太正桜に浪漫の嵐!
このゲームにはまり込んでた当時は、このキャッチコピーを聞いただけで、本気でワクワクしたものです。
これまでに一番惚れたゲームを上げろと言われると「EVE -burst error-」ですが、これまでに一番狂ったゲームを上げろと言われると、間違いなくこの「サクラ大戦」がダントツトップ。
1996年の10月のある日、ぶらりと立ち寄ったゲームショップのサターンのコーナーに、そのゲームはありました。正直、その日はゲームを買う予定はなかったんですが、パッケージに惹かれて衝動買いしたこの「サクラ大戦」は、私の廃れかけていたゲーム熱をものの見事に引き戻した、というよりも、以前よりも遥かに燃え上がらせた、記念すべき一品となりました。
舞台は我々の知る時代とはちょっとだけ違う方向に産業が発展した架空の「太正時代」。蒸気機械文明隆盛のこの時代、蒸気と霊力で動く甲冑(蒸気人型と呼称)を身にまとい、封建制復活を目論む悪の組織「黒之巣会」の野望を打ち砕け!
歌劇団の女性達と生活を共にするアドベンチャーパート、黒之巣会などの敵と戦うシミュレーションパート、このゲームはこの二つの要素で成り立っています。
とにもかくにも、キャラクターの魅力が素晴らしかった。真宮寺さくらはじめ、お約束成分をかなり無茶に詰め込んではいますが、多彩なヒロインありき、なにより主人公である大神一郎のカッコよさが際立ってて、帝国劇場で活躍する歌劇団が舞台という新鮮な設定もあり、ぐっと引き込まれましたね。
それまでにシミュレーションゲームとあまり縁が無かった、ということもあったんですが、戦闘の敷居は低く、私ぐらい考えるのが苦手でもなんとかなかる難易度だった、というのも好印象でした(ただし、最後のサタン戦はコントローラーを何回か投げつけました。やっとのことで近づいたら端まで押し戻されたり……)。
さて、そんなサクラ大戦の最大の特徴といえば、「アニメ的演出」。ストーリーをさくっと十話に分割し、解りやすいくらいの起承転結をつけ、各所にショートアニメをこれでもかと配置し、ラストには次回予告で止めだぁ!
ノリがもう完全に熱血アニメのそれで、またキャラクターに加えて田中公平氏が手がけた音楽・主題歌が素晴らしく、展開が多少お約束でもぐぐいっと引っ張り込まれます。
時代背景は前述の通り架空の「太正時代」なんですが、現実の大正時代と絶妙にリンクされていて(黒之巣会が発動させた「六破星降魔陣」による災害が関東大震災にひっかけてあったり)、それがまた「架空世界」とは言い切れない、絶妙な感覚を与えてくれました。
(そういえば、この頃は戦闘中のヒロインとの「合体攻撃」は地味で、まだ私でも正視できました。この後、続編が出るたびに「合体攻撃」「ヒロイン攻撃」の恥ずかしさは度を増していき、伝説の域に達するわけですが……)
また、恐らくゲーム史上に残るであろう、凄まじいメディア戦略もこのゲームの特徴。
小説、コミック、音楽CD、ドラマCD、OVA、テレビアニメ、劇場版アニメ、数え切れないほどのファンソフト、カードダス、フィギュア、カレンダー、絵葉書、QUOカード、コスプレ用衣装、etcetc……。挙句の果てには声優陣が実際に出演するミュージカル(なんと、本作発売から10年ちかく開催されてました)と、その幅は凄まじく広いです。
「サクラ大戦」のアイテムを専門に扱う「太正浪漫堂」というお店まで登場し、すっかりファンの聖地になって ます ました。
(2014年追記。1998年に池袋一号店が開店した後、1999年に大阪心斎橋に二号店がオープン。2003年に池袋店がリニューアルしますが、同年に心斎橋店が閉店。2008年に池袋店も約10年の歴史に幕を下ろしました)。
(浪漫堂は「サクラ大戦5」でゲーム中にも登場)
いや、まあね。
確かに、メインシナリオを手がけたのがあの「あかほりさとる」氏、ということで、細かいツッコミを入れたらキリがありません。長くなりすぎるという理由で三話分のエピソードをぎゅっ♥と詰め込んだ最終話のヤッツケ具合なんか、凄まじいものがあります(一部では、「ラムネ&40」の劣化コピーとまで言われている)。
また、シネパックで圧縮されたムービーは少々ギトギト感もあり、お世辞にも綺麗とは言い切れません。
だが、それでも!
このゲームは、面白いのです。
広井王子、あかほりさとる、藤島康介といった製作陣は、確かに思いっきり好き嫌いが分かれそうですが、食わず嫌いで済ませるにはあまりにも惜しいぞ、斉藤さん!
誰だ、斉藤さんって。
……そういや、狂ったように大人買いした1500枚以上のカードダス、どこにやったっけ……。
(2015年12月31日追記:実はこのゲーム、2000年にアニメ化していたそうです。ちょうどドハマリしていた時期だというのに全く知りませんでした。
で、今回ちょっとDVDを買ってみたんですが……。まぁ、あれだ、よく言って実験作? キャラの何人かが性格の違う、けっこうグロい作品になってます。
これ(テレビアニメ版)見たら、アイドルマスターの最初のアニメ化がロボット物にされたアイマスファンの気持ちがよくわかります)
(2006.05.14)