フィスト

1996年11月22日発売/イマジニア/(ネタ的に)1億点(主観)/0点(客観)

 本作は、SFCから続く「プリティファイター」シリーズの一作です。パッケージや取説の、どこにも触れられちゃいませんけど。

 前々作の「プリティファイター」(SFC)、前作の「プリティファイターX」(SS)も、ツッコミどころはたくさんあったものの、一応は「美少女2D格闘ゲーム」として(良くも悪くも)伝説を築き上げたシリーズ。
 そして本作でついに3D化!
 ……それがまあ、面白いほど裏目に出ました。


 レゴ・ブロックの残骸 随分とまた、素朴なモデリングです。
 チェーンソーでもって、大きな木の塊から彫刻作品を生み出すチェーンソー・カービングというものがありますが、その初心者の人が一生懸命削りだした彫刻作品のようです。
 もし本当にそうなら、「マスター・オブ・チェーンソー」ことブライアン・ルース技師も、頑張れと肩を叩いてくれるかもしれませんが、残念ながらゲームのキャラクターとしてはイマイチ。
 しかも、まるで本物の木の彫刻のように、いちいち動きもギクシャク。同じ人形にしても、鉄拳の木人を見習え!
 ちなみに、普通の人間キャラは初心者のチェーンソーカービング作品ですんでますが、約一名いる着ぐるみキャラは、それすら通り越して、もう削りっぱなしの岩石のカタマリとしか言いようが無い悲惨さです。

 前作までも一応は格闘ゲームの様式はとってましたが、モーショングラフィックの枚数は少なく、動きはカクカクしてました。ぶっちゃけ、格闘ゲームのノウハウのある会社じゃないことは一目瞭然なんですが。
 それを前提に考えても、これは凄ぇ!
 3D格闘ゲームにしては技の数が少なく、ボタンを押してからのレスポンスも、なんかヘンにテンポがずれます。攻撃判定・食らい判定もかなりいい加減なんですが、はっきり言ってそんな評価が空しく聞こえるほど、格闘ゲームとしての狂いっぷりは半端じゃありません。
 しかも、キャラは見ての通りのモデリングで、必殺技がちっとも必殺技に見えません。文字通り、ただ動いているだけ。
 マジな話、普通の会社の製作するゲームなら、せいぜい「完成度5%」の段階のシロモノ。(完成度8%のシロモノがPS版「修羅の門」)
 もう、ゲームと呼ぶのもはばかられる、素晴らしい出来ばえに涙がでそうです。

 某ゲーム雑誌の記者に、「これは(某有名3D格闘ゲーム)を越える出来になりますよ!」と語った製作スタッフと、このゲームを買ってしまった自分自身に、天誅を食らわせてやりたいほどに。

 悔し紛れに、付属していた音楽CDを聞いてリアルに鬱状態に突入したのはサイド・ストーリー
 こんなゲームに出演してくれた豪華声優陣に謝れ!
 ……なんでこんなゲームに限って、オープニングのアニメムービーや、ゲーム中に挿入されるグラフィックは出来がいいんでしょうね? だからこそ、それに惹かれてゲームを始めたときのガックリ感が段違いなんですけど。

 ゲーム自体がこんな出来なもんだから、プレイヤーの評価も散々。
 セガサターンマガジンで連載されていた読者投稿のランキング式のレビューコーナー「読者レース」でも、「デス・クリムゾン」や「大冒険 セントエルモスの奇跡」などと、常にランキングの最下位を争うその姿は、コーナーの名物と化してしまっていました。

 挙句の果てには、ネットで散々な評価を下すプレイヤーたちに、
「本名を晒さない人間に、ゲームを評価する資格はない」
 と、プロデューサーが見当違いな逆ギレをかますなど、いろんな意味で後々まで語り継がれる、数々の伝説を打ち立てたゲームになってしまいました。

(2006.05.18)