GEARS OF WAR

2007年1月18日発売/マイクロソフト/78点

「惑星セラ」……美しく平和な世界は、突如地底から出現した“ローカスト”の襲撃により、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄と化す。
 戦況が刻一刻と悪化する中、かつて英雄と呼ばれた一人の囚人、マーカス・フェニックスが戦線に復帰する。
 信頼する友人達と再び戦い、生き残るために。人類の存亡をかけた、最後の反撃が始まろうとしていた……。

「独創的な破壊美に彩られたサバイバルアクション!」と銘打ったTPS(サードパーソンシューティング。主人公を後方からトレースするタイプのゲーム)。イギリスで最も長い歴史を持つゲーム賞「ゴールデン・ジョイスティック・アワード」において、「2007年度アルティミット・ゲーム・オブ・イヤー」「2007年度最優秀Xboxゲーム賞」「エディターズ・チョイス」「徹夜するほどハマるゲーム賞」の四部門で受賞し、ポスト「Halo」としての存在を確立したタイトルです。

 まあ、とんでもなく力が入ってるのは確かですね。TPSというジャンルで、続編ではない完全新作でこのクオリティを実現したのは、大したものです。
 人間離れはしてるけど、現実感と非現実感のキワキワの瀬戸際にある世界、という設定が、主人公が正真正銘の一兵卒でしかない「コール・オブ・デューティー」、素顔を晒さない「Halo」等と、微妙に重ならないようにしてあるのも、新鮮さの原因かも知れません。

 こういうゲームって、カメラワークや操作感が悪いと、あっという間にクソゲーへの崖を転落してしまうわけですが、そのへんは丁寧に作りこんでありますね。操作感覚がちと独特課とも思いますが、基本的に移動系のアクションはすべてAボタンで行えるので、慣れてしまえば楽。
 サウンドの音量をBGM、セリフ、効果音で別々に設定できるという細やかさもいい感じです。モノラルでしか再生できない古いテレビでプレイしてるとねー、色々と差し障りがあることもあるのです。地デジに切り替わるまであと三年しかないのにな(2008年現在)。

 まあ、そんなもっともらしいこと言いつつ、やってることはチェーンソーでバラバラ死体を量産。

 流血の量が凄まじく、敵の悲鳴がやけにリアルなのも合わせて、完全にモラルが裏返る闇のエクスタシー。「お姉チャンバラ」ほど極まってはいませんが、それでもしばらくやってるとヤバイ笑いしか出てきません。
 このへん、一昔前までゲームが犯罪の温床として糾弾されてた理由もわからんではありません。PC用の「ポスタル」とか買わなくても、普通の家庭用で血ぃドバドバ、千切れた手足が飛びまくり、死体ゴロゴロで、それを量産しているのは自分ときた。
 ストーリーが良くても、けっきょく洒落がわかんないと楽しめないですね、特に演出的に。少なくとも、お爺ちゃんが孫と一緒に楽しんだり、お父さんが誕生日にお母さんにプレゼントするようなゲームじゃないです。「いやだぁ、お父さん♪」と恥ずかしながら死体を量産する奥さん、というのも、あまりお友達になりたくないですが。
 さすがに北米版と比べれば残虐描写は抑え目ですが、それでも凄いです。逆に、北米版はこれより凄いのかと思うと、そっちのほうが怖いです。2D格闘ゲームで、噴出す血のエフェクトを赤色から白色にするのとはわけが違うものなぁ。

 こういう海外ゲームのお約束として、難易度まで完全リージョンフリー。正面突破をはかって突進すると、ほぼ間違いなく蜂の巣! チェーンソーなどの近距離系凶器でもって忍び足で近づいても、見つかれば瞬殺!
 味方と敵を勘違いして、至近距離からブームショットをぶっ放して自分だけ爆死、とか、味方攻撃オンのまま真後ろの味方をミンチ、なんてあたりまえの風景です。オンラインでやったら嫌われる嫌われる(涙)。
 そろりそろりと隠れて近づいて、後ろから忍殺するのが正しい調理法です。
 武器のメリットとデメリットがはっきりと分かれていて、しかも持てる種類が少ないので、最強の状態で戦場を練り歩く、ということは殆ど出来ません。そのあたりのバランスが絶妙と絶望のちょうど中間点あたりでしょうかね。

 ゲームを構成する材料、グラフィックやサウンド、ムービーなどは、様々な賞を受賞したことからもわかるとおり最上級。これで不満を言おうものなら、次は22世紀のゲームまで待たねばならないでしょう。これはもう立派な残虐戦争映画です。英語のセリフに対する、静かに狂った日本語の字幕も合わせて。
 あえて難を言えば、ラスボスが少し拍子抜けするかなぁ。
 他の360タイトルの例に漏れず、どちらかといえば本作もオンラインプレイが前提で作ってあるようで、オフラインの尺はやや短め。オンライン協力しながらプレイするのはかなり爽快ですが、実在の人と協力しながら死体を量産する爽快感に目覚めるのも、ちょっと怖いかも(笑)。
 そういった状況を最初から懸念していたのか、本作は18歳以上で、かつオンラインはゴールドメンバーシップの会員でないとプレイできないようになっています。
 ……ライブがよく落ちる気がするので、そこだけ注意。対応も少し遅いかな?

 そういえば、本作の映画化の権利を買い取った会社がありましたね。日本語版は、きちんとゲームと同じ声優さんで吹き替えてくれるのだろうか。

(2008.05.10)