散文を使い、何度も物語るとしても、私が今見たような流血や傷害の様を、存分に言い尽くせるような人がいるだろうか?
これだけのことを把握するには人間の言葉や頭脳では力が及ばない。
それでどうしても舌足らずになってしまうのだ――
(「La Divina Commedia」(Dante Alighieri))
私は精神を鍛えようと、寺に入ることにした。服装を整え、有名な住職の門を叩いた。
「よろしくお願いします」私は頭を下げた。次の瞬間、住職の左手に光る刃。文明の利器バリカンが私の頭を悪逆の象徴・逆モヒカンに整えた。
「ぶぶづけ食う前に帰りなはれ」ぴしゃり、扉は閉じた。私はどうと倒れた。
「とりあえず人型のロボが銃を撃ってりゃガンダムなんだろ?」
私の失言だった。今思えば、それが彼を狂わせた
まるで怪物。20年来の親友であった彼は怪物のような形相で、私の顔を、腹を、胸を、親を殺されたかのように激しく殴り続けた
私は、どうと倒れた。彼は、泣いていた。
乗車率100%以上、アリの座る隙間もない満員列車で、隣にいた上司が、いきなり大声で「ウルトラソウル」を歌い始めた。忠誠心には自信がある私は咄嗟にすべての合いの手をキメ、ラストの「ウルトラソウ!」「ヘイ!」も完璧!
次の瞬間、「迷惑行為やぞドアホ!」上司の強烈なパンチ。私はどうと倒れた。
「こんな暑さの中でスーツなど自殺も同意!禁止すべきだ!」
私の周囲は同意で溢れ、人は私を称えた。私は呼びかけた。
「だから、男女ともにずっと海パンで過ごすべきなのである!」
あれほど私を称えた人々は次々と私から離れ、私は人望を2秒で無くした。
私は強い貧血を起こし、どうと倒れた。
「いいかげん、オフィスに暖房器具を入れてくれ!」と言い続けて二十年、ようやく上司の首を縦に振らせることができた!
そして翌日、オフィスにあったのは、大きな暖炉と大量のバナナの皮。「これを燃やして暖をとれ」とのPOP。
私はどうと倒れた。日光浴の方がよほど効率が良い……。
「今年の忘年会も「逆さ吊り参加枠」はお前に決まったよ。おめでとう、4次会まで抜かるなよ! リモート参加? 何言ってんだお前!」
私はどうと倒れた。神よ、この意味の分からぬ参加枠とともに、私の名をせめて歴史書に収めてくれ……。
上司が笑いながら言った。「私はセンシティブだが、君は戦死デブだね」。
私はどうと倒れた。意味は全く分からないが、私は激しく傷ついたのだ……。
その日、私は激怒していた。私はたまたま持っていたタコに怒りをぶつけ、それを泉に荒々しく投棄した。
するとどうであろう、泉の女神が現れたではないか!
「あなたが今落としたのは、この世界的ギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンですか? それとも、このマイケル・シェンカーですか?」
私はどうと倒れた。どちらを選んでも、私には養えないではないか……。
久しぶりの散髪屋。そしてもみ上げをどうするかいつもの質問。私は笑顔で言った。
「爆破してください」
すると店主はニヤリと笑い、笑紙の耳元で呟いた。
「じゃあ景気よくC4を、50kgほどいきますかねぇ……」
私はどうと倒れた。もみあげと命、果たして釣り合うのだろうか、という煩悶とともに……。
よくあるビンゴゲームのパーティー会場。私のカードは瞬く間に横が揃い、私はつい「ビンゴォッ!」と立ち上がり叫んだ。
次の瞬間、隣に座っていた女性のハイヒールが、私の眉間に突き刺さった。
「なぜ私の出身地を知っているの? この変態!」
私は「ビンゴってどこ?」と思いつつ、どうと倒れた。
私の上司が、胸元から箱を取り出し、煙草を一本、口に咥えた。私は秒といえる早さでライターをとりだし、火をつけようとした。
次の瞬間、強烈なストレートパンチが私の顔を直撃した。
「ここでの喫煙はマナー違反じゃろが!」
そう叫ぶと、上司は煙草を食べ始めた。
私はどうと倒れた。どうか幾人かの貴婦人よ、私のために涙を流しておくれ。
私が言った。「この壁の模様、ウサギに見えないか?」
するとBが言った。「どう見ても餅つき機の中で苦しんでいる餅の苦しみの顔だろう」>
Cが続いて言った。「……広島カープの田中広輔にしか見えないのだが……」
私達はどうと倒れた。
「所詮、真の友情などというものは存在しないのだ」
その認識を共有し、それでも私たちは三日間、手のひらを重ねていた。
「明日から君に支店の店長をしてもらう。頑張りたまえ」
急な話だが気合いの入る仕事だ。全力で頑張らねば!
「あ、沖ノ鳥島だからね、衣食住は全部セルフだから、七年間頼むぞ」
私はどうと倒れた。三日間、意識を南の風に乗せて走らせた……。
それは小学校の時の記憶だ。よくある授業参観で、先生は簡単な問題を一人一問出し、親の前で正解させることで教室を盛り上げる。
そして私の番だ。
「【わかもとのりお】と超早口で三万回叫ぶといつしか【もりこうじ】になるが、その「いつしか」がいつか回答せよ」
私は一万三千回の時点で舌を噛み、どうと倒れた。口から血が滴る中、三日間、私は渋すぎる声で励まされる夢を見た。
どうも昼から晴れそうですねえ。
晴れで傘があるときは、駅前にて麟として立ち、二本の傘を脇に挟んで
「ムカデ!!」
と叫ぶのが、我が一族の慣習ですが、最近は怖いお兄さんたちに留置場に案内されることが増えました。
今日、マイカード用の写真を作りに、街角のカメラコーナーに入って支持に従っていると最後にこんなことを聞かれた。
「写真だけでなく、実物もイケメンになりたいですか?」
ミクロ秒単位で私は「はい!!」と答えると、次の瞬間、グローブをつけた大木のごとき壁から飛び出て、なにが起こったのか分からぬ私の顔面に、強烈なストレートを叩き込んだのである。
「私の敗北(まけ)だああ!!」
何度も殴打された私の顔はあちこち腫れ上がり、まるで別人であった。
しかし、プリクラ自動補正機能で、殴られてない箇所は過去最高に美しくなっていた。
私はどうと倒れ、三日間眠った。
駅前で通り行く人たちを捕まえて、
「私にじゃん拳で三連勝したら、あなたの言い値を支払いましょう。逆に私が三連勝したら、あなたから私が言い値をいただきます」
というゲームを始めた。
三人目の相手で、私の借金は20億円をこえた。
私はどうと倒れ、三日間、湿った札束の布団で眠る幻想を見た。
久しぶりの飲み会である。私もつい浮かれていたのであろう。
「お姉さん、ビールどんどん持ってきて!!」
お姉さんたちは、一瞬驚き、そして笑顔で視線を確かめ合う。
そしていざやってきたものは、水族館でもなかなか見ない大きさの水槽に、並々と溢れるビールであった。
「水槽込み、ビール1億円はいりまーす!!」
私はどうと倒れ、三日間ペンギンに踏まれる夢を見た
「いまだに「うちだまれい」と読んでしまうのだ」と私は素直に告白した。
すると我が友は、テーブルの上に釘バット、コンバットナイフ、そして拳銃を並べ、静かに言った。
「さあ、死に方を選びたまえ」
私はどうと倒れ、三日間、熊本弁による幻影を見た。
時々Twitterでつぶやいている管理人の日常をまとめなおしたものです。
(初:2020.05.19)