さぁ、どれだけの月日を経ろうとも色あせることのない格闘ゲームの大金字塔、「ストリートファイター」(以下「スト」)シリーズの、実に10年振りとなるナンバリングの正式続編です。
いやー、言われてみると、「スト3」からもうそれだけ経っちゃうんですね。このシリーズ、ナンバリングは同じでも、「スト2」は「ダッシュ」「ダッシュターボ」「スーパー」「X」、「スト3」が「2nd Impact」「3rd Strike」と多くの「続編」があり、各々でまったく異なるシリーズ形態を形成しています(実際、「スト2」と「スト3」はまったく違うゲームではあるんだが)。
なので、10年という響きのわりに案外「間が開いた」という印象はないんですよね。それだけ「スト3 サードストライク」が長く遊ばれた証拠でもあるでしょうが。
そして、ついに登場となった「ストリートファイター4」です。
発売当初は、とにかくシステム基盤である「TAITO Type-X2DX」の、「1セット430万円」という驚異的な価格が話題になり「行きつけのゲーセンには絶対入らねー!」という言葉が多く聞かれました。実際のところは、やはり有る程度余裕がある大手の系列店への入荷が多いようですね。
その基板の特徴で、対戦に関するシステムが、従来の作品とは大幅に違います。1枚の基板でプレイできるのはあくまで一人だけで、異なる基板をLANケーブルで結んで対戦プレイをします。つまり、厳密に言えば「プレイヤーvs.プレイヤー」ではなく、「プレイヤーの操作する基板vs.プレイヤーの操作する基板」ということ。
すなわち、同じ店内で対戦環境を整備しようとすると、どうしても基板や筐体が複数枚必要になることになり、それで「1セット430万円」などという狂気のお値段になっちゃいます。
(ちなみに、同年に登場した「機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダム NEXT 」がやはり241万5000円、AC版「鉄拳6 BLOODLINE RRBELLION」が108万9900円と、高いゲームはとてつもなく高かった)
筐体はこれまでと同じく1レバー6ボタンですが、ゲージが体力ゲージ、スーパーコンボゲージ、リベンジゲージの三つになり、システムは大雑把に言うと、「スト3」シリーズ(EX必殺技、投げ)と「ストEX」シリーズ(ガードブレイク)のシステムを統合して、「セービングアタック」をくっつけたような感じ。
「セービングアタック」は、「3」の「ブロッキング」に代わる新反撃システムで、中パンチ+中キックというお手軽操作で発動できるため、「攻撃を喰らう直前に逆ガード」という、第三の目が開いているわけでもなく、チャクラを回すこともできない私にはほとんど使用不可能だったブロッキングよりも、はるかに使いやすいです。ブロッキングほど万能ではありませんが、万能ではない分、使いこなせなければ地獄の底までまっしぐらということもなく、私的にはいい感じ。
(セービングアタックも、ボタン押しっぱなしのタメ時間で性能が変わるため、今後、使い方が研究されれば、かなり勝敗に影響がでるかもわかりませんが)。
さて、とりあえず初見の感想ですが、多くの方が言われているとおり、ぶっちゃけコレ、「ストリートファイター2」と「ストリートファイターEX」の正統的な続編ですね。
キャラクターは、これまで散々使いまわされた「スト2」のキャラに新キャラを加えたもの。見せ方は、3Dゲームでありながら2D的な要素の強い「ストEX」を、最新の手法で作り直したような感じ。
基本的に2Dゲームなんですが、キャラクターは全て3Dで制作してあり、大技の演出などでは、側面からだけではなく、カメラ方向が360度色々変わる、という魅せ方をとっています。
そして、キャラの造詣は「ストZERO」シリーズからの伝統なんですが、とにかく、みんなゴツイ! そりゃまあ、皆様(一部除く)格闘家であらせられるゆえ、筋肉がないと話にはならないんですが、とにかく、ゴツイ!
私がよく行くところは、この「スト4」の隣に「Fate / アンリミテッド・コード」が設置されている(いた)のですが、「スト4」と並べると、「Fate」のキャラがみんな「ルパン三世」に見えます。逆に言えば、「スト4」のキャラはみんな「Fate」のバーサーカー並みです。すげぇぜ、筋肉の要塞!
(あえて言えば、「Fate」のキャラは魔術師とか神話の英雄とかで、格闘家ではないんですが)
その圧倒的なゴツい筋肉が、美麗な解像度で、360度あらゆる方向から迫るカメラの前で動くんだから、現在は筋肉フェチにとってはたまらない時代なんでしょうか。余りにもスムーズにウネウネと揺れるルーファスの腹にも、マニアックなファンがつきそうで怖いです。
新キャラについては、もう評価が真っ二つですが、私はけっこう好きですね。
どちらかといえば、「自然で育ったから身体が緑色で電気が出る」とか「ヨガを極めたから手足が伸びる」とかいった、後の殆どの格ゲーキャラのスタンダードになった「スト2」キャラの設定の完成度の高さが神がかっているだけで、本作の新キャラも、出来自体は決して悪くないと思います。
アベルの使用人気が高いようですけど、私の好みはエル・フォルテ。特に、あの本当にどうでもよくて馬鹿々々しいエンディングなんか最高です(笑)。
本作の演出は「墨汁」を強く意識したもの。墨汁が飛び散るようなリュウケンバージョンのオープニングや、試合開始デモ、スーパーコンボやウルトラコンボの演出など、これはこれで新鮮なんですが、私はあまり好きじゃありません。
そういえば、本作の著作権者はたしか、日本のカプコンではなくカプコンUSAだったと思うんですが、だとしたらこの演出は少し不思議な気も。開発されたのは日本でしょうから、不思議でもないのかな?
で、肝心なプレイ感想なんですが、どうにもモッサリしてますねぇ。
前述の通り、本作の対戦環境が基本的に通信対戦のため、情報がモニタに反映されるまでに2〜3フレーム(2/60秒〜3/60秒)かかります。そのぶん、ボタンやレバーの反応が遅れるため、どうしても重く感じてしまいます。
それこそ、心の眼で相手の動きを読んでキャラを動かすような上級者は、慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
あと、これは実際にはわからないんですが、どうも連続技の補正値がきついような気もします。
最近の殆どの格ゲーは、連続技の二段目以降が、単発で当てたときよりも補正がかかって攻撃力が落ちるようになってるんですが、その落ちる具合が激しい(=連続技の威力が低い)ような気が、ちょっとしてます。これは、技によってかなり違いがありそうなんですが。
最近のゲームの例に漏れず、本作もカード対応で、自分の戦績が記録できたり、特定キャラの特別なコスチュームが入手できたりと、ゲーム以外のところで楽しめる要素も多くあります。
前述のように、あくまで「スト2」と「ストEX」の続編みたいなゲームなので、キャラみんな一緒だし、はっきり言って新鮮さは殆どありませんが、ゲーム自体のデキはいいのではないかと。
今後、バージョンアップもあるでしょうし、(店舗によっては無い場合もありますが)私のようなヘタレにも楽しめる初心者用のモードも搭載されているのもいい感じです。
そういえば、アメリカでは新キャラのアベルが大人気で、カプコンの担当者が驚いたそうです。なんでも、海外向けに力を入れて作りこんだのはむしろクリムゾン・ヴァイパーのほうで、この結果は予想外だったんだとか。
そんなことより、あのユリアンを魔改造したような愉快すぎるラスボスは、いったいなんなのかと(笑)。
(2008.08.20)