メルティランサー 銀河少女警察2086

1996年12月13日発売/イマジニア/83点

 銀河警察機構(GPO)から東京湾上空に浮かぶ浮遊都市イースタン・メトロ・ポリス(EMP)の警察署に出向した新米補佐官として、これまた新米の捜査官(ランサー)達を育成し、同時にEMPの治安維持・事件解決を図らなければならない、育成+経営シミュレーション。
 これを発売したイマジニアというと、「FIST」とか「EVE -The Lost One-」という二大クソゲーのおかげで、あんまり良いイメージがありませんが、この「メルティランサー」シリーズは、わりと普通に遊べる佳作。そのせいか、けっこうシリーズ作品が出ています。

 本作が(個人的に)面白いのは、なにもかもを「ほどほど」に抑えたことで、育成と経営の要素をうまく融合させたこと。
 タイトルに「銀河」で「少女」で「警察」とついてくると、バリッバリのアニメ絵で「お前、絶対警察官と違うやろ!」と言いたくなるナヨナヨの女の子たちが、「ふにゃ〜ん」とか魂に風穴が開きそうな声を出して寄ってくる、「だいすき」みたいな甘ったるい銃殺アドベンチャーとか想像するかもしれませんが、そこのところをキワキワのバランスで抑えてあります。

 本作から一歩足を踏み外したのが、「ギャラクシー・エンジェル」です。

 登場人物(攻略対象)は、

(手前左から)アンジェラ、ナナ(わたあめ持ってる子)。
(奥左から)サクヤ、一人飛ばしてシルビア、神城潤、メルビナ。

 ……の六人(ただし画像はPS版。主人公が異なる)。
 最初は三人しかいませんが、降格したり、保護したり、異世界から飛んできたりと、なんでもアリな感覚で増えていきます。

 育成+経営といっても難易度はそんなに高くなく、わりといい加減にプレイしてても治安はそんなに悪くなりませんから、好きなようにランサーたちの信頼度(隠しパラメータで、エンディング分岐に影響)の調整ができます。
 しかし、そうかといってストーリーが味気ないわけでもなく、敵は一筋縄ではいかない連中ばかり。
 卒業論文のネタのために地球征服をたくらむ大学生、メルビナを付けねらう宇宙海賊、ライバルである警備会社&兵器メーカー、異世界の封じられた「黒き意思」と、もう作中の世界観をギリギリ壊さないのならサンタクロースだろうが新撰組だろうが、かまわずコーランにブチコミましたとか言わんばかりの顔ぶれ。
 それでも、その闇ナベにまともな味付けをほどこして、きちんと食べられるように調整してあるところはさすが。前述のように、ヘンにシステムやキャラに大仰なこだわりを持たせずに、平衡点を探し出して纏めてあるから、不自然さも感じないのかもしれません(ツッコミどころはあるけど、それを言えばどんなゲームにだってツッコミどころはあるし)。

 登場するランサーは全員十代の女の子で、恋愛要素もありますが、必要以上の絡みもエロティックな展開もいっさいなし。あくまで目的はEMPの治安維持で、障害となる敵の排除であり、恋愛感情よりも信頼が優先。さすがは公務員、恋愛節制もお手の物です。
 この辺、最強の正義超人でありながら、見ようによっては最強の外道でもあった大神一郎少尉(「サクラ大戦」。日仏合わせて最大13股という偉業を達成)の対極にいる人物であると言えなくもありません。

 本作は、神キャラや神セリフがあるわけでもなく、神シナリオが展開するわけでもありませんが、高水準でまとまっている佳作。じっくりと遊びたい人向けのゲームです。

 ただ、本作があまりにまとまりすぎたその反動か、初回特典のおまけについてたドラマCDはえらいことになってます。
 演じた声優さんが「腹を抱えて笑うあまり声が出せなくなった」「電車の中で台本を見て笑いそうになった」というエピソードの通り、あまりにも素敵な破壊力炸裂。私はコミケのために東京に向かう新幹線の中で聞いてましたが、隣に座ってた友人に言わせると、なんか不気味な笑顔を浮かべてたらしいです。
 こればかりはずべこべ言わずに聞いてもらったほうが早いです。とりあえず、合言葉は「牛丼」だ!

(2008.01.14)