めに乗り出そうとした矢先に異世界に飛ばされる。しかしそこでは怪人たちの能力に目をつけ、それを利用して再び「悪の帝国」を作ろうとユリを誘拐したが、ヒーローたちによって阻止された。
「SNKオールスター」(2019)では、20世紀後半までまとめ役がおらず暴力が蔓延していたサウスタウンで、元軍人団体の助力を得て自らのマフィア組織を築き、サウスタウンで初の支配者になった、という紹介がある。
「KOFオールスター」の2021年春イベントでは、「ユリがタコ嫌いな理由が分からない」という調律者アインのために、シュタインが一部人物を入れ替えてユリ誘拐事件(「龍虎の拳1」のストーリー)を再現しているが、その際になぜかMr.BIGは女性として登場した(プリティー・ビッグ)。さすがに尼さんにするわけにはいかなかったのか、こちらではマントと見まがえるほどの毛髪量を誇る(※6)。
※6
なお、こちらのプロフィールでは原作である「龍虎の拳」準拠で「出身地不明」となっている。「オーストラリア出身」という設定が付いたのは「NEOGEO BATTLE COLISEUM」から。
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(「KOFオールスター」では「'96」Mr.BIGが実に多くのキャラクターと絆バフ(?)「悪縁」を持っている(筆頭はなぜかアンディ・ボガード)。それだけ多くの衝突を起こしながらも、裏の世界でなり上がってキタということなのだろう。
またプリティーBIG時は97シェルミーやASレオナなど、意外な人間関係を持っている)。
そんなMr.BIGも、ユリ誘拐事件以降は極限流には関わりたがらないようで、「NEOGEO BATTLE COLISEUM」でロバートに勝った際には「しつこいヤツだ! タクマの娘は、とっくに返してやったろうが!」と、その執念に辟易している様子が伺える。
極限流の呪いは、孫子の代まで祟るのだ……。
「KOF'96」で彼が「ボス・チーム」という区分けで登場した際、誰もが「君はボスとちゃうやろ」とツッコんだものである(「龍虎1」のボスはMr.カラテ(=タクマ・サカザキ)、「龍虎2」のボスはギース・ハワード)。
……が、同一人物かどうかは不明だが、実は同名の「Mr.BIG」が、1990年にセガがメガドライブ用に発売した伝説のアクションゲーム「マイケル・ジャクソン ムーンウォーカー」でラスボスを務めており、「まったくボスになったことがない」わけではないのである。
このときは世界中の子供たちを麻薬漬けにしようとして、極限流ならぬマイケル・ジャクソンと大抗争を繰り広げ敗北、宇宙船で大気圏外まで逃走したが撃墜されてしまった。
一時期はすっかり過去の人になってしまっていたが、「NEOGEO BATTLE COLISEUM」にて復活以降、「KOF11(PS2版)」「KOF'98 UM」にも登場。やる気満々である。
……だったんだけど、エンディングや勝利メッセージ等を見ていると、やはりどこか勘違いしているようである。「テレビの出演依頼がバンバン」って、君、そんなキャラとちゃうやろ(笑)。
また「KOF13」の摩天楼ステージでは、自分の顔写真と名前を船体にめいっぱい巨大にプリントした飛行船が飛んでいるが、誰が依頼した仕事であろうか。本人は表ざたにならない方がよい立場だと思うのだが、上記のテレビ出演の件も合わせて、本人に気持ちに変化でもあったのだろうか?
表社会の顔としては、恋愛ADV「Days of Memories 〜恋はグッジョブ!〜」で会社社長として登場。取引先のOLである不知火舞を気に入り、執拗に声をかけては困らせていた。舞曰く「女性にはモテる」そうなのだが……。
分かりやすい悪党面。
(THE KING OF FIGHTERS:DESTINY)
「バトルスピリッツ龍虎の拳」
CGアニメ「THE KING OF FIGHTERS:DESTINY」では、第20話で用心棒時代のキングのボスとして登場したが、かなり若く、なんとなく茅ヶ崎あたりにいるイキがったサーファーに見えなくもない。
この時もユリを誘拐しているが、目的はタクマではなくリョウであり、彼を誘い出して用心棒のキングをぶつけ潰す算段だったようだ。
(しかし、リョウはキングを倒してユリを救出した後は、Mr.BIGを完全無視して帰ってしまった。もしくは、キングの前に倒された?)
超がつく問題作であるハリウッド実写版「KOF」では、彼をモチーフにした「サム」という選手が登場(ちなみに普通の金髪のお兄さん)。映画の最初の戦いで不知火舞を棒術で苦しめたが、棒を奪われて頭を殴られたり、「そのコートはママに借りたの?」などとアメリカンジョークを飛ばされたりと散々な屈辱を味わって敗北してしまったあげくに、試合後にルガールに射殺された。
(なお、コートはママに「もらった」らしい。ちなみにこのサム兄さん、めっちゃ身体が硬い)
なお、93年のアニメ版「バトルスピリッツ 龍虎の拳」では、サングラスの下は隻眼であり、右眼窩にはダイヤモンドらしき宝石(「シリウスの瞳」とは別のもの)がはめられていることがわかる。
担当声優は、
- マイケル・ビアード氏(Michael Beard)(「龍虎の拳」「龍虎の拳2」)
- 臼井雅基氏(攻略ビデオ「龍虎の拳2」)
- 中まさる氏(「KOF'96」「同98」「同'98UM」「同2000」)
- 柚木伸介氏(「バトルコロシアム」「KOF11(PS2版)」)
- 故・家弓家正氏(1933-2014)(アニメ「バトルスピリッツ 龍虎の拳」)
- クリフ・ラゼンビー氏(Cliff Lazenby)(海外版OVA「BattleSpilits Art of Fighting」)
- 荒井勇樹氏(アニメ「KING OF FIGHTERS DESTINY」、ゲーム「KOFオールスター」)
- 齋藤綾氏(「KOFオールスター」プリティーBIG)
- 井手らっきょ氏(SFC版「龍虎の拳」TVCM)
ハリウッド版でサム兄さん(映画の英語版Wikiでは思いっきりMr.BIGって書いてある。映画無視!)を演じたのはサム・ハーグレイブ氏(吹替えは小野友樹氏。サム兄さんは後に映画監督になっている)。
家弓家正氏は、ゲーメストの攻略ビデオ「リアルバウト餓狼伝説」でナレーションを担当している。
名前の元ネタはおそらく、「弁護士、金融プロ、暴力団」の3点セットを常備するシンジケートタイプの犯罪集団を作り上げ(Wikipedia)、アメリカの犯罪組織の元祖とも言われるギャング・実業家のアーノルド・ロススタイン(1882〜1928)のあだ名「Mr.BIG」。ロススタインはほかにも「The Brain」「The Fixer」「The Man Uptown」「The Big Bankroll」など、数々のあだ名で呼ばれている(前述の「The BIG」もロススタインから来ているものと思われる)。
ポール・ロジャース、ポール・コゾフらが在籍していたイギリスのロックバンド「Free」(1967〜1971、1972〜1973)の楽曲に「Mr.BIG」がある。
また、その楽曲から名をもらったというアメリカの同名のバンド「Mr.BIG」(1989〜2002、2009〜2025)。こちらはビリー・シーン、エリック・マーティン、ポール・ギルバート、パット・トーピーという華やかな顔ぶれから、結成当初から「スーパーバンド」と呼ばれ、日本でも多くのファンを獲得した。彼らにとっても日本は愛着があるらしく、2025年の「ファイナルツアー」のラストの舞台に13度目の日本公演を選択している。
KOF、
天獅子悦也、
アンチ極限流チーム、
ギース・ハワード、
キング、
キング・オブ・ファイターズ、
極限流空手、
ジェニファー・ブラウン、
ジャック・ターナー、
不知火舞、
シリウスの瞳、
組織、
タコみたいな男性、
タクマ・サカザキ、
血に染まる燕のユリ、
バトルスピリッツ 龍虎の拳、
リョウ・サカザキ、
ロネット・サカザキ