ドラゴンクエスト8

2004年11月27日発売/スクウェア・エニックス/-5500点(主観)/68点(客観)

このレビューにはかなり感情的な文章が含まれています。ご注意ください。

 ああ、神よ! スクウェア・エニックスは民に試練を与えられた!!
 ……というわけで、正真正銘の300万本RPG(by飯野賢治氏)、ドラクエ[です。
 まず言わせてください。このゲーム、色んな意味でツラいです。何がツラいって、ゲームやりながら自分の正気を保つのが一番ツラいです。
 Zのとこでも書きましたが、どうも私はV以降のドラクエはあまり印象に残っていないわけで、この[にも大して期待してませんでした。正直、購入した理由も敵キャラにパペットマペットがいるのと、ちょうど中古で手頃な値段になってたから。
 ……が、実際にプレイしてみて、その認識を改めました。
 新世紀のドラクエ、脅威の地雷化!!
 いや正直、どっからツッコミを入れていいやら……。

 まずプレイ直後に、最初の試練が来ます。
 LEVEL5の高い技術力で製作された人物のポリゴン・モデルは、キャラクターデザインを手がける鳥山明氏のそれを忠実に再現。ということは、登場人物がほぼ全員、忠実にドラゴンボール・キャラと事態を引き起こしているわけで。
 いや、主人公クラスの重要人物だと、(ドラゴンボールの孫悟空が、そうとわからぬようにコスプレをした、という程度に)個性というものがあるんだけど、大衆モブキャラになると、ホントにもう個性という言葉をアルファ・ケンタウリの彼方あたりまでポイしちゃってます。
 大人の男性の髪型はほぼ「坊ちゃん刈りの刈り上げ」と「ロンゲ」の二種類だけ(あとハゲ)。顔も種類が少なく、クール系のキャラはみんなべジータ、子供はみんなトランクス(幼)、商人のおっさんはみんなヤナックです。とにかく「体型、髪型、表情ともにごく尋常」という男性キャラが殆どいないので、「この世界の男性は、一人残らず性関係の犯罪に手を染めているのではないか」という妄想を思わず抱いてしまいそうです。
 それなら、女性キャラはどうかというと、これまた忠実にドラゴン・ボールのブルマと、ムーンブルクの王女の成長過程をなぞってます。髪型はさすがに何種類かありますが、顔のパーツは殆ど同じ。なんか、「わざとやっとらんか?」と思えるくらいです。

 他のRPGであれば、プレイヤーキャラクターであれノンプレイヤーキャラクターであれ、何人かは魅力的なキャラクターがいますし、ストーリーに関係ない一般人がポロッと名言を吐いたりして、キャラに萌えとか感じることもあるんですが、このゲームにそんなキャラは一人もいません。いや、これほどまでキャラ萌え要素を徹底して排除されると、逆にすがすがしいです。
 ひょっとしたら、社長あたりから「プレイヤーを萌えさせるな!」とかきついお達しでもあったんでしょうか。まぁ、個人的に(燃えろ、ならともかく)「鳥山キャラに萌えろ!」というのもちょっと無理な話ではありますが……。
 ついでに言うと、全般的にデザインがダサい!!
「バタくさい」とかそういう意味でなく、正真正銘の意味でダサいと感じます。「ドラクエというのはそういうものなんだ」と言われれば、確かにそうなんでしょうし、好き嫌いの感性は個人的なものはあるのですが。
「ファイナルファンタジーX-2」をやった直後にやると、旧スクウェアのセンスと努力に頭が下がること請け合いです。……それとも、あっちが普通じゃないのでしょうか。

 そして、第二の試練……というほど、これは試練でもないのですが、戦闘です。
 最初は決してバランスが悪いわけじゃないんだけど、どうもバトル後にもらえる経験値もお金の金額も少ないように思えます。ので、後々、レベル上げやお金稼ぎにもくもくと戦闘を繰り返すことに。
 シナリオが進めば進むほど、敵の強さが雪だるま式にあがっていくし、全体的に物価も高いので、けっこう苦労します。経験値もお金もデフォルト設定の倍くらいがちょうどいいと思うんだけど(私がヌル化しちゃってますか?)。
 どっちかっていうと、世界各地の神話や伝承を、故意に馬鹿にしくさったとしか思えない驚異的なモンスターのネーミング&デザインに耐えることのほうが試練でしょうか。「究極的にセンスがダサい」というのは本作を貫くキーワードですが、「悪意のこもったデフォルメというものは、基本的に見てて麗しいものじゃない」ということは、クリエイターにとっては常識なんじゃないの?
(この傾向は、ナンバリングを重ねるたびに酷くなっているような気がする)

 そして、第三にして最大の試練。シナリオ。
 RPGはもちろん、他の大概のジャンルでも(最近はアクションでも)、ゲームの核となるシナリオ・ストーリーは非常に大事です。いかにしてプレイヤーを引き込み、いかにして驚かせ、時には怒らせ、時には泣かせ笑わせるか。そのためにシナリオライターは血肉を削ってプロットを切り、自分や(目の肥えた)見えぬプレイヤーたちと戦うわけですが。
 このゲームやってて、その認識は無残にも覆ることに。

 最近のシナリオライターって、こんなシナリオでお金もらえるの!!??

 今時、小学生がツクールで製作したRPGでもこんな、大ご都合主義&極度のお使いシナリオ見れんぞ……。
 兎に角、褒められたところは冗談抜きに一箇所も無いんですが、一番凄いのが、物語に絡んでくる人物の大多数が極度の馬鹿かただのキガイだということ。数少ないまともな人物といえばチェルス、メディ女史、グラッドぐらいですが、このうち二人は虐げられた挙句に殺害されます。

 また、最近のRPGの悪役がよく持っている、小難しい理想とか複雑な過去とかを、このゲームの悪役が欠片も持っていないのも大きな特徴。やってることは大きいけど、思考は完全に幼稚園児以下。
 どうも七賢者の過去と繋がりにそれを持たせようとした形跡はあるのですが、上手く消化し切れているとは思えません。おかげで酷く不自然な箇所がそこかしこにあります。そのせいか、物語は大きなふくらみを見せることもなく、ひたすら一般庶民の陰惨な部分を見せることに終始。
 あと気になったのは、どうにもシナリオライターさんは、富豪や権力者という人たちに強烈な偏見や劣等感があるのか、彼らの扱いは必要以上に酷いです。いや、誰が誰に対してどう思おうと勝手だけど、それをゲームという媒体を通して、人に押し付けるような書き方をするのはどうかと思います。
(というか、ご自身もかなりお金持ちじゃないかと思うんですが……)

 これ以上ないほど単純な物語の中で、露骨にプレイ時間稼ぎなほとんど無意味なお使いの連続。
「お約束とはいえ、もうちょっと自分らしさを加えるとか考えなかったのか」といいたくなるべッタベタのお約束の数々。
 それに疲弊したプレイヤーの精神をマイナス方向に掻き毟るように、人間の暗い部分を、ネチネチと執拗に見せられるイベント。正直クリアしても、誰一人救われた気がしません。
 また、「はっ、おっさん、いつのまに!?」とか、挟まなくてもいい時に限って、挟まなくてもいいものをわざわざ挟むので、腹立ちゲージだけがものすごい勢いでたまっていきます。
(このあたりは、製作を担当したLEVEL5独特の、ウスラ寒いセンスでもあると思いますが)

 これでまた、それなりにボリュームがあればなんとか取り繕う余地があるんですが、正直、内容が薄すぎて、ボリュームが全く感じられません。さすがに同人並みとは言いませんが、それでもネームバリューで誤魔化したような印象はぬぐえません。
 最後の最後に、エンディングのエピソードは最初から最後までパクリだし。

 加えてまた、登場人物のネーミングがうそ臭いほどダサいので、もう感情移入度は完全にゼロ。延々とイヤなストーリーが続いていく中で、プレイヤーのすることは×ボタンを連打することだけ。
 どんな未開の土地の人でもコレよりはまともなしつけを受けているぞ、と勘繰りたくなるような知能の低い子供らの話具合など、もう会話なんてするだけで腹が立ちます。たまに選択肢が出てきて、ボタン連打のせいで自動的に否定的な答えになってしまいますが、貴様の好感度なぞいらぬわ!!
(このゲームに好感度の概念はないですが。それどころか、意味のある選択肢なんか一つも無いですが

 私も何本もRPGをプレイさせていただきましたが、これほど精神的に拒絶反応が出たシナリオは久しぶり。
 たぶん、本作のシナリオライターさんは、ドルマゲスの悪行とかラプソーンの復活(さすがに闇文字)とかは、本当はどうでもいいのではないでしょうか? それを言い訳に、自分の嫌いな人種への毒を吐きまくるのが目的のシナリオなのではないか……どうも、そう穿った見方をしてしまうんだよね、これやってたら。
 だってこれ、正直、仮にもクリエイターを名乗る人が、お金をとって遊んでもらうのを目的に書いたとは思えません。完全に幼稚園児の発想です。それを、高い技術力を持つスタッフと、売れると解っているタイトルで実現した、壮大なお遊戯の時間。
 普通の大人に対する、思いついたからってなんでもやればいいというものじゃない、という、強烈な反面教師です。
 全国のシナリオライター志望の若者よ、希望を持て! 最近の大手は、こんなシナリオでもゲームにしてくれるぞ! と、声を大にして言いたくなってきます。

 で、結論。
 わざわざ、貴重な時間とお金を割いてまでやるゲームでは、決してありません。
 モンスターバトルロードや錬金釜などおまけ要素もあるにはありますが、超低レベルなシナリオの失点を挽回できるような4番バッターにはなりえません。

 いみじくも「同社」の作品となった「ファイナルファンタジー」シリーズは、バランスがどうとか演出が飛ばせないとか、確かに問題点もありますが、そこかしこに「こだわり」が感じられます。
 しかし、ここ二、三作のドラゴンクエスト本編には、そんなものは微塵も感じられません。極端に言えば、製作サイドが「T」の頃からなにも変わっていないと思えて仕方ないのです。
 にも関わらず、業界の技術は闇雲に上がっていくもんだから、結果としてこのような作品が練り上げられてしまう。「ドラクエはファミコン時代が一番面白かった」と、私が思うのは、そのくらいの容量で収めるくらいが、「ドラクエ」というタイトルにはちょうどいいということなのでしょう。
 ドラクエには、過剰なグラフィックも、精密な心理描写も必要ないのです。その方面で疾走を続ける「ファイナルファンタジー」とは真逆、正反対のベクトルこそが、「ドラクエ」の行くべき道なのだと、私は勝手に思います。
 ぶっちゃけて言うなら、色気を出すな。
 もちろん、これらが独特の「センス」だと言われれば、否定のしようもありませんが。

 と、まぁ、これが370万本(海外490万本)近く売れてしまった現在、薦めるも薦めないもないのですが、「買ってどうだった?」と聞かれれば、私は間違いなくこう応えます。
「損した!」と。

ボスデータ

地域ボス名HPEXPG行動
滝の洞くつザバン180107108通常攻撃、ツメをふりおろす、呪いのきり、ギラ
ポルトリンクオセアーノン360311230通常攻撃、もえさかるかえん、なぎ払い
旧修道院なげきの亡霊430680200通常攻撃、ベギラマ、仲間を呼ぶ
騎士像の洞くつトラップボックス11001020680通常攻撃、痛恨の一撃、メダパニ、ラリホー、ヒャダルコ
モグラのアジトドン・モグーラ12801160360通常攻撃、芸術スペシャル、大地を激しくゆさぶる、仲間を呼ぶ
王家の山アルゴグレート13502830520通常攻撃、飛び上がって攻撃、なぎ払い
闇の遺跡ドルマゲス(本体)235013500通常攻撃、無数のムチ、しんくうは、ガレキをなげつける、いてつく波動、ひとみがひかる、べホマラー、笑う
闇の遺跡ドルマゲス(分身)65000通常攻撃、かまいたち、ひとみがひかる、笑う
闇の遺跡ドルマゲス(変身後)2600120000通常攻撃、ベギラゴン、マヒャド、はげしい炎、羽の雨、超高速連打、おたけび、いてつく波動
海賊の洞くつキャプテン・クロウ360097502675通常攻撃、しんくうは、ため、いてつく波動
闇のレティシアレティス1850101500通常攻撃、わしづかみ、ライデイン、ベホイミ、いてつく波動、まばゆい光
神鳥の巣妖魔ゲモン370086000通常攻撃、わしづかみ、痛恨の一撃、はげしい炎、マホカンタ、仲間を呼ぶ
法王の館魔犬レオパルド4200102000通常攻撃、痛恨の一撃、こごえるふぶき、おたけび
聖地ゴルドマルチェロ3100110200通常攻撃、かまいたち、メラゾーマ、グランドクロス、ベホイミ、いてつく波動
暗黒魔城都市暗黒神ラプソーン(変身前)480000通常攻撃、痛恨の一撃、メラゾーマ、イオナズン、こごえるふぶき、まばゆい光、いてつく波動
暗黒魔城都市暗黒の魔人370024800通常攻撃
暗黒魔城都市暗黒神ラプソーン(変身後)570000イオナズン、メラゾーマ、マダンテ、杖の先の玉を投げる、いてつく波動、腕を振り下ろす、流星が降りそそぐ、はげしい炎、こごえるふぶき、めいそう、いのる、笑う
竜の試練竜神王800000通常攻撃、しゃくねつの炎、おたけび
竜の試練竜神王300000通常攻撃、しんくうは、竜神の封印、こしをふかくおとしてつく、ため、いかずち
竜の試練深紅の巨竜5000135000通常攻撃、痛恨の一撃、しゃくねつの炎、おたけび、ジゴフラッシュ
竜の試練深緑の巨竜8000148000通常攻撃、痛恨の一撃、おぞましいおたけび、もうどくの霧、やけつく息、あまい息
竜の試練白銀の巨竜5000159000通常攻撃、痛恨の一撃、いてつく波動、マホトーン、ひとみがひかる、めいそう、かがやく息
竜の試練黄金の巨竜5000163500通常攻撃、イオナズン、ベギラゴン、ジゴフラッシュ、ぶきみな閃光、ため
竜の試練黒鉄の巨竜1650180100通常攻撃、ベギラゴン、ひとみがひかる、まばゆい光、流星が降りそそぐ
竜の試練聖なる巨竜8000190400通常攻撃、痛恨の一撃、わしづかみ、いてつく波動、冷たく輝く息、ため
竜の試練永遠の巨竜600000通常攻撃、痛恨の一撃、おたけび、いてつく波動、こごえるふぶき、ため、しゃくねつの炎、マダンテ、祈り
竜骨の迷宮レッドオーガ310042001500通常攻撃、ため、痛恨の一撃、集中攻撃
竜骨の迷宮ブルファング260039901200通常攻撃、おたけび、ルカナン、スクルト