引き際も肝心

勧誘熱心もよりけり

 どういうわけだか、人に断られれば断られるほど、モノを勧める意欲を駆り立てられるという困った人がいる。
 ちょっと前、私はそういった類の人にホントに困らされて、ほとほと参っていた。
 勘弁してください、ホント、ただでさえ暑さで不快指数振り切っちゃいそうなんですから。

 いやね、しつこくても、【普通のモノ】を勧めてくれるんなら、こんなにヤな顔はしないわけなんだけどさ。
 そいつが私に勧めてるのが、よりにもよって、【ギャンブル】なのだ。


 ここだけの話、私は【ギャンブル】と【宗教】と【人の話を聞かない人間】が、「生理的に受け付けない」とか「魂で拒絶する」とか、そういうレベルで苦手である。
 もちろん、あくまで【私の価値観】だから、それを人に押し付けるような無粋な真似はしない。
 誰が何を好きで何を信じてようが、それは人の勝手であり、他人から忖度そんたくされるようなものではない。

 ことに、【ギャンブル】への嫌悪感は、人からは「普通じゃない」と言われるし、自分でも度を越してる思う。なにせ、金が絡むと、例えトランプだろうが麻雀だろうが、例え掛け金が一円だろうが、一切参加する気が起こらない。
 たかだかトランプでこうなんだから、競馬や競艇なんてもっての他だ。競馬なんて、単なる馬の虐待にしか映らないし、競艇なんてその存在意義そのものが全く解らない。パチンコやスロットまで行くと、もう正直、開発した人もハマっている人も、双方の正気を疑うほどだ。

 これは正直、自分でも理由が解らない。確かに、競馬が嫌いではあるのに、例えば騎手や馬の世話係などの、「自分の知らない世界」の話に興味を持って聞くこともある。要するに、「金を賭ける」という行為そのものが苦手なのだ。

 で、話は戻るが、私を困らせていた人は、見事に【ギャンブル】好きの【人の話を聞かない人間】。もう、「人に嫌われる」という種類の得点競技があるとしたら、100点を通り越して1億点でもあげたくなるほど、私にとっては最悪の組み合わせなのである。
 こういう人の困ったところは、【人の話を聞かない】のはもちろん、とにかく【しつこい】、さらに【勝手な決めつけ】が非常に多いところ。私が何度イヤな顔をして、何度断っても、理解していただけない。

「だから、なんで俺を誘うんだよ! イヤだって言ってんだろうが!」
「いや、●●(KEEFの本名)なら絶対ハマるって! 食わず嫌いなんだから、やってみれば解るって!」
「だから、俺のどこを見てそう思うんだ! そりゃお前の勝手な価値観だろうが! お前がどう思おうと勝手だけど、それを俺に押し付けんな!」
「だって、俺がハマったんだから、お前もハマれるって! とにかく、やろうよ」
「だから、その根拠はなんだ!」

 もう完全に一方通行で、ぜんぜん会話として成立しておりません。
 いや、相手は会話をしてるつもりなのだ。だって彼は、【自分はいいことをしている】とか思ってるんだもの。自分が良いと思ったものを良心的に勧めている、そんなつもりなのだ(相手から見れば、私の方が【人の話を聞かない人間】に映っているかもしれない。一応、私は内容を聞いて断っているのだが)。
 ただ、人の話を聞かないだけで、かつ、勧めた相手が、そういった人間を心の底から嫌う私だった、と、それだけの話なのだ。相性最悪。
 いやもう、ホントにね。なにか凶器があったらそれで誅殺、無ければ自分のパンチとキックで撲殺したいという誘惑を跳ね除けるのに、どれだけ乏しい自制心を動員したことか。

 結局、立場が離れ離れになったことで、この騒動は終わりを告げたが、めちゃめちゃ疲れました。


 今回の教訓は、以下の三点。

@モノを勧めるなら、相手の好き嫌いをよく見極めろ。
A絶対に一方的に話すな。相手の感情を自分で決めるな。世界は自分中心に回っているのではない。
Bモノゴトには、引き際が肝心。

 …気をつけまショウ。もちろん、自分もね。