ザ・キング・オブ・ファイターズ12

2009年4月10日稼動開始/SNKプレイモア/30点

 さぁ、非常に息の長い人気を誇る格闘ゲームシリーズ、「KOF」です。「ユリ・サカザキ」のファンコーナーがあることもあり、当サイトで最も登場頻度の高い単語の一つであることは間違いないですね。
 本作はそんなシリーズ12作目となります。前作「KOF11」が2005年ですから、リメイク版やポリゴンではない正伝の続編としては四年ぶりの登場ということに。今年(2009年)がKOF初登場から15周年だそうで、「KOF'94」から遊んでいる身としては、「もうそんなに経つのか」と感慨無量です。
 ……本当はそれ以上に、「「KOF2003」からもう6年も経つのか!!」と、そっちの方がショックでしたが。

 さて、前述のとおり、初登場から15周年記念作品となる本作、色々と力が入ってます。
 まずは、本作最大のウリでありメーカー一押し要素である、「DOA」で言えばパンツにあたるところのグラフィック。
 このシリーズはキャラクターの多さもあってか、毎年々々グラフィックの使いまわしが非常に多く、完全に書き直されるのは毎年衣装が変わる麻宮アテナくらいでしたが、今回はそのグラフィックを完全に一新。
 まず絵柄が大きく変わったので、それから受ける衝撃が大きいのですが、よく見るとステージの光源や影に合わせてキャラクターの色が変わる、それも影に入っている部分だけが暗くなっていったりするなど、細かな演出にかけられた手間が凄まじいです。このあたりは、スタッフ自身が「えらいことやってしもた」というこだわり具合がよく分かります。
 実際のところ、見慣れてしまえばモーションの枚数自体はアークの「ブレイブルー」なんかと大して違わないように見える(というか、旧作とほぼ同じ。中割の枚数が見直されている)ので、予想ほどウネウネ動くということはないのですが、背景なんかは凄く綺麗。

 グラフィック上での難点を言えば、

 と、いったあたり。

 力を入れた部分だけに、「俺らの努力を見れ!」と主張しすぎて、かえってウザくなってしまった、という感じがします。慣れたらそんな極端に凄まじいもんでもないし、これなら、普通にラスボスとエンディングを入れたほうが喜ばれたと思うのは、私だけか。
(一戦勝つごとに、クリアタイムが気に入らなければやり直しができるシステムは、ラスボスを分岐させるのに好都合なシステムだとは思うのですが、未完成の状態で「完成品」として出荷されちゃった本作には、ラスボスもエンディングもありません。まあ、出てきてもルガールだろうけどな)。

 で、肝心のグラフィック以外のゲーム部分。
 例年、野心的なシステムを搭載することが多いKOFですが、今回は難しいシステムは一切なく、えらくシンプルです。唯一特殊なのは、技がかち合ったときの相殺関係くらい。クリティカルカウンターを確認してから連続技が入るようになるとグンと強くなりますが、この辺はシステムというよりは慣れと反射神経。
 元々「KOF」はジャンプ攻撃が強力なシリーズですが、本作は特にそれが顕著のようで、ジャンプの早いキャラに小ジャンプ攻撃で飛び込まれると、なかなか対応できないです。今回は特にキャラの数が少ない(普段は40人以上いるが、今回は20人しかいない)ので、優劣が過去作以上にハッキリでるような気も。
 その大半が削られちゃったキャラクターの選別にも賛否両論あるかもしれませんが、これはまあ、プレイヤーの好き好きかな。

 システム的には過去の「KOF」とは完全な別物であることは確かですが、例年通り、バランスを取った形跡も無いし、どちらかといえばシンプルなゲームです。
 端的に言ってしまえば「KOF13」の体験版、という表現が最適なんだけど、CPUの仕様は例年以上の「糞」仕様で、対戦ツールにもならないので、「体験版」としてもデキはイマイチ。
 半減してしまったキャラクターの数と、進歩したグラフィックの技術力など、KOFの良いところと悪いところが出過ぎるほど出てしまっている、という意味では、かつてなく好き嫌いがハッキリしそうな気がします。
 あえて本作の魅力を上げるとすれば、「懐かしいキャラがゲームに出ている」。その一点。

(「本当は例年通りグラフィックを使いまわした旧「KOF12」がいったん完成してたんだけど、一部ファンの突き上げにブチ切れたスタッフが、その旧「KOF12」を全部なかったことにして、わざわざ一から作り直した」
 ……という噂も聞いたが、どうやら、製作中にスタッフが次々と離脱(別のプロジェクトに移されたのか逃げられたのかは不明)して人員不足に陥り、キャラクター数を半減させざるをえなかった、というのが真相らしい。
(実際、「ファミ通」2009年4月3日号付録の「ゲームメーカー年鑑2009」では、2009年1月末時点での社員数は262名になっているが、SNKプレイモアの企業サイトの「会社概要」によると、2009年7月21日現在での社員数は194名。たった半年で社員が25%も減っている(2011年7月31日現在、さらに減って143名))
 それでも結局未完成のままで、チーム設定なし、ボスなし、という状況で発売せざるを得なかった)

 発売前から「芋屋基金」などとと呼ばれていた本作(「芋屋」はSNKプレイモアの蔑称)。よく言えば「野心的な実験作」、悪く言えば「SNKプレイモアお約束の糞センスが炸裂したクソゲー」。
 家庭用に新キャラを追加して移植もしてみたけど、こちらもバグだらけで評価は散々。
 オフラインは上記の通りですが、オンラインもラグどころか「スライドショー」という有様で、その他の糞仕様(言い切って良し)も考えれば、正直、今の世にこれはない。
 PS3版にはいきなり800Mちかい容量の追加パッチがきてましたが、これ発売直後に1キャラまるまるパッチで追加したってことか?

「KOF」というブランド名だけで食えてた時代もはるか昔。ユリ・サカザキがリストラされちゃたことで、私がこのシリーズをやりこむ理由はもう無いんですけど、興味があるなら……ごにょごにょ。

(2009.06.30)