ソニック・ザ・ヘッジホッグ

2006年12月11日発売/セガ/70点

 最近は飲酒運転の罰則も厳しくなる一方で、実に喜ばしいことです。私は飲酒運転の経験はありませんが(そもそも下戸なので、あまりお酒は飲めないのですが)、経験者の話を聞くと、

「あれはマジやばい。自分が蛇行運転をしてるのを、頭ではわかってるんだけど、全然制御できねぇのな。頭では「うわ、やべ」とか思ってるんだけど、身体が全く制御不能で、ブレーキ踏まなきゃ!とか思いながらアクセル踏んでるんだ」

 ということだそうです。
 全部が全部こうなのか、これが極端な話なのかはわかりませんが、高速道路を飛ばしてる大型の長距離トラックなんかは、例外なく飲酒運転でしょうし、これがマジ感覚だったら非常に怖いんだけど、君もそろそろゆっくり走ってみてはどうか、ソニック?

 そういうわけで、無理やりネタをつなげようとした結果、話そのものが飲酒運転になってしまいましたが、本作はソニック・ザ・ヘッジホッグ15周年記念タイトルです。
 いやー、この青いスピードスターが登場して、もうそんなになるんですね!
 セガの歴代ゲーム機の全てに登場し、柴田亜美氏の漫画では当初、吹き出しをはみ出してまで説教を始めるクールキャラだったソニックチームのなか裕司氏が、いつの間にかすっかり青いネズミの皮をかぶったギャグキャラで定着してしまう、などという歴史の変遷もあり、ソニックの歴史はそのままセガの歴史と言っていいような気もします。

 ま、過去の栄光は置いておいて、15周年の記念作品だった割には、TGS2006やマーケットプレイスで公開された体験版は操作系関連でかなり不評でしたし、日本版よりも先行発売された北米版の評価も非常に微妙でした。ごくごく最近「ファンタシースター・ユニバース」でクソミソに言われたソニックチームのゲームだけあって、納得していいものやら、残念に思えばいいやら。

 で、実際のところどうかというと、過去作品よりもだいぶ印象変わりましたね。
 まず難易度がかなり上がりました。基本的なステージの流れは同じなんですが、鳥に捕まったり、風の道をグラインドしたり、といったギミックが増え、落下しやすい場所も増加。
 シナリオやBGMは良好で、スピード感も相変わらず。ただ、グラフィックは間違いなく過去最高なんですが、リアル志向に走るのはソニックじゃないような気もするな〜。シリーズで初めて人間の女の子が登場するための措置なのかもしれませんが、人間キャラやソニックたちとのギャップがありすぎて、最初はかなり面食らいます。エッグマンやエリスなんかは、ちょっとヒキますね。
 Xbox.comの「ソニック」の公式ページに、「「まるでハリウッド映画をそのまま遊んでいる」ような感動を与えてくれる!」とありましたが、それはソニックじゃなくて別のゲームで味わいたい感動ではないかと思ったりするのですが。

 あと、これは仕方ないかも知れませんが、難しいのはともかく、プレイ感覚が「作業」に変わるのがえらく早いですね。また、ロードが不必要に多い&長い、フリーズが多い、カメラの仕様がかなり謎、と、ちょっとシステム的な面で作りこみが浅いようにも思えます。特にロード関係は、ゲーム自体のスピードが速いだけに、ゲームの速さとロードの長さ&遅さにえらくギャップがあって、ちょっと苦痛に感じるかも。
 正直、作りの甘いあのアドベンチャーパートは、付けなくてもよかったんじゃあるまいか? 操作性も独特で、かなり人を選びそうな気もします。

「ファンタシースター・ユニバース」での大失態や、年末商戦真っ最中の「ぷよぷよ」回収騒ぎなど、最近のソニックチームはあまりいいところがありませんが、残念ながら本作は、その失態を完全挽回するだけのパワーがありませんでした。「『夢と感動』をテーマにエンターテインメントする、安心と信頼のブランドです」という自社紹介は、残念ながら今のところ完全に詐欺寸前。
 結局、本作はこの360版もPS3版も、売り上げは芳しく無いんだとか。本体の事情もあるかもしれませんが、飲酒運転みたいな姿勢でゲーム作って、「PSU」みたいな大事故を一回起こすと、信頼の回復は容易では無いということでしょうな。
 酷いオチですけど。

(2007.01.09)