重ねてきたものB

「なんか、小さい頃みたいね」

「そうだな。ガキの頃は、こうしてたっけ」

 ズルズルと蕎麦を啜りながら、そんな事を話していた。
 小さい頃は俺の両親も、雪姉の両親も共働きだった。なので、帰りが遅かったりした日は、よく二人で夕飯を食べて、一緒に寝たり。

「っていうか、綾がウチに来ても良かったのに」

「いや、そこまでしてもらうワケにも……」

 今、気付いてしまったのだが……。
 よくよく考えてみれば、飯の時だけ雪姉の家に行けば、良かったんじゃないか?
 というよりも、この人の会話の根底には、引越ししか無かった。

「水臭いわね。そんな事、気にするような家じゃ無いって」

「まぁな。でも、いつかは必要になるだろ? その予行って事で」

「え、新婚生活の為の?」

「違うっ!」

 声を荒げるが、怯む様子もなく、雪姉は笑った。つーか、それだと俺は専業主夫になってしまうじゃないか。

「それはそうと、おじさん達はいつ帰ってくるの?」

「さぁ……またこっちの会社に戻ってくるまでじゃないか」

「じゃあ、いつになるかわからないの?」

「二、三年は戻れないみたいな事は言ってたよ」

だからこそ、俺はついて行く事を拒んだ。
その間に……願いが叶うかもしれないから。

「じゃあ、それまでは同棲だね」

「同棲って言うなよ……」

にっこりと微笑む雪姉。
と云っても、俺にも他の言葉が思い浮かばないのだが。

「でも、今更って感じするよね。もう自分の家みたいだし。綾もそうでしょ?」

「俺の家と雪姉の家を含めて、自分の家って感じだからな」

「そう考えると、結構な豪邸よね」

「もっとも、移動するためには靴が要るけどな」

「窓を飛べば必要ないわよ」

「あれはもう二度とするなよ!?」

 ドンとテーブルを叩いて、俺は忠告しておいた。一方の雪姉は、頭を掻いて苦笑いしている。
 事が起こったのは、三年前だったか。テスト勉強に嫌気がさした雪姉が、俺の家に遊びに来ようとしたのだ。 一階に降りては、確実に見つかってしまう。そう考えた雪姉は、強硬手段に乗り出してしまった。

「一歩間違えたら、大怪我だったぞ……」

「そうよね……さすがにあれは怖かったわ」

「俺が手を掴めなかったら、二階からダイブだったもんな……」

 多少の擦り傷は出来たが、大事には―――――至ったのか。
 あの日は、ちょっとばかし騒ぎになったからなぁ。またあの二人か、と笑い話にされるのは、俺としては不本意なのだけれど。

「とりあえず、これ以上ネタになるのは御免だからな」

「別にネタじゃなかったんだけどね……?」

「尚更、手に負えないっての」

 本気で飛んだアンタの勇気には、敬意を表するが。

「綾だって昔は無茶な事したクセにー!」

「俺が何したってんだよ?」

 食後の一服の為に、煙草を一本取り出しながら、俺は尋ねた。俺のした事なんて、雪姉に比べれば可愛いものである。

「おばぁちゃんの家で、刀持って来たじゃない!」

「まだ覚えてたのか!?」

「あたし、本気で殺されるかと思ったわよ!?」

 いささか興奮気味に、雪姉は身を乗り出してくる。
 それは俺が……六、七歳の時だ。俺のばぁちゃんは、近くの道場で剣道の師範をしている。当然ながら、馬鹿みたいに強い。若い頃は、全日本で優勝だとか、準優勝だとか。
 その影響で俺も雪姉も、剣道をやっていたのだが……。
 ある日、ばぁちゃんの家に行った時の事。何気なく押入れを空けると、日本刀が入っていた。
 埃は被っていなかった。和室にあるモノよりも、もっと厳かだった。

「あ、あれは雪姉にも見せてやろうと思ってだな……」

「普通、抜き身で来ないわよ! しかも引き摺ってたから、畳が酷い事になってたわ!」

「知ってるよ……。ばぁちゃんに、ブン殴られたんだから……」

 苦労して、黒塗りの鞘から抜いてみた。その刃は、想像よりも綺麗で。
 今思い出してみても、まさに芸術品といっても差し支えない。
 本当に何でも断ち切れるんじゃないか。そんな事を思わせてくれる輝きだった。

「雪姉だって、アレの凄さわかったろ?」

「ええ、アレに殺されるんなら、仕方無いと思ったわよ」

「いや……うん……悪かった」

 俺も人の事は言えなかった。

「はぁ……でも、色々あったわね」

「……ありすぎて困る」

 二人して、同時にため息をついてみたりなんか。
 もっとも、雪姉との思い出は全部楽しかった。その行動を理解出来なかった。だから飽きなかった。
 そして、いつも俺を振り回してくれたから……今の俺が在る。

「……これからも、沢山つくろうね」

「そうだ……な」

 お互い少し頬を緩めながら、言葉を交わした。
 多分、いつも俺は振り回されてるんだろうけど――――――

「これからも、よろしくな。雪姉」

「うん、よろしくね。綾」

 この日から、俺と雪姉の同居生活が始まった。
 …………同棲じゃないからな?

ALICE様 COMENT

 で、こちらが急遽プロットを考えた二本目ですー。
 なんとかして、ほのぼのにしようと頑張ったのですが……やはり雪姉頼りになってしまいます。
 本編が始まる少し前ですね。自分の中でも、隣同士なのに何故一緒に住むのか? と疑問が出まして。
 雪姉の性格、そして設定などを鑑みて、もう一度作り直しました。小さい頃から、あんな感じなのは変わりませんが。
 っていうか、二つ合わせても、テーマに応えられてないような気が……ほのぼのって心温まるって事ですよねぇ……?
 次の機会までに、もっと腕を上げたい! つーか、もっとレンジ拡げろ!
 KEEFさんが、気を遣ってくれたとしか思えないリク。書き易かったの確かですが、真にすみません。
 どうか、これからもよろしくお願い致しますー(逃げるように、退散)

KEEF COMENT

 ALICEさんから頂いた当サイト50000ヒット記念、2本目でした! (>▽<)/。・。・°★・。・。☆・°・。・°
 ご本人は謙遜されてますが、これをほのぼのと言わずになんと言うのカッ!
 私はALICEさんのキャラクターの中では、実は雪姉さんが一番好きだったりします。そして、その雪姉が我がサイトに!ウホウ!
 いや、思わず情景が目に浮かびますね。ALICEさん、ありがとうございました! (>▽<)/。・。・°★・。・。☆・°・。・°
 そして、今後ともよろしく!