ファイナルファンタジー12

2006年3月16日発売/スクウェア・エニックス/90点

 突然ですが、話題先行で役者を選ぶなよ、スクウェア・エニックス!

 本作の主人公ヴァンとヒロイン・パンネロを演じる役者さん(武田航平氏と三国由奈氏)は、当時注目の若手(らしい)。
 もちろん、声の演技はド素人。手厳し目に書きますけど、正直、最初から最後まで聞くに堪えません。
 特にヴァンが酷い。後述しますが、キャラクター的に極めて地味で薄いためか、たま〜に出てきて喋ると、物凄い違和感があるんですよ。
 この二人以外、声の演技が上手いので(特にシドとヴェイン。まあプロなので上手くて当たり前なのですが……)、余計に目立つんです。元々、素の演技が上手い人は声の演技も上手いと聞くので……。
 ヴァンにいたっては、その余りの下手さから、すっかり「オイヨイヨ」というニックネームで定着してしまいました(初めてアーシェに出会ったとき、ヴァンが「飛び降りろ!」と叫ぶのですが、それをどう聞いても「オイヨイヨ!」としか聞こえなかった)
 FF10のティーダも、最初は同じように思ってたんですが、最後はすっかり聞きなれてました。この差はやはり、ストーリーに対する重要度の差でしょうかね。「10」で消滅したティーダを復活させるためだけに「10-2」が作られたようなものですし(この辺はかなり異論あるでしょうけど)。

 さて、この「ファイナルファンタジー12」、たまに過去のFFシリーズと比較されて「これはFFではない」という書き方をされているのを見ます。
 ストーリーや設定に共通した深い世界観があるシリーズならばともかく、同シリーズでも開発コンセプトもスタッフもガラリと入れ替わることが珍しくない最近のゲームで、過去作と比較することにあまり意味があるとは思えませんが、言われてみれば、本作はFFらしくないといえばらしくないです。

 どこが「らしくない」かといえば、まずほとんど印象に残らないこと。
 FFと言えば、どの作品でも強烈な人物、破天荒なストーリー、アホらしいほど強いモンスターのどれかが印象に残ってましたが、本作はそれが殆どありません。
 本作は、過去作ほど戦闘バランスが壊れまくっているわけでもないし、ストーリーもRPGの王道を踏襲して、すっきりまとまっています。
 なのに、「FF12どうだった?」と聞かれると、逆にすっきりとまとまりすぎて、印象的な場面が思い浮かばないんです。
 私は十周ほどしてみて、ようやくヴァンが印象に(笑)。最初の三周くらいは、シドの高笑いとヴェインの無茶な変身と、アルシドの若本ヴォイスくらいしか印象に残りませんでした、本当に。
(モブも含めれば、アホみたいに強いモンスターもいるけど)

 なぜここまで印象に残らないストーリーなってしまったかと言えば、やはり操作キャラ(「主人公」とは言わぬ)ヴァンの影の薄さでしょうね。本作の本当の主人公は、空賊のバルフレアと、相棒のフラン。
 バルフレアはその軽そうな態度とは裏腹に、やるときは本当にやる、頼りになりすぎる空の男。フランは、露出度の高い衣装と、冷静で冷徹な頭脳、そして豊富な知識の持ち主。
 わがままヤンチャ盛りのヴァンが、どうひっくり返ったって適う相手じゃありません。
 ストーリーは、亡国の王女アーシェを、このバルフレアとフラン、そしてこれまた頼りになる渋いオジサマ、護衛のバッシュ将軍が支える形で進行します。この時点でもう、ヴァンの出番は限られてしまっています。
 ヴァンの出番と言えば、ストーリーの岐路に差し掛かったとき、「早く行こうぜ」などとメンバーをせっつくだけ。完全にモブ扱いの一般人で、究極のところ、いなくてもストーリー進行には支障がありません。
 ストーリー上、最初はアーシェとくっつかせるか、同じ視線で成長させようとしたあとは見えるのですが、結局ラスラ(オープニングムービーで戦死した、アーシェの旦那さん)の存在感が大きすぎたのか、そのイベントも後半はグダグダのままなかったことにされてしまい、最後、アーシェはバルフレアに対して告白まがいの絶叫をする始末。
 立場ナシ。決して、悪いキャラではないんですが……。

 パンネロとかも地味ですが密かに気のきくいい娘なんですけどね。ラーサーに口説かれる(違)以外は、大抵端っこのほうでヴァンと話し込んだりしてるもんで、あんまり目立ちません。いっそのこと、アーシェを主人公にすりゃよかったのにね。
(ただ、アーシェを主人公にすると、絶対にアーシェは最初のショックから立ち直れなかったと思うけど。言い方を変えれば、「ヴァン以外を主人公にできなかった」のだと思う)

 肝心なストーリーも、
●●はどうだ」⇒「●●●●に違いない」⇒「では行ってみよう」
 という、まるでジャンプの10週打ち切りバトル漫画を見ているようにスムーズに進行する為、プレイヤーの意志の介在するスキマがありません。
 グラフィックやムービーの美しさは、折り紙つきで非の打ち所がないだけに、余計に残念でしたね。名前のあるキャラクター以上に、名前の無いヴィエラ族のエロさが際立って印象に残ってしまいました。
 最初ッから最後まで、結局、オキューリアが何者なのかという、納得のいく説明もないしな。

 さて、プレイヤーの間で評価の分かれたバトル方式ですが、私は好きですよ。
 ガンビット重視の為、楽をする為のシステムと揶揄されることもありますが、私にはこれくらいが丁度いいです。
 ロードの長い上にシステムが最悪の「幻想水滸伝5」や、モンスターに魅力も迫力も欠片も感じられない「ドラゴンクエスト8」と違い、ローディングによるストレスがなく、巨大な敵を見上げる形での戦闘は、グラフィックの良さも相まって迫力抜群!
 この戦闘だけでも、買った価値はあったと、私は思っています。長時間やってても飽きません。死亡率高いけど。

 あえて「シリーズ」という枠組みで捕らえるなら、「ファイナルファンタジー」というシリーズには、全てを求めてはいけないのだと、私は思っています。
 ストーリーなり、キャラクターなり、戦闘なり、どこか超絶に突出した一点を持ちえて、そこを評価されるのが「FF」シリーズではないかと思うわけです。で、その「突出した一点」が価格分遊べないと「クソゲー」なわけですが。

 本作は、天然なのか故意なのかはわかりませんが、あえてその出っ張りをなくし、バランスをとって真球を求めた作品なのではないかと思えます。
 もちろん、「面白くない」などとは口が裂けても言いません。これはこれで、ヤリコミがいのある、非常にハイレベルでまとまった名作です。
 しかしバランスをとりすぎて、結局特徴の無い、厳しく言えば「グラフィックのみが印象に残ったRPG」になってしまいました。
 真球ではなく、凸凹だらけだけど、どこかが突出したいびつな多角形を。全教科満遍なくできる秀才ではなく、例えば体育10、国語0な腕白坊主を。少なくとも私がプレイしたい「FF」というのは、そういうものです。

 あ、エンディングは「紅の豚」(以下削除)

(2006.08.15)


:ただし、この後に出演したドラマなどでの武田氏の演技力は、たいへんな向上を見せたらしい。残念ながら私は未見。