邪剣か聖剣か、どっちや。
とにもかくにも、いろんな意味でものすごいゲーム。ファミコンのグラフィックに慣れた目に飛び込んでくる、頭身の高いキャラクターや、うねうねとフルアニメーションで不気味に動くH.R.ギーガーデザインのモンスターなど、感動以外の何者でもありませんが、実際にプレイしてみると完全に逆の意味で感動。
全体的に難易度は高く、戦闘も謎解きも一筋縄ではいきません。
PCエンジンでは初めてのRPGなんですが、「夜中にやらないでください」というCMの惹起を証明するかのように、生物はともかく植物にいたるまでモンスターが豪快に血を吹くという流血フィーバーWOW!な様は、今の洋ゲーもびっくりです。
どうもモンスターのデザインのネタ元がクトゥルフ神話らしく、元々グロいのに内臓だの流血だののスプラッタ要素満載で、後のPCエンジンのRPGに大きな影響を与えた。……なんてことは間違ってもありませんが。
戦闘のバランス自体が凄まじく悪く、考えられる限りレベルを上げて新しいフィールドに乗り込むと、驚くほど強いザコ敵に瞬殺されるなんてザラ。モンスターのレベル設定が無茶苦茶で、今いる場所では神様でも、新大陸ではすべからくヒエラルキーの最底辺。
また魔力は高いが特技は「脱走」のライム、パワーはあるが大扇風機のバロン、死んだ仲間にHP回復魔法をかけるカオス、早いだけのマイスト、本当の意味でお荷物のロミナなど、仲間の個性が強すぎて、戦闘では四苦八苦。
……ま、使うのは結局ライムとバロンの組み合わせだけなんだけどな(一度に組めるパーティーは3人で、以降変更不可)。
ひたすらに魔王アザトースを倒すことが目的で、基本的にシナリオは一本道(サブイベントなんかひとつもありません)のはずなんですが、隠しの抜け道を通らないといけないところも多く、攻略本なしでのクリアは非常に難しいです。
ひらがな・カタカナ・アルファベットの入り混じる長いパスワード入力も含めて、物凄い忍耐力を最後まで要求されますが、それによって齎される満足度は低いというのは、少々キツイですね。ゲーム自体は、あらゆる意味でシンプルなんだけど。
かつてサターンで「エネミー・ゼロ」を出した飯野賢治氏が、「俺のゲームを評価するときは10点満点か評価不能にしろ」と大ボラをかましたことがありますが、本作ほどその言い分に相応しいゲームも無いような気がします。
プレイした人によって、はっきりとクソゲーか名作かの評価が分かれているのがその良い証左。
最後に主人公が埋めたはずの邪聖剣ネクロマンサーを何者かが掘り返しているシーンでエンディングなどのブラックな味付けが、強く印象に残るゲームでした。
(2006.11.04)