あははははは!!! プレイヤーの脳髄にばきゅーん♪
もうお分かりだと思いますが、このレビューにはかなり感情的な文章が含まれています。 ご注意ください。 |
……突然、失礼しました。
しかし、カンベンしてください。正直、こうやってハイテンションではしゃぎでもしないと耐えられないんです、このゲームは。
サクラ大戦といえば、96年にサターンで登場して以降、安定した人気を誇っていた、所謂ギャルゲーです。
帝都東京や巴里を舞台に、普段は歌劇団の女優としてミュージカルを演じる少女達が、いざ戦闘となると「光武」と呼ばれる機械甲冑に乗り込み、様々な経験を積みながら悪を挫くという、ある種、王道とも言えるストーリー。あかほりさとるが手がけたストーリーには正直、ツッコミどころが多彩なのですが、その舞台を「歌劇団」に置いた斬新な設定や、主人公・大神一郎のカッコよさ、何よりも突出した楽曲の素晴らしさで、私も「サクラ1」〜「サクラ3」は血肉を削ってはまりました(内容を端折りすぎた「サクラ4」は黒歴史になってしまいましたが)。
そして、問題の本作「5」です。
えー、まぁ正直、ストレートに言わせていただくと、どこに出しても恥ずかしくない、それはそれは立派なクソゲーです。
何が酷いって、まぁ全部酷いんですけど、まずシナリオが最低。これ、サクラ大戦シリーズはもちろん、全PS2タイトルの中でも間違いなく最低レベル。
とにかく、ほぼ全てのイベントや戦闘に全く脈絡が無く、展開が電波全開で意味不明です。いきなり始まっていきなり終わるのをスピード感といえばそうなんでしょうけど、致命的な説明不足・演出不足も重なって、小学生の演劇よりもデキが酷いです。
また、サクラシリーズの肝であるはずのメインキャラクターが、極めて薄いのも痛い。
特に痛かったのが、主人公。とにかく、甘やかされすぎ。
「3」までは、お約束やベタなところはあっても、主人公である大神一郎が悩み、自分なりに努力し、隊員たちと苦楽を共にしながら成長する過程が描かれてました。そんな大神さんが見せる、一本通った「信念」がプレイヤーをサクラの世界に引きずり込んでいたのです。
(そんな頑張りへの多大な共感から、「サクラ」の濃いファンは大抵、大神一郎を「大神さん」と敬称で呼びます。……というか、ギャルゲーの主人公として彼ほどファンから愛されているキャラクターは、たぶんほかにいないでしょう)
ところが本作の主人公・大河新次郎(大神さんの甥)には、そんな描写が殆どありません。隊員として華檄団に入隊したのに、いつの間にか隊長として認められ、いつの間にか皆に認められてやたらと褒められまくります。はっきり彼がやったことと言えば、掃除をしたとか、電気を直したとか、そんなことばっかりで、とても戦闘部隊の隊長としてそこまで信頼を勝ち得る行動とは思えません。
また第二話の裁判イベントのように、大きいネタもあるにはありますが、正直、活躍したのは新次郎じゃないよなぁと思えるものばかりで、どうして新次郎がニューヨーク歌劇団で認められているのかサッパリ解らないんですな。
それが一番顕著なのが、第五話。オープニングからいきなり褒められまくり、違和感が炸裂していた時に、ストーリーヒロイン(?)の昴が、勝手に切れて、勝手に機嫌直して、勝手に新次郎を認めてしまいます。完全にヒロイン独走でプレイヤー置いてきぼり。
そんなこんなで、主人公が成長していく実感がないもんだから、シナリオに感情移入なんかできません。
これ以外にも、立ち絵のパースの狂いとか、サクラシリーズなのに印象に残るBGMが一曲もないとか、戦闘バランスの致命的な悪さとか、いろいろあるんだけど、シナリオの崩壊具合に比べたら軽いもん(ミニゲームが一つもないのは流石に重要なマイナスだが……)。
季節感、時代感、魅力的なヒロイン、素晴らしい楽曲、感情移入のしやすい主人公。これまでのサクラ大戦の魅力を全て失ってしまった本作は、もはやサクラ大戦ではありません。
なんのかんの言っても私は、これまでのサクラは、ツッコミどころを見つけても、「サクラ大戦シリーズ」というだけでそれなりに遊べました(ゲームとしては、「4」もそんなに悪い作品とは思っていません)。ですが、流石にこれはヤバ過ぎデス。シリーズがどうこう言う以前に、ゲームとしてヤバ過ぎ。
「4」で大神一郎編「サクラ大戦」を涙で見送ったファンであるほど、本作に接するのは辛いかもしれません。
(2005.11.24)