☆登場人物
・公爵(28)……忙しい為、めったに屋敷にいない。164cm、54kg、88-62-84。
・アナスターシア(19)……公爵家に仕えるメイドの最古参。171cm、58kg、93-61-90。
・テンペランス(142)……ある事情があって雇われたエルフのメイド。155cm、48kg、73-53-77。
・アレクサンドラ(15)……メイド最年少。明るくムードメーカー。154cm、49kg、80-55-83。
夕刻の薄明かりが差し込む屋敷の廊下。 公爵が出ている静かな時間、メイド達それぞれの仕事を終え、控えの間でくつろいでいた。
「ねえ、テンペランスって、どうしてここに?」
アレクサンドラが口を開いた。テンペランスはいつものように微笑みながら、手元のカップを考えた。
「前にも話したじゃない。何か事情で……と」
「でも、それじゃ具体的にわからないよ」
アナスターシアも興味深そうに課題を向けている。リーゼロッテは沈黙を保っていたが、その紅い瞳はテンペランスを見つめていた。
しばしの沈黙 その後、テンペランスはカップをそっと置き、窓の外を見つめた。
「……ずっと昔の話。私はね、かつて“森の守護者”として生きていたの」
「森の守護者……?」
「エルフの一族は、森の精霊たちと契約し、外の世界と距離を取って生きてきた。私は巫女として選ばれ、森と民を守る役目を担っていたのよ」
柔らかな声だったが、その言葉の奥には深い哀しみが滲んでいた。
「だけど……ある時、私達の森に『人間の軍』が挑めました」
空気が変わった。アレクサンドラが息を呑む。アナスターシアの眉がほんの少し寄る。
「戦いを避けるために、私は人間たちと話し合おうとした。だって、必要以上の争いは誰も望んでなかったから」
テンペランスは自嘲気味に笑った。
「だけど、勝ったわ……人間たちがね。彼らは不戦の約束を守らなかった。交渉の最中に森は炎に包まれ、仲間たちが次々と……」
喉を詰まらせ、一瞬の言葉を省略したテンペランス。しかし、すぐに息を整えた。
「私は逃げ延びた。でも、一人だけ。仲間も、森も、すべて諦めた」
リーゼロッテが静かに目を伏せる。彼女もまた、過去に囚われた者だったからだ。
「それから長い間、私は放浪していた。でも、そのうち、公卿様と出会ったの。彼女は私の話を聞いて、何も言わずに黙ってくれたわ」
テンペランスの課題は遠くに向かう。
「今でも私は忘れはしない……あの炎の色を」
重い沈黙が場を支配した。 しかし、アレクサンドラ声が小さく手を握りしめ、明るく言った。
「でも今は、ここにいるんだよね。私たちと一緒に」
テンペランスの表情に、かすかに微笑みの成分がまぶされた。
「そうだね。今は、ここが私の居場所だから」
その夜、窓の外には風が吹き抜けていた。
(FIN)
当サイト20周年記念として、断罪淫魔様から短編を頂きました! 今回はメイドの一人、エルフのテンペランスの過去回です。彼女らに幸福のあらんことを!