テイルズ・オブ・リバース

2004年12月16日発売/ナムコ/5点

 1995年の「テイルズ・オブ・ファンタジア」以降、2008年夏の「テイルズ・オブ・ヴェスペリア」まで、14年間で17タイトルが発売されているテイルズシリーズの10作目。その数は、移植作品やモバイル専用タイトルを含めると更に倍増します。近年これだけ怒涛の勢いでリリースされ続けているシリーズも稀ですね。

 このシリーズには、それぞれ固有のジャンル名がついていることが特徴ですが、本作のジャンル名は「君が生まれ変わるRPG」です(タイトルの「Rebirth」は、広義には意味が違いますが)。

 確かに「君」だけでなくプレイヤーも色々と生まれ変われそうな出来ですが、それは後述。

 ゲームを立ち上げると、今回も凝りに凝ったOPアニメが流れます。SFCの初代からそうでしたが、このシリーズで最も衝撃を受けたPS版「ディスティニー」以降、このシリーズで最も楽しみなのが、実はこのオープニング。
 今回のオープニングテーマは「Every Little Thing」の「good night」。

 それにしても、毎回大物アーティストを引っ張ってくるナムコって、金があるんだなぁ。

 ヒューマとガジュマ、二つの「ヒト」種族が同居する世界。獣人のような外見を持つガジュマは、同時に「フォルス」と呼ばれるヒューマにはない魔力を有していた。
 この世界を治めるカレギア国王ラドラスが変死した「ラドラスの落日」事件以降、なぜかヒューマの中にも「フォルス」能力を操るものが現れる。そして、ラドラス国王の後を継いだ女帝アガーテの元で、国政は迷走を始める。
 そんななか、北方の村に住む青年ヴェイグは、突如開眼した「氷のフォルス」の力を暴走させ、恋人クレアを氷の棺に閉じ込めてしまっていた……。

 このシリーズは、毎回「勧善懲悪」という「お約束」をストーリーから排除しようとして、その代わりに「二陣営両極の対決」という「パターン」に足を絡め獲られてしまっている印象があるのですが、残念ながら本作もそのしがらみからは逃れられていません。
 ま、「テイルズ」シリーズは、プレイしたことのある人ならわかると思いますが、けっこう暗い、というか、ぶっちゃけ陰湿なシナリオが多く、決してスカッと爽やかな感覚を求めてプレイするゲームじゃないんですが、それにしても、この「リバース」のシナリオライターの性根のひん曲がり方は、相当に異常です。
 確かにまあ、ヒューマとガジュマ、どちらの種族にも生き方や思想があり、どちらが良くてどちらが悪い、という問題でもないのですが、ストーリーの展開が上手いとはいえず、またパーティーキャラを除く全ての脇役が「グランディア3」も真っ青の「電波」というキッツい設定。
 社会をとりまく政情不安におののく一般人、という設定はいいのですが、ヒューマとガジュマ、双方の種族の主張が余りにキチイすぎて、全く共感もクソもありません。世界中の人間の言動に徹底的にヒきつつ、7000円という出費に対する義務感だけでゲームを進める、まさにそんな感じ。

 このゲームのシナリオライターさんは、ひょっとして両親から虐待されて育ったんじゃないか、とか、学生時代に酷いいじめにあったんじゃないか、とか、そんなことを真剣に考えながらプレイしてしまいます。いや、マジで。

 そうでも考えなきゃ、この「鬱度」のあまりの高さには、首を捻るばかりです。とてもじゃありませんが、よほど心を無にしてプレイするか、マゾ精神に目覚めないと、のめり込むどころか、胸が悪くなる一方。

 キャラクターのほうも賛否両論でしたが(特に、ひたすら暗い主人公のヴェイグと、ひたすら鬱陶しいティトレイ)、こちとら「アルトネリコ」のライナーや、「【em】エンチャントアーム」のアツマなど、核爆弾クラスのキャラクターで散々耐性を鍛えているため、そう気にはなりませんでしたね。主人公が主人公だけに、盛り上がりに欠ける中、騒ぎまくるティトレイとマオが凄く浮いてて、それが面白いといえば面白かったですが(あと、「クレア」という言葉に異常反応するヴェイグも)。
 ギロチンにかけられそうになったクレアの演説も、名言なんだけど、私はちょっと引いた。そこでピーチパイか……みたいな。

 このゲーム、最大の難点はやはり戦闘でしょうね。「テイルズ」といえば特徴的な戦闘システムでも有名ですが、本作はそのなかでもやや毛色が違うシステムを採用しています。
 詳細な説明は省きますが、まあ忙しいの何の! システムが異様に作りこんであるぶんかなり複雑で、また消費したHPを回復する手段が殆ど無い(&回復アイテムが凄まじく高価)なので、かなりやりこまないと常にピンチ状態。というか、とにかくひたすら死にまくるので、遠足の帰りにはカンオケ引きずってイヤーッホーウッ!(カンオケ無いですけどね、このゲームには)。
 エンカウント率の高さも難易度の上昇に繋がっています。一度ウンザリして、改造コードでランダムエンカウントをゼロにしてみたら、物凄い数の強制エンカウント(ザコ敵)が発生しました。ひょっとして書き間違えたか? と、何度も確認したほどです。
 もともとランダムの皮をかぶった強制エンカウントなのか、改造コード対策でこうなっているのかは解りませんが、「楽をさせる」という概念だけは全く無いようです。
 レベル上げにかなり時間を費やすことになりますが、それでもHPの高いボス敵との戦闘が非常に辛いです。恐らく、何周もやりこむことを前提にバランス調整してあるんだと思いますが、その「何周もやりこむ」こと自体が辛いんだ、という発想はありませんでしたかそうですか。

 正直な話、やりこむには結構な覚悟がいります。NPCからどんな罵詈雑言を浴びせられても平気な精神の強い方、あえて苦境に飛び込むチャレンジャー、そんな種類の人でない限り、お勧めはしません。

(2007.01.07)


解説 クレアの演説

「もし種族というものがあるのなら、私達はガジュマでもヒューマでもなく、大地に生きる人という一つの種族なんだって。
 思い出してください。私達にはともに笑い、泣き、悲しみ、喜べる時間があったはずです。
 親切にしてもらったこととか、一緒においしいものを食べたりとか。
 私の知ってる村では、おばさんがパイを焼くたびにみんなが集まって、ヒューマもカジュマもなく、みんながおいしい、おいしいって食べるんです。
 死ぬのが恐くて言ってるんじゃありません。
 大好きな人たちと憎みあって生きるのは、死ぬのと同じくらい辛いことだって思うから。
 どうか、私の最後のお願いを聞いてください。
 みなさんがパイを、ピーチパイを食べることがあったら、一度だけ目を閉じて考えてみて下さい。
 あなたがおいしいと感じる心に、種族はありますか?