衛宮邸お料理戦争(下)

 そして三日後……。

「ふん、逃げずに来たか……」

「態度でかいな、居候のくせに」

「全くです」

「しかも赤いですね」

「うん、赤いねー」

「あのね、アーチャー。逃げるも何も、ココ衛宮君の家だから」

 あ、ちょっとアーチャー、ヘコんでる。何か意外だな、こんな光景。
 居間には、俺、セイバー、遠坂、藤ねぇ、桜、アーチャーの計六人が在席中である。アーチャーの外見には、藤ねぇも桜も唖然としていたが、またも親父の知り合いだと無理やり押し通した。まぁ、親父にも変わった所があったし、セイバーの時よりもすんなりと話が進んだ。ただ気になったのが、親父の名前を聞くたびに、アイツの顔が厳しくなった事。厳密に言えば、その雰囲気だろうか?
 上手くは言えないのだが、何故か。そう何故か―――――痛々しかった。

「ええぃ、そんな事はどうでもよかろう。私がこの国へ来た目的を果たそうではないか」

「……というワケで、衛宮君も準備しなさい」

「おう、わかった」

 答えて、俺も台所へと向かう。さぁ、ここからは真剣勝負だ…………って俺はいつも通りにするだけ。

「衛宮士郎」

「な、何だよ?」

「何を作る気だ?」

「いきなり敵情視察かよ…………まぁいいか。そうだなぁ……久々に肉じゃがでも」

「煮物か……。お前の煮物は精進が足りんというのに」

「う、うるさいなっ! 大体何でお前、和食に詳しいんだよ!」

「む、良い海老があるではないか。宝の持ち腐れとはこの事だ」

「シカトかよっ!!」

 こ、コイツとはやっぱり合わないっ!!

「お前は何を作るんだよ?」

「ふむ……お前が煮物ならば、私は魚でも焼くか」

「ちょっと待て。俺も作ろうとしてたんだ。他のにしろよ」

「お前の指図は受けん」

 冷蔵庫の中を物色していたアーチャーが手にしていたモノ。それは、豆腐だった。

「あっ、テメ、この野郎!何する気だ!?」

「見てわからんか、たわけ。吸い物を作るに決まっている」

「だからソレも俺が作ろうとしてたんだっ!!」

「ならばお前が違うのにすればよかろう」

「そんなバランスが崩れる事出来るかっ!!!」
「……大丈夫でしょうか?」

「んー、いいんじゃないかしら。放っておけば」

「そんな無責任な……」

 そわそわと台所を見る桜とは対照的に、凛は落ち着いたものだった。というか、慌てているのは桜だけで、セイバーも大河ものん気にお茶を飲んでいる。

「いいんですか? 先生もセイバーさんも。夕飯が無くなるかもしれませんよ?」

「心配には及びません、サクラ」

「そーそー。士郎に任せときなさいって」

 黙って四人は台所を眺める。聞こえてくるのは口論と叫び声。しかし、それでもしっかりと包丁のまな板を叩くリズムは聞こえてくる。

「ふん、そんな事だから満足に剣も使えないのだ」

「うるさいっ!」

「ほれ、豆腐が型崩れしたではないか」

「あーもう!ちょっと黙ってろよっ!!」

「折角、忠告してやっているというのに……」


 などなど。どう聞いても、いがみ合っているようにしか聞こえないのだが。

「……なんだか楽しそうですね」

「でしょー?」

「だから心配には及ばないと言ったでしょう」

「そうですね……」

 静かに微笑んで。確かに笑って、三人は彼らを見つめていた。その中で、顔を顰めている人間が一人。タイガーこと、藤村大河である。

「どうかしたんですか?藤村先生」

「え? ううん、大した事じゃないんだけどね」

 笑って首を振る大河に、凛は首をかしげた。
 ―――――何だか士郎が二人いるみたい。
 その呟きは誰にも届かず、宙へと消えた。
「……………………」

「どうした、衛宮士郎。言いたい事があるなら言ってみろ」

 悔しいが、アーチャーの腕前は俺よりも上だった。豪語していただけあって、味付けも焼き加減も見事としか言えない。

「はぁ…………意地を張っても仕方ないか。お前の方が美味いよ、クソっ」

「でも、士郎のも美味しいよー?」

「はい。さすが先輩です」

「っていうか、私はこうドドーンと一杯出てくるかと思ってたけど……」

 遠坂の言いたい事はわかる。俺とアーチャー。それぞれの料理が出てくると思ってたんだろう。しかし、テーブルの上にはいつもと同じ量が人数分だけ。

「作りすぎてバランスが取れないと、食べる気もしないだろ」

「そうだ。メインに合ったものを作らなくては」

 それだけが、ヤツとの共通点だった。結局、二人で作ったようなもんだ。

「やはりシロウの料理が一番だ。御代わりを」

 黙々と食べ、茶碗を出してくるセイバー。とりあえず、文句がなくて良かった良かった。

「そうなんだよねー。なんかアーチャーさん? のも士郎と似たような味付けだし」

「うむ、それはこの未熟者に合わせたからな」

 さらりと聞き捨てならない事を言いやがる。

「未熟者…………?」

「私の味付けをすると、お前の料理には箸が行かないだろうからな、感謝しろ」

「テメェッ、言わせておけば!!」

「見苦しいぞ、食事中だ」

 俺の怒りを軽く受け流し、アーチャーは肉じゃがを口へと運ぶ。

「む、だからもう少し煮ろと言ったではないか。味が薄い所がある」

「………この野郎」

 ムカツク奴だ。本っっっっっっ当にコイツとは相容れないらしい。

「それなら、アーチャーさん。士郎を弟子にしたら?」

「「は?」」

 藤ねぇの言葉に、俺達の動きが同時に止まる。

「だからー、二人とも似てるんだから士郎もその内、アーチャーさんみたいになれるかもよ?」

 その言葉に、俺はギギィッと首を動かし―――――

 アーチャーも同じように俺を見据えて―――――

 同時にこう言っていた。

「それだけは死んでも御免だ」」

ALICE様 COMENT

 というわけで、KEEFさんへと贈らせて頂いたFateSS『衛宮邸お料理戦争(笑)』でした。
 いや、料理してる部分が全然無くて、しかもリクエストのドタバタってのも全然入ってなかったような気が…………orz
 初めて書いたFateですが……まだまだキャラが掴めてません。セイバールートの聖杯戦争中で、こんな1コマがあったら面白いかもと思って書きましたが。
アーチャーが一番苦戦しました。凛ルートじゃマジで相容れませんが、他のルートじゃそうでもない印象を受けたので。特に桜ルート。
 拙い短編でしたが、寄贈させて頂きました。満足……出来ませんよね?あはははは………orz
 しかし、自分での精一杯の出来ですので、何とぞご容赦を(開き直りかもしんない)
 KEEFさんの機嫌を損ねない限りは、また書けるかもしれませんww
 ではでは。いつまで経っても、まだまだ底辺に住み着くモノカキALICEでした。

KEEF COMENT

 ALICEさんより頂いた、20000ヒット到達記念ノベルでした!
 いやぁ、面白かった! ご本人は『キャラが掴めてない』と謙遜されていますが、充分に伝わってきましたよ。機嫌を損ねるなど、とんでもない!
 ご自身のサイト『空に舞う羽と雪』ではKeyネタを中心に活動されているのを知りつつFateをリクエストした私も失礼ですが(T▽T;)、それに応えていただいたALICEさんには本当に感謝です!
 どうも、ありがとうございました!