IS internal section

1999年1月28日発売/スクウェア/32点

「サウンドとゲームプレイに呼応して万華鏡のように千変万化するデジタルアートの世界が広がります」とパッケージ裏にて豪語するポジトロン開発、スクウェア販売のシューティング。
 どうもデジタルアートと聞くと「LSD」のような詐欺寸前の代物を思い出してしまうのは被害妄想のような気もしますが、加えてスクウェアのゲームで色々と豪語されると「ドライビングエモーション タイプS」のような代物を思い出してしまうのは(以下略)。
 まあ、確かにゲーム中に現れる背景はテクノ調のBGMにあわせて万華鏡のように次々と点滅色を変化させるので、この宣伝文句と「世紀末万華鏡」というキャッチコピーは、嘘というわけではありません。問題は、それがプレイヤーに視神経にちっとも優しくないところ。
「デジタルアート」に「テクノ」をくっつけたらどうなっかというと、「ポケモンショック」もびっくりの点滅・明滅・滅殺の嵐。3D酔いとかそういうのを超越して、やたらと脳にクる画面演出です。
「LSD」や「中天」とかもそうですが、「デジタルアート」というものは、その名前の胡散臭さに負けず劣らず、一概にプレイヤーに負担を強いてしまうもののようです。表現の限界に挑戦したいアーティスト魂をグッと抑えてプレイヤーライクなシステムを構築するのも、ゲームデザイナーの腕だと思うのですが。

 閑話休題。

 本作は一応「3Dシューティング」というジャンルになっていますが、実際は三次元で描かれたチューブ状のステージを左右にのみ移動しながら進んでいくゲーム。「マシンガンをくっつけたアクセルのない強制スクロールのレースゲーム」といったほうがしっくりくるかもしれません。
「エクストラブライト」って言うな。

 色んな要素を野心的に詰め込んでいる挑戦的な姿勢は、スクウェアらしくて実にいいのですが、表現の限界に挑戦したいアーティスト魂をグッと抑えてプレイヤーライクなシステムを構築するのも(以下略)。
 とにかく、細かくてどうでもいいところに懲りまくっている本作は、撃てるショットの数だけで12種類もあります。Ox、Tiger、Dragon、Snake……と、なぜか十二支の名前をつけられたショット群は、攻撃方法、弾速、威力、得点倍率に至るまで全てすべて異なっており、敵を全滅させたりハイスコアを狙ったりと、プレイスタイルや状況によって細かく使い分けなければなりません。
 最後は結局、2つか3つしか使わなくなりますけどね。使わねーよ、12種類も。

 あとは、一つのステージが四つに分割されているのに、どこで死んでもステージの最初に戻されるとか、なぜかスコアランキングにワーストスコアまで登録できるとか、意味が分からないところでサービス精神が炸裂していますが(ワーストスコアを狙うには、ハイスコアを狙う以上に慎重なプレイが求められます)、この際そんなことはどうでもいいです。

 本作最大のキモであり、滑りまくったサービス精神がもっとも炸裂しているのが、「ゲーム中のCD入れ替え機能」。シューティングをプレイしている最中に、ディスクを音楽CDに入れ替えることで、なんとBGMを変化させることが出来ます。
 で、「世紀末万華鏡」という名の通り、本作の背景はBGMの曲調に合わせてランダムに点滅します。つまり、本来クソゲーでしかない本作「IS internal section」は、自らの手で無理やりバカゲーに変えることだってできるのです!

 ゲーム発売前に雑誌に載ったインタビューでも、唯一ここだけが記憶に残っています。それだけ力が入っていたのでしょう。ここはこの素晴らしい機能を使わないと、購入資金がすべて無駄になってしまうので、遺憾なく遊び倒しましょう。

 もちろん、動きの激しいシューティングゲームに、ロックやポップス、テクノ音楽をかけたところで、画面にマッチして面白くありません。
 ここは一発、意外な曲をかけてみましょう。

 私個人のお勧めは、12人の女性声優が色んなシチュエーションでただただひたすら「お兄ちゃん」と呟くだけという「妄想ボイスCD」第一弾の「お兄ちゃんCD」
 妹が甘えてくる、とびっきりの甘々ボイスに合わせて画面が激しく点滅しながら、迫りくる敵を次々と打ち倒す、というシチュエーションは、どんなにタチの悪いドラッグを限界まで吸っても見れないような地獄絵図です。

 同様に、同じシリーズの「おしかりCD」「告白CD」「ありえない告白CD」「委員長CD」などもお勧め。三日くらいは廃人になれること請け合いです。考えられる限りの、ありとあらゆる意味で。

(2008.01.14)