サービスと云うモノ

まず

「ソウルキャリバー3」という格闘ゲームがあります。ナムコが展開している「ソウルエッジ」のシリーズで、プレイステーション2用に2005年11月に発売されました。
 このゲーム、内容的には大変良く出来たゲームでありますが、一箇所、「ロストクロニクル」というおまけ部分に核爆弾クラスのバグが発覚したことで、大騒動へと発展してしまいました

ナムコの反応

「検討段階では告知は一切しない!」
「ですからぁ、こちらの方でも確認中ですし、同じような電話もたくさん頂いて対策を講じてる最中ですから。もういいですか?」

 ……ナムコのサポセン(サポートセンター)では、電話をしてきたユーザーに、こう対応していたようです。

 正直、ふざけてますね。
 いくら一般的になったとはいえ、テレビゲームのソフトは、5000〜10000円もする高額商品です。それに加え、バグがあったりすると、それはもう立派な欠陥商品なわけでして。
 欠陥商品を売りつけておいて、この対応はありか?

 1ゲームファンとして、ゲームを開発・販売する者達に問いたい。
 誰が君等の食い扶持払ってやってると思ってるんだ?
 誰が君等に稼がせてやってると思ってるんだ?

 もう何年も前になりますが、プレステ初期のゲーム業界といえば、アクの強いゲームプロデューサーがマスコミにしゃしゃり出て、色々と勘違いな発言をかましてユーザーを失笑させてました。
 偉いのは製作者であり、客は文句を言わずにプレイして賞賛しろ。そういった発言も、裏では多様にありました。有名どころでは「FST」のプロデューサーやら、「プリズマテカリゼーション」のイラストレーター、「D食卓」のプロデューサー等。
 頭が高いわ!!

 流石に、この製作者至上主義というか、あきらかな勘違いは現在ではナリを潜めてはいますが、ナムコのこういう対応を見てると、業界の体質は全く変わっていないようで、うんざりさせられます。
 もう一度言いますけど、こっちは君等に金払ってるんだぜ? なにも、こっちが頭を下げて、無理に作ってもらってるわけじゃないんですよ?

 もちろん、全部が全部こうというわけではありません。
「シャドウハーツ2」というゲームにバグが発見された時、発売もとのアルゼは、発売から2日くらいでバグ回避方法をサイトで公開し、無償交換発表&店頭告知開始してました。
 個人的にSNKのことがあるんでアルゼはあまり好きではないのですが、この対応には賞賛を送りたい。

口先

 2005年12月、バグ発覚からおよそ一週間、ようやくナムコは公式にバグの存在を認め、コメントを発表しました。

 まぁある程度予想はしてましたが、商品の交換等の対応は(表向き)一切なし。
 特にここのところに笑いました。

【 回避措置 】
メモリーカードに「ソウルキャリバーIII」のセーブデータが保存された状態で、他ゲームのセーブデータの削除、移動、上書きセーブ等を行われなければ、当該現象は発生いたしません。

 PS2本体のシステムファイルがオートで更新(上書き)されることを考えれば、「これまで進めてた他のゲームは今後プレイするな」ということです。メーカー公式対応で。
 はっはっはっ。

 ……あんまりユーザーを馬鹿にしないほうがいいと思うんだけどなぁ……。

 なお、メールでクレームを送った人に対しては、着払いでソフトをナムコに送れば、(ナムコのほうで送られたソフトの動作確認をして)動作確認済みのソフトと交換に応じるという内容のメールが返信されているようです。
 これへの感想は、読んでいる人にお任せします。

目を覚ませ

 一部のファンの間では、こうした対応に、欧米的な企業論理の一端を感じ取って、批判の対象になっていました。批判に値する行動であるのは、当然過ぎるほど当然なのですが、アメリカ的だとかいう以前に、単にサービス業として失格だと、それだけのことです。
 前述のアルゼや「レッスルキングダム」のユークスなどの対応が、この業界ではむしろ異端です。前科のあるセガやコナミ、特に不誠実極まりないSCEやアークシステムワークスなど、一般的に「出したら出しっぱなし」「責任転嫁」「アフターサービスの金はケチるもの」というのが、どうも通例として成り立っているような気がしてなりません。

 確かに、モノを一から作るのは大変です。胸を張りたくなるのも解るし、規模が大きなゲームのデバグが如何に大変かもわかります。ゲーム内容だけ見るなら、「ソウルキャリバー3」もまさに賞賛に値するゲームです(バグが多いから対戦ツールにはならんが)。
 だけども、満足するだけで、あからさまなバグにも気付かず、欠陥商品を買わされて唇を噛んでいる客の気持ちまでは目が回っていない。その一点だけで、同じことを繰り返す業界全体に叱責と失笑がむけられていることも自覚して欲しい。

 ゲーム製作とは、製造業であるのと同時に、レッキとした「サービス業」である。客に対してゲームを「作ってやっている」のでは、決してないのだ。もう一度振り返ってみないか、ゲーム製作者諸君。