【em】エンチャントアーム

2006年1月12日発売/フロム・ソフトウェア/72点

 フロム・ソフトウェアのRPG……と聞けば、真っ先に思い出すのは「キングス・フィールド」。
 あの「ついてこれねぇヤツは、そのまま死ねぇッ!!」と言わんばかりのサドマゾ世界の難易度に、悲鳴を上げたり投げ出したりトリコになったりした人も多いと思いますが、そのフロム・ソフトウェアが解き放つ、Xbox360初のRPGです。

 少々ガクブルしながらやってみた感想ですが、「普通」に面白いゲームだと思いますよ。
 ハードの初期にありがちな、スペックを最大限に生かすことのみを目的としたゲームではなく、きちんと作りこんであります。
 グラフィックは文句なく綺麗……なんだけど、これハイビジョンテレビで遊ぶことを前提に作ってあるんですかね? 普通のテレビでプレイすると、どうも文字が潰れ気味で読みづらいことがしばしば。こんなとこでプレイヤーを選んでどうするの。
 ゲーム中のチュートリアルやオンラインヘルプが非常に丁寧に作ってあって、説明書無しですいすい進められるのは好印象なだけに、文字が読みづらいのはちょっとなー。

 主人公アツマは、ヨコハマシティにあるエンチャンター養成学校に通う学生。
 ところがこのアツマ、右腕にそのエンチャントを無効化してしまう能力を持ってしまっています。言ってしまえば、「魔法先生ネギま!」に出てくる神楽坂明日菜。「落ちこぼれ」だの「赤い単細胞」だの散々な言われよう。

 ゲームの最初の1〜2時間は、この学園と友人を巡るストーリーなのですが、この最初の1時間が、本作に馴染めるかどうかの踏み絵。
 なんというか、非常にまったりというか、軽いボーイズラブ要素を含んでいるので、引くなら今のうちです。
 なにせ親友三人のお互いのあだ名が、「赤い単細胞」「青い電算機」「黄色い乙女心」です。ほんの一瞬ですが、自分のエクトプラズムとこんにちわ。

 いろいろと物議を醸した戦闘は、実際にやってみるとそんなに煩わしくはありません。
 地面に表示されるグリッド(縦3×横4のマス)がシミュレーションを思わせますが、実際は移動もスムーズだし、戦略性もあります。楽しもうと思えば頭を使ってかなり工夫できまし、オートバトルもなかなか頭が良くて重宝します。
 このヘンの進歩が、AIと言えばザキ連発という不文律を最初の最初に脊髄に刷り込まれた世代だけに、落涙の果てに技術の進歩を感じずにはいらません。
 ただ少々カメラポジションが悪く、またお世辞にもテンポが良いとは言えないのが残念かな。連携技やEXスキル技がド派手なだけに、手軽にそれを楽しめれば良かったのですが。

 ゴーレムの製作や、クリア後の隠しダンジョンなどのヤリコミ要素も豊富(クリア自体はレベル60もあれば余裕ですが、隠しダンジョンはレベル999まである模様)。
 特にゴーレムの製作は、正直このゲームで一番面白いです。大量の資金が必要ですが、好きなようにカスタマイズできるので、やりたい放題。もともとデザインが非常によく、カッコいいものから可愛いものまで選び放題。
 また、隠しの「レアゴーレム」がまたキちゃってます。ライコウ(「OTOGI」)やAPO(「サウザンドランド」)などの他のゲームからのゲスト出演のほか、なぜか暴君ハバネロ、挙句の果てには本作のEDテーマ曲を歌うアーティスト「舞」まで登場。もちろんカスタマイズ可能。
 かつて、ゲームに声優や歌手として参加したアーティストはたくさんいますが、召喚獣としてゲームに参加したアーティストなんか聞いたことありません。

 強烈なキャラクターや、独特なシステムなど、「安直に王道とは言わせねぇ!」というフロム・ソフトウェア独特の「アク」はしっかりと効いている本作。
 主人公が基本的に空気の読めない馬鹿野郎なので、好きな人はかなりハマれますが、嫌いな人にはどこまでも合わないかもしれませんね。

(2006.08.23)