THE KING OF FIGHTERS XII

発売機種発売日発売元価格
業務用(TAITO Type X2)2009年4月10日発売SNKプレイモア1020000円
業務用(Type-X2 PCB)2009年4月28日発売SNKプレイモア388000円
プレイステーション32009年7月30日発売SNKプレイモア6800円
Xbox3602009年7月30日発売SNKプレイモア6800円

ストーリー(リョウ・サカザキ)

 肉厚の黒い革ジャンをはおったリョウ・サカザキは、チーズとオリーブの匂いの満ちる食料品店の中を見回し、思わず口に出して呟いた。
「……どうして俺がこんなことをしなきゃならないんだ?」
 肌寒い初冬のロンドンと、そうぼやくリョウとは、確かにミスマッチの感がある。ましてや若い女性をエスコートしてともなればなおさらだった。
「だいたい、俺がわざわざヨーロッパくんだりまで来たのは――」
「イタリアのミスター・ロバートに会うためだっていうんでしょう? それはもう何回も聞きましたー!」
 リョウの言葉をさえぎり、サリーはレジのカウンターにどんどん食材を積み上げていく。キングの店「バー・イリュージョン」ではたらいているサリーは、誰が相手でもはっきりとものをいう子だった。もちろんオーナーの知人が相手でもそれは変わらない。
 サリーが買い込もうとしている食材の山を見て、リョウはうんざり顔で天井を振り仰いだ。
「……一応聞くけど、それも俺が運ぶのか?」
「当然です! 何のためにここまで来たんですか?」
「たまたまだよ。ついでというか何というか」
 道場生の指導を父と妹にまかせ、リョウはひさしぶりにロバートと会うためにイタリアへ向かった。リョウとロバートは、少年時代からともに極限流空手を学んだ同門のライバルであり、そして親友である。おたがいに切磋琢磨し、今では極限流の龍虎――“無敵の龍”リョウ・サカザキと、“最強の虎”ロバート・ガルシアとして、その名と実力は世界に知れ渡っている。
 そのロバートが、入れ違いにアメリカに渡ってしまっていたため、何かと妹が世話になっているキングのところに顔でも出すかと、リョウは急遽イギリスまでやってきたのである。
「はい! これも持って!」
「……キングの店ではたらいてるだけあって、おまえさんもキツいな……」
 すでに大きな紙袋をひとつかかえているところに、もうひとつ同じような紙袋を押しつけられ、リョウは渋い顔をした。
「こんなことなら来るんじゃなかったよ……はるばるアメリカからやってきた客人に、いきなり店の買い出しの手伝いなんかさせるか、ふつう?」
「リョウさん!」
 店を出てもまだぶつぶついっているリョウを、ダウンジャケットでむくむくと着ぶくれしたサリーが唐突に振り返った。
「――いっておきますけど、ついでに寄ったとか、たまたま来たとか、くれぐれもオーナーの前でそういうセリフは口にしないように!」
「は?」
 リョウのきょとんとした顔に、サリーは深い溜息をついた。
「……ユリさんもいってたけど、どうしてこの人、こんなに鈍いんだろ……? ホントに空手のことしか頭にないのかしら?」
「何かいったか?」
「……何でもないです」
 軽くかぶりを振り、サリーは歩き出した。
「――とにかく、オーナーに聞かれたら、オーナーの顔を見たくなったから来たっていってください! そうすれば夕食ぐらいご馳走してあげますから」
「どうしてそんなことをいわなきゃならないんだ?」
「じゃあ、リョウさんはオーナーの顔を見たくないっていうんですか?」
「そういうわけじゃないが――おい、気をつけろよ」
「きゃっ」
 肩越しにリョウをかえりみたまま歩いていたサリーが、前方からやってきた男にぶつかり、面白いくらいにころんと見事に転がった。
「いたたたた――」
 アスファルトに尻餅をついたサリーは、相手に向かって何かいいかけたようだったが、その言葉は途中で消え去った。小柄な彼女の前に立っていたのは、上背が2メートル以上はあろうかという大柄な男たちだったのである。
「よう」
 目の周りに青いアザのある男が、にんまりと笑ってサリーにいった。
「――誰かと思えばサリーじゃねえか」
「あっちゃ〜……」
「どうした、知り合いか?」
 リョウが呑気に声をかけると、サリーは慌てて立ち上がり、リョウの背後に隠れて小声でささやいた。
「違いますよ! この前ウチの店に来た連中です!」
「ああ、常連か」
「常連なんてとんでもない! 酔ってわたしやエリザベスに手を出そうとして、オーナーにボコボコにされて追い出されたタチの悪い酔っ払いです! それ以来ウチには立ち入り禁止で――」
 サリーがそう説明している間に、男たちはさりげなくふたりの前後をはさむように回り込んでいた。どうやら挨拶だけしておとなしく帰してくれそうな雰囲気ではない。
「ここで会ったが百年目――という感じだな」
 リョウは3人いる男たちにすばやく視線を走らせ、かかえていた紙袋をサリーに渡した。
「しかし、そういう事情なら、少しくらい荒っぽいことになってもあいつに迷惑をかけずにすむか……」
 ひとり言のように呟き、リョウは正面の男の前に進み出た。
「……何だ、てめえは?」
「俺の連れに何か用事があるなら俺が聞こう」
「はぁ? てめえみてえなチビがか?」
 男はリョウを見下ろして鼻で笑った。確かに両者の身長差は20センチもあり、体重差もかなりあるだろう。男たちがリョウを笑ったのも無理はない。
 しかし、リョウはまったく表情を変えることなく、
「少なくとも俺は、そのアザをつけたヤツよりは背も高いし、体重も重いと思うんだが、違うのか?」
「……!」
 キングに叩きのめされた時の記憶がよみがえってきたのか、男は反射的に目もとのアザを押さえ、顔を真っ赤に紅潮させた。
「こっ、この……!」
「ただデカいだけの筋肉にいくら刺青を入れても強くはなれないぞ? 空手でも習ってみたらどうだ?」
「この野郎!」
 男がリョウの頭上からハンマーのような拳を振り降ろしてきた。
「もったいないな。それだけの体格があるのに宝の持ち腐れか」
 体重の乗った拳を軽く脇にはじいて逸らしたリョウは、すかさず男のみぞおちへと右正拳を打ち込んだ。
「ぐぶぉ……」
 急所を打たれた男は仰向けに吹っ飛び、そのまま腹を押さえて苦しげに呻いている。
 その時、連れ合いが一撃でのされたのを見た背後の男たちが、ふたり同時に襲いかかってきた。
「きゃっ!」
「下がってないと怪我をするぞ!」
 サリーをかばいながら、リョウは残りの男たちに相対した。一方の男の大振りなパンチを紙一重のダッキングでかわしつつ、もう一方の男の懐へと一気に踏み込み、その顎を拳で突き上げた。
「がっ……」
 大きくのけ反った男は、その一発だけで軽い脳震盪でも起こしたらしく、目の焦点を失ってそのまま崩れ落ちた。
「――まだやるか?」
「う……!」
 最後に残った男は、路上に倒れた仲間たちと、息ひとつ乱れていないリョウとを見くらべたあと、今にも泣きそうな顔でふるふると首を振った。
「行くぞ、サリー」
「あ、はい」
 リョウは革ジャンを脱いで肩に引っかけると、呆然としているサリーを連れて歩き出した。
「サウスタウンほどじゃないが、ロンドンにもああいう手合いはやっぱりいるんだな」
 リョウは涼しげな顔でそう呟いた。

      ◆◇◆◇◆

 ドアベルの音に顔を上げたキングは、リョウとサリーを見てにっと笑った。
「おかえり。悪かったね、わざわざ」
「いや、おかげでいいトレーニングになったよ」
「トレーニング?」
「そそ、そうなんですよ、オーナー! 実は――」
 さっきの顛末を興奮気味に報告しようとするサリーを制し、リョウはカウンターの上に紙袋を置くと、キングが広げていた新聞を覗き込んだ。
「何か面白いニュースでもあったのか?」
「あったよ。――ロバートがテロリストに誘拐されかかったって」
「何だって!?」
「もちろん未遂だけどね」
 キングはリョウの前に新聞を差し出し、買ってきてもらったものを冷蔵庫の中にしまった。
「さすがというか……まあ、ロバートの実力なら当然かもしれないけどさ。家業の手伝いでトレーニングをおろそかにしてるんじゃないかと思ってたけど、どうやら余計なお世話だったみたいだね」
「…………」
 じっと無言でくだんの記事を読み込んでいたリョウは、いきなり新聞を放り出すと、スツールにかけておいた革ジャンを手に取った。
「俺もうかうかしていられないな……じゃあな、キング!」
 一方的にそういい残して、リョウは店を飛び出していった。
「えっ?」
 驚くサリーとは対照的に、キングは苦笑混じりにすでに閉まったドアに向かって手を振っている。
「ちょっ――どこへ行っちゃったんです、リョウさん?」
「アメリカだと思うけど」
「どうしてです!?」
「親友の武勇伝を聞いて血がたぎってきたんだよ、たぶんね」
「たぶんねって……そ、それでいいんですか、オーナーは?」
「いいも悪いも、そういう人間なんだよ、リョウは」
 キングは肩をすくめてワイングラスを磨き始めた。
「リョウだけじゃない。大なり小なり、わたしたちはみんなそういう人間なのさ。……あんたたちには理解しがたいだろうけどね」

ストーリー(ロバート・ガルシア)

「ロバートさまならただいまお出かけ中ですが」
「外出中?」
 最近採用されたばかりの秘書の言葉に、カーマン・コールはサングラスの下の瞳を細めた。
「――そんな予定は入っていなかったはずだが?」
 いぶかしげなカーマンの問いに、まだ若い秘書は笑顔で応じた。
「ロバートさまおひとりで、気分転換に屋上で葉巻を吸ってくると。10分後にはお戻りになられるそうですが」
 それを聞いたカーマンの肩からふっと力が抜けた。
「そうか」
 ネクタイをわずかにゆるめ、カーマンはきびすを返してエレベーターホールに向かった。

      ◆◇◆◇◆

 排気ガスの臭いのするビル風に吹かれながら、ロバートはぼんやりと空を見上げている。
 ガルシア財閥が所有するこのビルは、灰色の摩天楼が無数に空へと延びるこの巨大なビジネス街の中でも、10本の指に入る高さを誇っている。北米大陸におけるガルシア家の“城”――ビジネスの中枢としての拠点に、ロバートは今、父アルバートの名代として滞在していた。

「ロバート」
 ヘリポートの真ん中に立ち尽くしていたロバートは、カーマンのその声に振り返った。
「何や、カーマンか」
「勝手に会長室から出歩くな」
 ロバートに対してここまで砕けた口調で話しかける人間は、会長のアルバートを除けば、グループ内ではカーマンしかいなかった。それが許されているのは、幼い頃からロバートのボディガードを務め、教育係的な役割も帯びていたカーマンが、ロバートにとって年の離れた兄のような、特別な存在だからなのかもしれない。
 スーツの内ポケットからタバコを取り出し、カーマンは嘆息した。
「今度のパーティーではスピーチの予定があったな。もう原稿は頭に入っているか? アメリカ政財界のお歴々を前に、無様な真似は許されんぞ?」
「ボディガードだけやのうて、ワイの秘書まで始めたんか、カーマン?」
「なまじの人間では、おまえが勝手なことをやらかすのを止められんからな。……特に今度の秘書のミス・ジュールズは、あそこでああして飾っておくぶんにはいいが、どうやら上司の受けはよくないらしい」
「上司? ワイのことかいな?」
「それ以外に誰がいる? 私としては、葉巻を吸わないはずのおまえが、そんな言い訳までして屋上に逃げてきた理由が聞きたいが」
「逃げてきたちゅーか……あのコ、露骨やねん」
 ロバートの表情と口調から何かを察したらしく、カーマンはタバコの煙を空に吐き出し、にやりと笑った。
「……察するに、ケンブリッジ出身の才媛ミス・ジュールズは、実は玉の輿を狙うしたたかな女だった、といったところか?」
「せや。気づくとこう……ワイのほう見ててな、目からハートマークの光線出しとんのや。おまけに絶対に自分の口からは誘ったりせえへんのが悪知恵がはたらくっちゅーか……アレやな、あのコはああして気のあるそぶりだけしとって、ワイのほうから食事に誘ってくれんのを待っとんのやで」
「おまえが女性にもてるのは判った。……が、保安部としてはどうにもできない問題だな、それは」
 カーマンは他人ごとのように呟いた。
「それで仕事がおろそかになっているのならともかく、実務能力としては彼女は非常に優秀だ。業務中、さかんにおまえにウインクしてくるから解雇するなどと切り出したら、下手をすればセクハラだと騒がれて裁判沙汰になる」
「せやからワイも困ってんねや。なあ、どないかしてくれへんか、カーマン?」
「とりあえず、おまえがつねに毅然としていればややこしいことにはならんだろう。人事部には私のほうからそれとなくいっておくが」
「頼むで、ホンマ……ワイはユリちゃんひとすじやねんから……」
 ロバートは額に手を当て、もう一度空を振り仰いだ。

      ◆◇◆◇◆

 翌朝、まだ街がまどろみの中にいる頃、ロバートはトレーニングウェアに身を包み、ロードワークに出た。
「――しかしキミもアレやな、相当な物好きなんやな」
「いえ、わたしも身体を動かすのは好きですから」
「せやけど、ワイのは美容とか健康法とかいうのとはちゃうねんで?」
「承知しております」
 自分でいうだけあってかなり走り慣れているらしく、ミス・ジュールズはロバートの斜め後ろを遅れることなくついてくる。

 フィットネスクラブで身体を鍛えているというミス・ジュールズが、ロバートが毎朝ロードワークをしているという話に食いついてきたのは、ある程度予想できていたことだった。さかんにモーションをかけてもまったく反応してこないロバートの態度に、いい加減焦れてきたのかもしれない。
 あしたの朝、日課のロードワークにごいっしょさせてほしいとミス・ジュールズが切り出してきた時、ロバートはあえて断らなかった。
 ロバートなりに思うところがあったからである。

 束ねた長い黒髪をなびかせ、ロバートはまだ明け切らぬ街を軽快に駆け抜けていく。まだスタートしてから5キロも走っていない。
 だが、ミス・ジュールズにとっては、「まだ」ではなく「もう」5キロといった様子だった。
 少し苦しげに、ミス・ジュールズが尋ねた。
「……いつもどのくらいこなしてらっしゃるんです?」
「正確な距離は判らんけど、だいたいいつもマンションから職場までやな」
「え!? 10キロ以上ありますけど――」
「そのくらいせな意味ないやろ? ワイのダチはこのくらいふつうに走っとるしなあ。ワイも負けてられへんわ」
 当たり前のように答えたロバートの呼吸は、まだ充分に落ち着いていた。
 そもそもロバートとミス・ジュールズとでは、身体を鍛える意味がまるで違う。ミス・ジュールズは美容や健康のために身体を動かしているのかもしれないが、ロバートはあくまで格闘家としての鍛錬を目的としている。
 いわゆる天才肌で、何でもそつなくこなすロバートだったが、空手に対する姿勢は思いのほか生真面目だった。それは、“無敵の龍”リョウ・サカザキという最大のライバルがいるからかもしれない。
「キツいんやったら、どこぞでタクシー拾って先に会社行っとってもええで」
 鼻歌を歌いたくなる気分を必死に抑え、ロバートは少しペースを上げた。ロバートとしては、これでミス・ジュールズがうんざりさせられて、自分と個人的につき合うことをあきらめてくれればいいと思っている。というより、そのためにロードワークに同行することをOKしたのである。
「ユリちゃんやったら、このくらいで音ェあげたりせえへんけどなあ」
 思わず日本語でそう呟いた直後、ロバートはいきなり立ち止まった。
 その目の前に、黒塗りの大きなバンがすべり込んでくる。
「!」
 バンのドアがスライドして、中から銃を手にした黒ずくめの男たちが飛び出してくるのを見た瞬間、ロバートは背後のミス・ジュールズに叫んだ。
「そこに伏せとけ! 怪我するで!」
「きゃあぁ!?」
 美人秘書の息も絶え絶えな奇妙な悲鳴と、威嚇のための発砲音が、朝霧の立つ路上で交錯する。
 ロバートは銃を持った相手の懐へと恐れることなく踏み込み、その首筋へと鞭のような蹴りを叩き込んだ。黒いマスクの下でくぐもった呻きをもらした男が、そのまま崩れ落ちる。
「――どこの誰かは知らんけどなあ、このロバート・ガルシアさまをナメとったらケガじゃすまへんで!」
 足に伝わった心地よい衝撃に、ロバートは嬉々として吠えた。

      ◆◇◆◇◆

 医師たちと入れ違いに病室に入ってきたカーマンが、ベッドに腰掛けたロバートに着替えを差し出した。
「運がいいな、ロバート。銃で武装したテロリストに襲われて、受けた傷は肩口と右足に文字通りのかすり傷だけか」
「運やない、腕がええんや」
 包帯の巻かれた肩の具合を確かめるように、大きくゆっくりと右腕を回してから、ロバートはイタリア製のシャツに袖を通した。
「いずれにせよ、会長代理に路上で大立ち回りをされては保安部の面目が丸潰れだ。私もアルバートさまからお叱りを受けたぞ」
「仕方ないやろ、もしあのままワイが誘拐されとったら、もっとドえらい騒ぎになっとったで?」
「だろうな」
 窓際に立ったカーマンは、カーテンを細く開けて外の様子を窺った。
 ガルシア財閥の御曹司が誘拐されかかったというニュースは、すでにマスコミを通じて世界中に発信されていたが、病院の正面玄関前には、直接本人からのコメントを取ろうと、多数の取材陣が詰めかけている。
 仕事熱心なマスコミを冷ややかに見下ろし、カーマンはいった。
「……まだ調査中だが、テロリストの目的は純粋に身代金で、特に政治絡みの話ではないらしい。おまえを誘拐すれば、何億ドルでも身代金を搾り取れると思っていたのだろうが、“最強の虎”というおまえのニックネームを甘く見ていたようだな。返り討ちに遭って全員警察病院送りとは……」
「ところでカーマン、ミス・ジュールズはどないしたんや?」
 トレーナー姿から隙のないスーツ姿に着替えたロバートは、声のトーンを少し落としてカーマンに尋ねた。
「今回の一件で、唯一おまえにとっての朗報かもしれんな。――ついさっき、彼女が人事部に異動願を提出してきたよ。おまえ付きの秘書だといつまたこんなトラブルに巻き込まれるか判らないから、とにかく別の役員付きにしてくれということらしい」
「そらまあ……」
 しばし呆気に取られていたロバートは、やがて声を立てて笑い始めた。
「ま、ええわ、結果オーライや」
「そうして呑気に笑っていられるなら、さっそく社に戻って仕事に戻ってもらおうか。屋上にヘリを回してもらう手はずになっている」
「おっ、手際がええな、カーマン! ホンマ秘書みたいやんけ」
「後任の秘書が来るまでだ。……おまえの面倒を見るのは本当に疲れる」
 仏頂面で答えると、カーマンはスーツの内ポケットから取り出したスピーチの原稿をロバートに押しつけた。

システム

コラム

「KOF RE-BIRTH」を標榜し、すべてのグラフィックをHDで描き直した新生KOF。
 社内の様々な事情により、当初の予定では「アッシュ編」の続きだったはずがストーリーがなくなったり、キャラ数が大幅に削られたり(20キャラしかいない)、ボスも存在しないなど、当初の計画よりもだいぶシェイプアップした形での発売になりました。
(グラフィックの質は大幅に向上したものの、濃すぎる絵柄にやはり賛否はあったもよう)
「クリティカルカウンターゲージ」を使用しての連続技や、技がぶつかったときの「相殺」など新システムも搭載してありますが、どちらかといえばシステム的にはシンプルなつくりです。

 ユリは残念ながらプレイアブルキャラクターとしては削られてしまい、「龍虎」からはリョウとロバートが出場しましたが、後に「KOF」の関連作品を制作することになるIgnition Entertainmentのビジネス開発ディレクターであるシェーン・ベッテンハウゼンとのインタビュー中に、Diehardgamefan.comのアレックス・ルカードは、「KOF12」でユリがプレイアブルキャラクターでないことを大変残念がっていました。
 家庭用では、アーケード版の20名に加え、マチュアとエリザベートが使用可能になりました。
(ただし、続編の「13」ほどではないけど、今回もバグは多いです)
 ユリは、リョウとロバートのストーリーと勝利メッセージにちらっと名前が出てくるのみ。

関連勝利メッセージ

リョウ・サカザキvs.レオナ「ユリ、手当てしてやってくれ……少々やり過ぎた」
ロバート・ガルシアvs.ロバート「安心しいや! ユリちゃんはワイが幸せにしてみせる!」