シェンムー 一章 横須賀

1999年12月19日発売/セガ/90点

このレビューは、重大なネタバレを含んでいます。

「セガの70億」とか「シェムーン 茨城」とか様々な伝説を残した(残しすぎた)一本です。

 さて、CMでも「開発費70億」とデカデカと表示してウリにしてましたが、本作の売り上げは50万本で、定価は6800円。
 ザックリと定価の半分が開発費として、
 
 とか、
 
 とかいう計算結果を冷静に導いている貴方は、すでに SCE ドグマ社に洗脳されています。

 一応、「父親を殺した中国人格闘家を探すために、高校二年生の主人公が旅に出る」と、そういうストーリーがついた「バーチャファイター」なわけですが、何せ本作は「一章 横須賀」なわけで、クリアしても旅に出るところで終わり。

 基本的にお使いの繰り返しで、たまにバトルが発生するという単純なゲームなんですけど、異様に作りこまれたドブ板商店街の中で「どこにでもいけて何でもできる」という単純な思い付きを、セガの社運を賭けた力技で実現した80年代の横須賀ライフ」こそが、本作のキモ。

 朝、お手伝いさんにお小遣い500円をもらった後は、本当に何をしても自由。商店街の中を探検するも良し、時間経過と共に台詞がガラッと入れ替わる街の人と会話しまくるのも良し、無意味に景品が多いガチャガチャに熱中するも良し、ゲームセンターに入りびたるも良し。そういうのに飽きたら、ストーリーを進めるのも良し。
 ストーリーが短すぎるわりに、気付けばプレイ時間は膨大なんですが、正味の話、プレイ時間の99%がストーリーとは関係ない、こうした「余白」ともいえるヤリコミ要素。

 いや、確かにこういうのもアリだと思うんです。アリだとは思うんですが、
「これのために70億か……」
 と冷静に思ってしまうと、そのまま横須賀から四国のお遍路にでも行きたくなってきます。

 実はサターン版の「シェンムー」が殆ど完成してた、という驚異の事実があり、おそらくはそのサターン版の開発費と、それをドリームキャスト用にブラッシュアップするための開発費、つまり実質ソフト二本分の開発費用として「70億」かかった、ということだと思うんですが、その結果が後に「セガガガ」での「70億ってホントですか」という自虐ネタに凝縮されることを思えば、私は涙を止めることができません。

 ……というか、「全十三章構成」と派手に宣伝してたと思うんですが、七章以降はどうなってるの?
(後にドリームキャストで発売された「シェンムー2」には、第二章から第六章までが一気に収録されている)

 それに、ギネスブック(2006年版)に載っている「世界一のゲーム開発費」は、「エンター・ザ・マトリックス」(2003年/アタリ(日本ではバンダイから発売))33億円になっているんですが……。
 本作の開発費は、その二倍以上。堂々たる記録だと思うんですが、なんで申請しなかったんだろう?

(2009.06.30)