ラブクエスト

1995年3月17日発売/徳間書店インターメディア/73点

 えー、最近、なにやらゲームへの規制がやかましくなりつつあるようです。
 個人的には、いかにも普段は「ゲームどころかPCにも触ってません」みたいなおっさんおばさんに、数十分プレイしただけとか、挙句にはプレイもせずに紹介ビデオ見ただけで危険か危険じゃないか判断されてるような現状に、思わず鼻で笑ってしまいそうですが……。
 すいません、ちょっと偏見が入ってしまいました。

 さて、当然のことではありますが、周囲にこんなこと騒がれなくても、プラットホームにはプラットホームなりのチェック・システムというのがありまして。
 任天堂の場合、「スーパーマリオクラブ(京都リサーチセンター)」という100〜200人規模のテストユーザーに完成品をプレイさせて、一定以上のポイントをとれなかったソフトは発売させないというシステムがあります(ちなみに、テストプレイヤーの時給は1000円)。

 こうして、ゲームソフトは厳しいレーティングを経て発売されるわけですが、ごくごくたまにですが、中にはどうしてその規制を突破できたのか不思議なソフトもありまして。
 例えばプレステでは「身体を売ったことがある」という衝撃的な過去を持つヒロインがいる「クーデルカ」や、ゲーム開始直後にいきなり自分の妻子をブッ殺す「破壊王などがソニー・チェックを通ったことで一部で話題になりましたが、この項で取り上げる「ラブクエスト」は、ある意味その頂点に立つソフトです。

 ジャンルはRPG。主人公は24歳ながらマザコンのサラリーマンという、わりと前代未聞な設定(なにせ、「好きなタレント:ママ」です)。
 結婚式の途中でいきなり消えてしまった婚約者のユカさんを探すのが目的なんですが、ストーリー開始直後の主人公とママの会話は、そのテキストを読むだけで首を吊りたくなってきます。

 町の中を歩いていると敵と遭遇します。その全てが女性。攻撃手段は「たたかう」ではなく「くどく」、こちらが使う技(魔法)は「あしなめ」「どげざ」「こしにて」などなど。

 すいません。助けてください。
 基本的には相手を攻撃するのは主人公のみで、仲間の女の子達はそれを補助するのですが、これですらアイテムやお金を貢がないと助けてくれません。世知辛い。

 けれど、これくらいで驚いてはいけません。本作の最大の特徴は、スーパーファミコンで発売されたのが信じられない、トチ狂ったキャラクターのセリフの数々です。
 とりあえず、目に付いた主なものを一気に列挙するので、まぁ、ご覧ください。
 準備はOK?↓

「アタシたち夫婦、「アレ」がもう一年もないの…… めっきりごぶさたってヤツねェ……」
「……ネ、ネ! おね、おねがーいっ! シテ、シテ! だれも見てないから! ハゲしいのシテ! 早くーン!!」
「先っちょ、先っちょ、気持ちいい」
「……ハーっ! ウーっ! モーっ! おっおじょーずぅぅぅぅーっ!」
「パパとママ、きのうの夜 「がったい」 したんでちゅぅ」
「下北沢行きの電車が出るぅーっ! で、出ちゃぅー、出したぃぃーっ!」
「ここにいると、みんながあたしの頭におしっこかけてくれるの。幸せ!」
「お願い:この人、動いてはいますがもうすぐガンで死にます。放っといてください」
「あぁ!!! あなたは!! もしかしてラブクエストの主人公でしょ!? あなた昔ドラエの村人やってたって本当ですか? 今ギャラどれくらい貰ってんの?」
「ゆるさん! おれの『メスイヌけん』で粉々にしてやる!」
「GO! GO! ファイト! 好きなだけ、吐いてエ! キャ〜、素敵〜」
「いつもの帰り道〜 マシンガンで撃ち合うの〜 彼は血まみれ〜 学校帰りの出来事〜胸がキュンとなっちゃう〜 彼はズタズタ〜
 ヘイ!!

 えー、まだお元気ですか?
 ちなみに、最後のヤツは路上ライブをやってるストリートシンガーの歌です。「デトロイト・メタル・シティ」のクラウザーさんが紛れ込んでいるようです。

 もちろん、これだけ好き勝手やってれば、カットされたセリフもたくさんあるようなのですが、なんとこのゲーム、それをすらネタにしてます。

「*お知らせ*この人のセリフは非常にワイセツなものなので、カットになりました。ご了承下さい。」
「*お断り*この男のセリフは犯罪をほのめかす内容だったので警察の方から厳しく注意を受けてカットになりました。他のゲームメーカーの方々もくれぐれもご注意くださいませ

 ……まいった。自虐ネタもここまでくると、大したもんです。
 自虐ネタついでに書くと、街中にある「オスキー」編集部、で編集者が書いている「ラブクエスト」のレビュー(フ●ミ通であるアレ)は、四人で各2点、1点、1点、1点と散々。自分でそこまで書くか。

 セリフがこんだけ狂ってれば、当然他の部分も狂いまくり。
 やりようによっては二分で見られるエンディングとスタッフロール。
 迷宮と化したウンコの中でカレーと間違えてそれを食ってるインド人。
 六本木の交差点で産卵してる海亀。
 両手に扇風機を持って空を飛ぶ電気街のお姉さん。
 死後二週間のハイレグ……。

 ……いや、もう、なんというかね。
 これが「暴れん坊天狗」の場合なら、「企画書書いたヤツはキてるわー」とか思うところなんですが……。このゲームは製作スタッフ全員の頭に虫が沸いてたに違いありません。
 キャラクターデザインが弓月光氏ということもあってか、その濃さからちょっと買い控えられたふうなことも聞きましたが、正直、この狂いっぷりを堪能できないのは損です。
 もう年も前のゲームなので手に入れるのも難しいかもしれませんが、もし店頭で見つけたら速攻買いをお勧めします。
 そして貴方も、目を点にしましょう。

(2005.11.08)