ファイナルファンタジー10-2

2003年3月13日発売/スクウェア/84点

! このレビューには、前作「FF10」の重大なネタバレが含まれています。ご注意ください。

 発売から年が経つ現在でも「ファミ通」の「読者が選ぶTOP20」で常に上位にランクしている「ファイナルファンタジー(以下「FF」)」シリーズの代表作、「FF10」の続編。
 当時のFFシリーズでは数少なかった、キャラクターや世界観を受け継いだ作品で、前作のヒロイン「ユウナ」がもたらした世界平和「永遠のナギ節」以降の世界(スピラ)の状況を描いています。
(FFシリーズは、ナンバリングタイトルで基本的に世界観を受け継がないので、本作も「11」ではなく「10-2」になっています。ただしこの後、「FF7」の数多くのスピンオフ作品や「FF13-2」などが発売されています)

 前作の主人公であったティーダが、前作のエンディングで消滅してしまっているため、本作の主人公は、前作のヒロインだったユウナに変更。
「FF10」の項目でも書いている通り、前作は数多いRPGの中でも、私が最も感動した一品。そのぶん思い入れも深く、この「FF10-2」の発売のニュースを最初に聞いたときは、当時の感動を思い起こしてスクウェアに本気で感謝したものです。
 改めてスピラに降り立つ感動を薄めたくないために、あえて発売前のニュースや情報を一切遮断。「ドラクエ3」のときでさえ店に並ばなかった私が(註1)、朝一番でゲーム店に直行して本作をゲット!
 そのまま勢いに任せてPS2起動、ソフトイン! ゲームスタート!

 ……あれ? なんだか、予想とはちょっと異なる雰囲気。

 いきなり始まったのは、「永遠のナギ節」をもたらした大召喚士ユウナのコンサートだとおお!?
 ノーガードの顔面をいきなりフライパンでブン殴られたかのようなこの衝撃!

 フリフリのアイドル風ミニスカートに身を包んだ偉大な召喚士が、倖田來未の「Real Emotion」を華やかなライトの元で歌い、軽やかに踊る様は、まるでジャイアント馬場が軽やかにフライングバルセロナアタックをかますような、というか、ソリッド・スネークが大笑いしながら北斗百烈拳をかましているかのような、衝撃的すぎる光景。
 いや、これはこれで充分にアリなんですけど、さすがに前作がアレで、続編の一発目がコレというのは、いかになんでもショッキングすぎて、丸一日立ち直れませんでした。
 実際のところ、そのアイドルはユウナの偽者だったわけですが、本物のユウナも、気ぐるみやミニスカ、ショートパンツ姿で大暴れしたりと、前作に比べれば余りに「ハッチャケすぎ」と言えるくらいに明るくなっており、何があったんだユウナ、というよりはなにがあったんだスクウェア。

 このユウナの変化でもわかる通り、全編を通じてシリアスなドラマが続いた前作とはうって変わって、本作は全編通して明るい雰囲気で貫かれており、前作で感動した人ほど呆気に取られることうけあい。
 マ世界は平和になってるんで、この明るくキャピキャピ(死語)した雰囲気は、私は充分にアリなんですが、やっぱ受け入れられない人がかなりいたようで、本作は「FF」シリーズの中でも屈指の問題作となっております。

 本作は、正確に言えば「FF10」の「続編」というよりは「後日談」か「ファンディスク」といった方がしっくりくる内容で、歯ごたえのあるストーリーを楽しむのではなく、前作の登場人物の変化や、世界の変遷を見て感慨にふけるのが正しい楽しみ方。
 世界の移動は飛空艇で一発で「長い道中」なんて雰囲気はないし、ストーリーもあるにはありますがかなり短めで、FFシリーズということで歯ごたえを期待すると肩透かしを食らいます。
 サイドストーリーやミニゲームが豊富なんですが、それを含めても総プレイ時間は40時間くらい。全部スッ飛ばしてクリアすると半分くらいかもしれません。

 ただし、ここだけはFFシリーズの伝統ですが、戦闘バランスはかなりキツめ。
 キャラクターの職業(ドレス)に応じて派手にパラメーターが変わるんですが、本作には武器・防具といった概念が無く、アクセサリでしか防御力を上昇させられないためか、食らうダメージがメチャメチャ大きいです。防御力が低いドレスは、はっきり言って使い道がありません。
 そのうえ、防御不可能な特殊攻撃・即死攻撃が多いうえにレベルも上げづらく、ストーリーレベル3からいきなりモンスターが強くなるので、正直、プレイしててウンザリすることがけっこうありました。
 作ったヤツ、絶対頭がイカレてる。

 シドやアニキなど、かなりウザい登場人物(リュックも少し痛いが、露出度が高いので相殺。「アニキも露出度が高いけど」などという意見は射殺)も多く、「ガンダム」における「Gガンダム」のような位置づけ、というか、シリーズの中でも「FF8」とは違う意味で爆弾みたいな扱いをされることが多い本作。
 前作から受け継いでいるのは世界観のみで、よく言えば「FFの殻を破ろうとした実験策」、悪く言えば「しこたま金をかけて作った同人ゲーム」ですが、私的には充分に許容範囲内。
 軽い気持ちで手を出すには勇気が要るかもしれません。決してデキの悪いゲームではありませんが、プレイする際には、充分なリサーチをお勧めします。

(2010.01.10)