最近では昔ほど酷くはないとは言え、「キャラゲー」(この場合は「原作つきゲーム」)というもののマーケットは、やはり原作ファンが大多数を締めます。その有り余る原作への愛が、多少のデキの酷さを脳内補完してしまうのも、また小さな事実。
だからって、それを見越して適当に作って、責任をファンに丸投げヒャッホウッ!
今ほどゲーマーがヒネてなかったファミコン初期なんかは、特に酷かった。
人気キャラクターと人気ジャンルを安直に合体させてしまえと言わんばかりに、原作完全無視で撲殺アクションゲームにされてしまった「タッチ」や「バツ&テリー」なんかは、一から作っている分、まだマシ。
中には「キャラクターが出てさえいればいいんだろぉ?」と言わんばかりに、自社製品の「ももこ120%」のキャラの顔を挿げ替えただけの完全コンパチぶりを惜しげもなく発揮した「うる星やつら」なんてのもありました。
おかげで、一時期「キャラゲー=クソゲー」なんて公式が、当然の如く出来上がっていましたが、それは製作者の思惑を介さないファンのせいではなく、こんなゲームで売れるだろうと思ってファンを甘く見た製作者本人のせい。
確かにキャラゲーは、制作費の大半がキャラクター利用のための著作権料で吹っ飛んでしまうという足枷があまりに大きいのですが、そこでなんとかするのがプロってもんでしょうよ!
最近ではそうしたジレンマから脱却するために、「ゲームからアニメへ」という逆思考で成功した「ポケットモンスター」「ロックマン」や、「単体でダメなら集めてしまえ」という発想の転換で成功した「スーパーロボット大戦」「キングダム・ハーツ」なんかがありますが、やはり単体では金太郎飴みたいに作り続けられている「ガンダム」みたいな成功例は極々稀です。
(普段は「ガンダム」の著作権の上にふんぞり返ってテキトーな仕事をしているバンダイが、カプコンの「エゥーゴvs.ティターンズ」のデキの良さに慌てふためいて、「めぐりあい宇宙」の完成が大幅に伸びた、なんて笑い話もありますが)
で、そういう厳しい目のある「キャラゲー」市場に殴り込みをかけるのに、D3パブリッシャーが選んだのが「ザブングル」っスか!
もともとこの「シンプルキャラクターシリーズ」、スタッフがマーケットとファン層を睨み、購買対象を絞り込んだ末に選択されたのが、「ガンバの冒険」「ハイスクール!奇面組」「魁!男塾」「一休さん」「釣りキチ三平」「なんてっ探偵アイドル」と、まあ「どこ見て商売やってんだ貴様ら」と言いたくなる様なラインナップ。
愛と魂だけが暴走して、それ以外の全てがついてこなかったスタッフの迷走っぷりが涙と共に目に浮かぶようです。
で、最初から手足をもぎ取られ、ガソリンも与えられずに荒野のブルーゲイルに無理やり落とされた我らがドマンジュウこと主人公ジロン・アモス、唯一与えられた「ジャンル」という名の行動目的は「真横視点の横スクロールレース」!
左からスタートしてステージ右端まで走り、折り返して左に帰る、ホントにそれだけ!
内容だけ書くなら、上の一行だけで充分なんです、本当は。
いくらシンプルシリーズだからったって、「ザブングル」が放映されたのは1982年2月〜83年1月。リアルタイムで見ていたファンの大多数は既に30過ぎたおっさんでしょうに、社会の酸いも甘いも嗅ぎ分けつつあるその年代に、こんな適当仕事が通用するか!
一応、アニメに登場したマシンやロボットはほぼ全部登場するみたいですが、コースは少ないわ、動きはちゃちいわ、ボイスすら入ってないわ。レースということで、競争相手がいて、それらの妨害行動もできますが、そのグラフィックは恐ろしいほどにチープ!
全ての罪は三日で許されるのがブルーゲイルの掟ですが、現実世界はそんなに甘くないわ! 「ザブングル・グラフィティ」を100万回見て、出直して来い!
「売れれば給料ガッポリで、売れなければ惨めな失業者!」(vo.銀河万丈)
原作者であり、アニメ版の総監督を勤めた富野由悠季氏には、監督したアニメの登場人物が殆ど死んでしまうということで「皆殺しの富野」というあだ名を冠していた時期があるそうですが、まさかアニメから離れた関連商品で、ファンの精神まで殺すことになるとは思ってもみなかったでしょうね。
(2007.02.08)