「この日、この場所を与えたもうた女神に感謝を」
太陽が水平線の向こうに姿を消し、そろそろ月が天頂に到達する時刻。
クリス・ライトフェローは、自室で左肩に右手を当てる独特の敬礼をするとそう呟き、黙祷した。
そして、一つため息を吐き出して、ベッドにその身体を横たえた。
今日も忙しかった。
ヒュッテビュッケ城の軍事顧問としてクリスには、統制の全く取れていないシックス・クランの戦士たちとゼクセン騎士団を同時に鍛え上げ、最低限の作戦行動はこなせるくらいの協調を持たせなくてはならないという、重大な責務を負っている。
風習や思考、武器から戦闘方法まで全く異なる部族を一緒に戦わせようというのだから、その苦労は並大抵ではない。
今日も、リザード・クランの三戦士、カラヤ・クランのルシア、軍師のシーザーと幼ビッキーと綿密な会議をこなし、その後はゼクセンの六騎士と今後の方針について語り合ったばかりだった。
ひと時も身体を安らう時間などありはしない。
だが、それでも。
クリスは、この辺境の古城を、どこよりも居心地がいいと感じていたのである。
『この日、この場所を与えたもうた女神に感謝を』
それは、クリス・ライトフェローが生まれ出でてから、既に何百回と口にした言葉だった。
戦場で、ブラス城の会議で、そして、ビネ・デル・ゼクセでの評議会で。
いま思えば、この言葉を唱える場所によって、その意味合いが大きく違っていたことにクリスは気付く。
戦場で剣を振るった後には、生き残ることが出来た感謝を。
ブラス城での会議の後には、分かり合える仲間達に引き合わせてもらうことが出来た感謝を。
そして、評議会での席上では、一刻も早くこの場を離れたいという強い願望を。
それぞれに女神に申し上げた。
クリスはゼクセンの騎士となった自分に誇りを持っている。
父であるワイアット・ライトフェローは、国のために、民のために、そして誇りのために勇敢に闘い続けた。
それは、ワイアットが騎士という立場を離れてしまった後でも変わらなかった。
勇敢に戦い続け……そして、勇敢に果てた。
父ワイアットはクリスの誇りであり、ただ父の足跡を追いかけるように、当然の如く騎士団に入った。
なにかと不器用な彼女自身、上流階級の人付き合いは苦手だった。
クリスは、純粋な騎士、純粋な軍人でありたかったし、そうあり続けたいと願っていた。
何かを守るために戦い、それを成し遂げた勝利を、最高の誇りとしてきた。
だが、類稀な才腕、傑出した戦功と武勲には、光に吸い寄せられる虫のように、様々なものが付随していた。
地位の向上、英雄の名、それに対する義務と責任。
らしくもなく、なりたくもない英雄という立場であったが、それは自分が守った民に対する義務と自分に言い聞かせて何とか我慢できた。
だが、ゼクセン騎士団長の拝命と同時に、正式に評議会参事官の末席に名を連ねたことは、彼女にとって苦痛以外の何者でもなかった。
「最近、つくづく思うよ。政治とは、人の為せる
ある
自分を慕う誰かを守るために、敵対する誰かの凋落を願い、そのための行為を率先して行い、誰かを平気で貶める。
それには、当然の如く利権と欲望が絡み合う。
直線的な志向を持つクリスにとってそれは後ろ暗く、耐え難い価値観の世界だった。
そして、そのための“道具”として騎士団が用いられることも。
いつの間にか、様々な名前の“
『その点、ここは動きやすいものだ……』
横になったまま、クリスは思考を巡らせる。
自分が三英雄の一人として、この城の軍事を担うことになったのは、偶然と流転の産物であり、それ以外の何者でもない。
真の雷の紋章の継承者・ゲドとの出会い、今や炎の英雄となりおおせたヒューゴとの和解、そして、父がそうだった真の水の紋章の継承。
最初は迷ったまま、半ばナッシュに
が、悪くない。
所詮、寄せ集めの連合政権であるには違いない。
だが、シーザーとサロメの機転で、現在は政治のヒューゴ、情報と諜報のゲド、軍事のクリスと、完全な三頭体制が完成しつつある。
おかしな話だが、自分が本来守るべきゼクセンの首都よりも、自分が純粋な軍人でいられるこの辺境の寂れた城のほうが、クリスにとって遥かに居心地が良かったのだ。
『さて、明日も忙しい……そろそろ……』
眠りの精霊の訪問を受け入れ、クリスは
できれば、良き夢を与えて欲しい。
そんなことを考えつつ、夢の世界に一歩を踏み出した時。
彼女の耳に、炎の英雄の悲鳴が飛び込んできたのだった。
クリスの鼓膜を叩いたそれは、なんとも表現のし辛い音声だった。
どういう状況で発せられた悲鳴なのか、皆目見当がつかぬ。
だが、唯一つだけ確実なのは、それが炎の英雄ヒューゴの発したものである、ということである。
恐らく、この船に居室がある者は自分以外一人も気付いてはいまい。
クリスは不思議にそう思えた。
なぜかは解らぬ。
だが、そう確信していた。
気付いた時、クリスは既にその手に愛剣エーヴィヒを握り締め、起き上がるままに駆け出していた。
かつて真の水の紋章を持っていた父が行動を共にし、守り続けた炎の英雄。
父の足跡を継ぐクリスにとって、炎の英雄を守るのは当然の責務といえた。
例えその名がシオンからヒューゴに変わろうと、その責務が変わることはないのだ。
クリスは裸足に夜着のままで髪を乱し、城の中を駆けた。
今、眠りにつこうとしていた人間のものとは思えぬほどの足の運び。
それは、父が与えてくれた責務以外にも、彼女自身が気付かぬ心の動きが影響していたからかもしれない。
『無事でいてくれ、ヒューゴ……。私はお前を……』
自分が切り伏せてしまった彼の親友の顔が、彼女の脳裏をよぎる。
彼はなんという名だったか。
もう二度と、彼のような者を出すわけにはいかないのだ。
そのためにも、彼の親友であるヒューゴを死なせるわけにはいかない。
それはクリスが自分に課した十字架でもあった。
ヒュッテビュッケの未来のために、そして彼女自身が未だ思い描けない未来のために、ヒューゴの人懐こい笑顔を失うわけにはいかなかったのである。
そうして、休むことなく走り続け、クリスはヒューゴの居室の扉の前に立った。
悲鳴が聞こえてきたのが嘘のように、周囲は静寂に包まれている。
あれは自分の空耳だったのか?
いや、そんな筈はない。
扉の向こうから発せられるただならぬ気配が、それを否定する。
間違いなく何かあったのだ。
そして、それは恐らく現在進行形で、終わってはいない。
クリスは剣を構えなおすと一瞬の逡巡もなく、扉を蹴破った。
「なにがあった! ヒュー!」
そうして。
クリスの目は点になる。
室内にいたのは三名。
本来ヒューゴが眠っているはずのベッドに、二名の女性が可憐な裸身をむき出しにして横たわり、肝心の炎の英雄は、部屋の真ん中でそれを吟味するかのように見下ろしている。
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
一瞬とは言え、四つの吐息が静寂を包み込んだ。
二つは起きている者、二つは眠っている者のものである。
だが、その静寂の裏で、起きている者二人の思考の混乱具合はその絶頂にある。
ヒューゴのそれは見慣れぬ女性の裸体を至近に見てしまったことによるものであり、クリスのそれは、自分の予測していた事態と全く異なる現実が目前に現れたことによるものだった。
お互いにとって幸か不幸か、先に現実に立ち直ったのはクリスだった。
クリスの頭の中に、「ヒュー!」の後に続くはずだった「ゴ!」という言葉が、ショックの効果音として乱舞していた。
年端もいかぬ若造が、炎の英雄の名を振りかざして、年端もいかぬ女性を、それも二人もこんな時間に自室に引っ張り込んでいる。
加えて、女性の一人は、少なくとも外見上は十歳かそこらの幼女である……。
「えーと……、クリス……さん?」
ヒューゴが恐る恐る声をかける。
が、クリスの思考は、視覚で得た状況証拠以外の全ての情報をシャットアウトしていた。
彼女にとって、それ以外の情報を得ることの必要性は全くなかった。
「ふふふ、ふははははははは……」
意識したものではない、乾いた笑いがクリスの表情を支配する。
彼女が全力を賭して守るべき存在で「あった」炎の英雄が、色を知る
しかも、かくあるざるべきかな、幼女趣味であったとは……っ!!!!
そして、クリスの中で何かが崩れ落ちた。
不思議なことに、「信頼を裏切られた」とかそういった被虐感ではない。
なにかが「崩れ落ちた」のだ。
そのクリスの表情から何か恐ろしい未来を感じ取ったのか、思わずヒューゴ少年は後ずさった。
「うわぁ、なんか恐ろしい勘違いしてないか、あんた!」
「問答、無用! その存在ごと斬り散らしてくれるわ!」
クリスは、愛剣を振りかざし、構える。
そして次の瞬間、世に名高き【白銀の乙女】は、風を纏って羅刹と化した。
その剣はまさに必殺の切っ先にして白銀の閃光を発し、華麗でありながら暴風の如くその敵を薙ぐ。
そう敵味方から畏怖と尊敬をもって評される【白銀の乙女】の剣技は、他のどの機会よりも確実に冴え渡っていたに違いない。
他の機会、他の場所で目撃したならば、腕には多少の自信があるヒューゴといえど、思わず見惚れたであろう。
だが、残念ながらこれを目撃した場所と機会が最悪であった。
そして、その薙がれる対象となったのが自分であることが、より最悪であった。
「だから、あんたの勘違いなんだって! 少しは俺の話も聞いてくれ!」
「おのれ、今更醜く言い逃れするか! ならば、そこのビッキー殿(複数)は、どうしてそこで眠っている! どこからか裸で湧き出たとでも言うつもりか!」
「一字一句、あんたの言う通りなんだよ! 俺もどうしていいかわかんないの!」
「問答無用! 貴様のような破廉恥な英雄など、我が軍、我が理想には要らぬ! 貴様も短期間とはいえ英雄の名を歴史に刻んだ身なら、己の恥と過ちを胸に抱いて、潔く果てよ!」
「うわぁ、会話をしろよ、会話を!」
ヒューゴは間断なく繰り出されるクリスの剣をかわし、避け、払いつつ、室内で良く持ちこたえた。
ヒューゴが見る限り、明らかにクリスは逆上している。
だが、逆上しながらもこれだけ怜悧に、かつ正確に相手を追い詰める剣技には感嘆せざるをえぬ。
普段から、余程厳しい修練を積み、更に実戦経験が豊富なのであろう。
唯一、今のクリスには周りの状況が見えておらず、自分しか映っていないことがヒューゴにとっては幸いだった。
腕の動きには隙がない。
だが、足運びに隙が大きい。
相手が通常の人間ならば
狭い室内の中、箪笥や本棚、ベッドの天蓋など、ありとあらゆる場所を利用してクリスの動きを避けていた。
いかに年若く未熟な点もあろうが、カラヤは戦士の村であった。
幼少の
実戦経験では適わないが、こと個人戦闘における勘ならば、ヒューゴのほうが一枚上手である。
散々に暴れて肩で息をしつつも、クリスの眼光はテーブルの上で、同じく肩で息をしているヒューゴを睨みつける。
その憤怒の表情と乱れに乱れた髪と夜着には、清廉な【白銀の乙女】の印象など欠片も残っていなかったが、本人にとってはどうでもいいことのようである。
「おのれ、カラヤの黄色い小猿めが、ちょこまかと逃げおって……」
場が場なら一瞬で戦争状態に発展しそうな、とてつもない暴言を吐きつつも、じわじわとヒューゴの立つテーブルに近づく。
「まったく、あんたも解らない人だな。俺は違うって言ってるだろ。どうして状況を確認しようとしない」
肩で息をしつつも、気丈にヒューゴは問いかける。
「現状確認など必要などない! 貴様はこの城における重大な規約違反を犯した、それだけで死あるのみだ」
「規約違反って、なんの!?」
「ヒュッテビュッケ未成年者保護条例、第三条第五項。及び、未成年者犯罪防止条例、第八条第二項である」
「ちょっと待て、そんな条例、聞いたことないぞ!」
「たった今、私の中で提案し可決された」
ふふふ、と、クリスの口元が吊りあがる。
「なに、いずれは本当に提案するつもりでいたし、そうなれば反対意見など出でよう筈がない。
クリスは語調を強め、再び
「ヒューゴ、炎の英雄よ! ヒュッテビュッケの未来の倫理風紀のため、
「言われて素直に死ねるか! これは冤罪だ!」
「
叫びつつ、クリスがヒューゴに襲い掛かる。
先ほどまで肩で息をしていたとは思えない、恐るべき速度の踏み込みは、まさしく武神の誉れを一身に受ける騎士の面目躍如である。
だが、だからと言ってヒューゴも素直に殺されるわけにもいかない。
こうして、深夜の第二ラウンドが開始された。
幼ビッキーがベッドから起き上がり、必死に話しかけようとしているのに、二人とも気付かなかった。
最初に異変に気付いたのは、ロランだった。
エルフ特有の彼の長い耳は、やはりエルフ特有の優れた五感でもって、ヒューゴの悲鳴に気付いていたのだ。
炎の英雄のただならぬ声に、彼は即座に起き上がり身支度を整え、その足でクリスの部屋に向かった。
しかし、クリスの部屋はもぬけの殻であり、その姿はどこにも見当たらなかった。
そして、彼が最初にどうするべきか迷っている一瞬の後に、ヒューゴの部屋から派手に争う音が聞こえてきたのである。
一刻の猶予もならぬと考えた彼は、そのまま正しい選択をした。
クリスと彼自身を除くゼクセンの六騎士、サロメ、レオ、パーシバル、ボルスを叩き起こし、とりあえず武器だけ持たせてヒューゴの部屋へと急いだのだ。
「まったくどういうことだ! カラヤの蛮族は己らの英雄を守ることすらできんのか!」
金色の髪を揺らしながら、怒りと苛立ちを隠そうともせず、ボルスが叫ぶ。
「そう焦るな。ひょっとしたら、カラヤの連中は既に全滅したのかも知れん。
今は急ごう、ヒューゴは勿論、お姿の見えぬクリス様が心配だ」
言ってボルスをなだめたのは、黒髪のパーシバルである。
ロランとレオがそれに賛同した。
サロメは走りながらも何か考え事をしているようで、頷くだけだった。
ヒューゴの部屋は、城の正面玄関の脇の階段を昇った二階である。
自分達の居室のある船室から城の地下間道を通り、階段に差し掛かったところで、五人は意外な人物とすれ違った。
たくましい長身に黒髪を靡かせ、その片目を覆う眼帯が、彼を見るものに一種異様な雰囲気すら与える男。
真の雷の紋章を持つ英雄の一人、ゲドであった。
「こ、これはゲド殿……」
その余りにいつもと変わらぬ、変わらなさ過ぎるゲドの立ち振る舞いに、五人は一瞬立ち止まってしまう。
彼のことだから、何が起こっているのか知っているに違いない。
なにせ、彼は今、ヒューゴの部屋のある城の二階から降りてきたのだ。
「ゲド殿、今、いったいなにが……」
そう尋ねようとしたサロメの言を遮って、ゲドが発言した。
「サロメ殿、早くヒューゴとクリスの元へ行くがいい。
炎の英雄の死因が痴話喧嘩からの斬殺では、笑い話の種にしかならぬぞ」
呟くように言うと、サロメたちを一
彼が何を言っているのか解らない五人は、しばし呆然としてそれを見送った。
だが、彼の言葉を真っ先に咀嚼し終えたサロメが、他の四人を促した。
「兎も角、ヒューゴ殿の部屋にクリス様が向かわれたのは間違いないようです。
我々も早く向かいましょう」
「そうだな、クリス様に遅れをとるわけにはいかぬ!」
叫んで走り出したサロメとレオを追いかけ、他の三名も走り出す。
果たして彼等がヒューゴの部屋で見たものは、滅茶苦茶に破壊された家具と、肩で息をしつつも部屋の隅に追い込まれたヒューゴ、乱れた姿で剣を構え追い詰めているクリス、そしてこんな状況でもすやすやと寝息を立てているビッキーだった。
「こ、これは……?」
様々な意味で度肝を抜かれた五人に、幼ビッキーが語りかけた。
彼女はどこから引っ張り出したのか、ヒューゴの服を着込んでいる。
男性にしては小柄なヒューゴだが、さすがに幼ビッキーには大きすぎるのか、裾を大きく織り込んでいた。
「サロメ殿」
「こ、これはビッキー殿、これは一体どういうことです? 何があったのですか?」
サロメは幼ビッキーに敬語で語りかける。
これは彼だけが特別なわけではなく、大抵の(見かけ上)年上の人間から、彼女は敬語で遇されていた。
それだけ、彼女の知能は周囲に認められ尊敬されているのである。
幼ビッキーは、ここまでの流れをかいつまんで説明した。
原因が自分達にあること、真っ先にクリスが駆けつけたこと、そのまま戦闘状態に陥ってしまったこと。
「一応、原因は私たちだ。そのことを解ってもらおうと努力したのだが、あのように逆上されてしまっては、私の言葉ではクリス殿の耳に届かぬ」
困った表情で言い、幼ビッキーは振り返った。
つられるように、五人も再び暴れだしたクリスとヒューゴを眺めやる。
「どうせ、私は言葉遣いも乱暴だし、いつも鎧で押さえつけているから、胸だってビッキー殿のようにふくよかではないわ!」
「ちょっと待て! なんか論点がずれてきてるぞ、落ち着け!」
「問答無用!」
叫びつつ、再びクリスは剣を振るい、ヒューゴはそれをアクロバティックにかわし始めた。
状況についていけないのは、六騎士である。
普段のクリスからはとでも信じられないような言動の連発に、流石に驚き果てていた。
ボルスとパーシバルは目を見開いて二人を凝視し、ロランはひたすら天井を見つめていた。
疲れたように、幼ビッキーが続ける。
「……と、まあこういうわけじゃ。
このままヒューゴ殿に死なれるのも気の毒だし、かといって私ではクリス殿を止められぬ。
おぬしら、なんとかしてクリス殿を止めてもらえぬか」
「解りました。どうやら、これは私たちの責務のようだ」
頭をかきながら言い、サロメはレオを振り返る。
「難題ですね」
「ああ……」
ゼクセン騎士団随一の知将と随一の猛将が、二人して困り果てた。
だが、時を無駄にするわけにはいかない。
こうしている間にも、ヒューゴの命の危機は刻一刻とせまっているのだ。
「やむを得ぬ。皆でクリス様を囲んで取り押さえるのだ。
レオが音頭をとり、どこか魂の抜けていた三人を奮い立たせると、早急に作戦は実行に移された。
……それは猛毒を持った猛獣を生け捕りにする作業に似て、まさに命がけの仕事ではあったけれども。
そして一時間後、すっかり体力を使い果たし、更に真実を知ったクリスが、殆ど廃人と化して立ったまま乾いた笑いを浮かべていた。
彼女が完全に立ち直るまで、丸一日の時間が必要だった。
(To be continude ...)
すいません、待って待ってといい続けて四ヶ月、ようやく「剣の舞」の続きをお送りできます。
とはいえ、本来この回を後半として締めるはずだったんですが、長くなりすぎたため結局、前後編とエピローグの三分割になってしまいました。
前後編は、ヒューゴ視点とクリス視点のマルチサイトになっちゃってます。なにこの流れ。
ま、「幻想水滸伝3」本編も複数視点のトリニティサイトだったから、いいよね?
……え、だめ?
(初:05.12.02)
(改:05.12.10)