幻想水滸伝3

2002年7月11日発売/コナミ/82点

(※管理人は、「3」よりも「4」のほうを先にプレーしています)

 ブラボー! おお、ブラボー!。
 ……すいません、しょっぱなから意味不明な掴みですが、「幻想水滸伝3」(以下「幻水3」)です。

 時代的に密接な繋がりのある幻水シリーズですが、「3」が「2」の15年後、「4」が「1」の150年前。「3」は「4」から数えて168年後(で、いいのかな?)ということで、「3」と「4」の二作の間に直接的な時代の繋がりはドラスティックなまでになく、とりあえず「歴史が解らなくてどうしよう!」と、逆説的に悶えることはなさそうです。「2」の内容を忘れちゃったことで、より直接的に悶えましたが、それは後述。つーか、まともに考えて、こっちの方が明らかに問題でしたケド。

 さて、本作を一言で言い表すなら、ずばり「微妙な名作」。
 え、ずばりじゃない?
 確かに、RPGとしてのボリュームは一品だし、ストーリーも読ませるし、バトルにも戦略があり、おまけ要素も充実しています。なのに、肝心なところで一本抜けているというか、細々とした不満点が、名作じゃい!と断言したいところでぽんと肩を叩いてしまうのです。
 ……なんか、4の時も同じようなこと書いた気がするんだけど、ひょっとして既視感デジャヴ?

 主人公は一人ではなく、初期三人+α。その複数人の主人公が複数の視線から一本のストーリーを追う、トリニティサイト・システム(「EVE -burst error-」でいうところの「マルチサイト・システム」)というスタイル。これが、本作最大の特徴。
 そして、「微妙」な理由その壱。

 ストーリー自体は、けっこう燃えます。
 舞台は動乱の大陸。4では「罰の紋章」以外物語に絡んでこなかった「27の真の紋章」が山ほど出てきて、その歴史と所有者を巡る攻防が、巨大な動乱というビッグスケールで熱く語られます。また、ヒューゴ、クリス、ゲドという、立場も年齢も全く違うそれぞれの主人公のエピソードには、物語の中心に絡むしっかりとした「背骨バックボーン」があり、ともすれば冗長になりがちな物語を、ぐいぐいと読ませてくれます。

 ……が。
 この「トリニティサイト・システム」、着眼点としては非常にいいと思うんですが、どうにもそれをストーリー上で上手く消化しきれてません。
 ところどころ力技で押し切る強引な展開があり、無駄に時間のかかるバトルや集団戦闘も絡んで、ちょーっとテンポが悪いです。
 また、別々に操作していても大筋のストーリーは一本の筈なんですが、主人公同士のストーリーが絡むところでは、ちょっとずつズレがあるような気がして、プレイしながら「?」と思うこともありました。
 最後にルックのエンディングを加えたことで、きっちり物語を完結させているだけに、ちょっと残念です。
 あと、これは余談ですが、本作をプレイするなら、絶対に「2」を先にプレイしておくべきです。「3」→「4」と違い、「2」→「3」は完全に物語として繋がっているので、「2」を知らないと、味方キャラクターの設定や、ストーリー後半で重要なキャラクターがこれでもかと語るタームの山が理解できず、お楽しみ度半減です。

 さて、幻水といえば、なんと言っても108人の「仲間」集め。
 本作では、本拠地メンバー+戦闘要員、実質108人以上(うち、獣数匹)を、自分の城に集めることが出来ます。
 で、これが「微妙」な理由その弐。
 三人の主人公と、彼らを囲む人間模様は、本当に魅力的です。ヒューゴの成長を見守るジョー軍曹とフーバー、固い絆で結ばれたゼクセンの六騎士など、20人にもなろうかというこの人数で、それぞれに個性と役割をしっかり持たせ、物語を盛り上げています。個人的には、ゲド編の、キッツい仕事をシニカルなユーモアで乗り越えていく傭兵隊の面々が好きです。
 ……が。
 脇役の中には、「なんでこの人が108星なの?」と疑問に思いたくなるような面々も数人います。
 これらの人たちのエピソード、たぶん物語の大筋を考えた人とは違う人が書いたのでしょうけど、もう少し考えてから書こうよ。ケンジやギョームなど、実社会では絶対にお友達になりたくない面子が、大手を振って、僕らの誘いを待ってるゼ!
 確かに108人もいれば、キャラに個性をつけるのも大変な作業でしょうが、個性をつけすぎて世界観にあわず、ブチ壊しになっていると思えなくもありません。
 キッドやケンジ、ジェファーソンなどは、ネタキャラとはいえ明らかに20世紀の人っぽいし、3の世界観とは違和感ありまくりです。
 とはいえ、意地でも全員集めないと、最終的なエンディングが迎えられないので、こう背後から首をキュッと絞めたくなる衝動とロープを必死で留め、頬の筋肉だけで笑顔を作って、彼らのイベントに付き合ってあげましょう。
 こうして、人間は大切な何かを失っていくのでしょうか。

(以下、さらなるネタばれ)
 それと、やっぱりラスボス役のルック、セラ、ユーバー(+アルベルト)を108星に入れるのは、少々無理がある気がします。
 第六主人公としてルックを操作できることで、彼の苦悩やユーバー、アルベルトの思惑も解説されているし、エンディングの「108星のその後」でわざわざ語らなくても良いような気がしました。
 恐らく、「1」「2」ではルックが味方だったので、それに対するフォローなのかな。
 あと、どう考えても、ルックよりもセラの魔法の方がすごいよな。

 今回は主人公がたくさんいるんですが、これまで主人公が担ってた天魁星って、最初から選択できるヒューゴ(天傷星)、ゲド(天寿星)、クリス(天微星)じゃなくてトーマスなんですね。
「真の紋章を持たない天魁星」と一部で話題になってしまいましたが、同じ立場でも、「5」の王子よりゃかなり愛されてます。
 「3」の108星では、エミリーとキャシーとシャロン萌え。小さいほうがどうやって存在してるのかわかりませんが、ビッキーとチビッキーでも可。やはり、「外伝」もプレイしなければならんのか。

 システム面での話もしておくと、これがまた「微妙」な理由、その参。
 システム自体が使いにくいわけではないんだけど、カメラワークが操作できないのは、ちょっと辛いです。
 ダンジョンや街中などでは、視点が一つしかないため、奥に進むときはいいんだけど、帰ってくるときは、キャラクターがプレイヤー方向にずんずん迫ってきます。箇所によっては、見やすいように視点が移動しますが、使いやすいとはいえません。
 あと、文字が気持ち小さくて、慣れるまでは読みづらいかな、と。

 えーと、褒めてんのか貶してんのか解らなくなったので、純粋に面白いと思ったところを上げてみます。
 まず、立ち上げてすぐ見ることのできるオープニング・ムービーが、素晴らしい。
 そして、幻水シリーズお馴染みの「本拠地システム」。4では巨大船でしたが、3では基本に忠実に古城です。ここには108星以外にも様々な人種が集まり、多くの施設が建つ事になり、当然お遊び要素もあるのですが、中でもお勧めは、ナディールの「劇場」。
「マッチ売りの少女」や「オオカミ少年」「ロミオとジュリエット」などの脚本に合わせて108星から役者を選び、舞台を見ることになります。
 ヒューゴやネイ、クィーンやシャボンといった名優の演技を安心して見るのもいいですが、やはりお勧めは「お笑い」系役者の皆様。

 などなど。明らかに何か間違えてる人もいますが。つーか、最初の二人はゲームの主人公なんですが、わりと酷い扱いです。
 もちろん観客からはブーイングの嵐で、時にはセットが壊れたりもしますが、プレイヤーは間違いなく笑えます。この手の込みようを、別のところに生かせなかったかと悔やみながらも、笑ってしまいます。

 さて、4でもそうでしたが、良いところも悪いところも非常に微妙、という感のある本作。色々書きましたが(つーか、褒めてるとは思えない文章ですが)、総じて面白いです。
 スピードクリアを優先する人には、ちょっと物足りないかもしれません。じっくりと腰をすえて楽しむタイプのゲームですね。

(2005.05.01)