ヴァンパイア・レイン

2007年1月25日発売/AQインタラクティブ/30点

「ヴァンパイア・クロニクルズ」「魔女の刻」シリーズで知られるアン・ライスが、A・N・ロクロール名義で書いた「眠り姫 歓喜する魂」という直球のファンタジーSM小説に、評論家の小谷真理氏が「おマゾの花道」という、これまたド直球の解説を寄せていましたが、本作をプレイしていると、その「おマゾの花道」は主人公ジョン・ロイド氏にこそ用意された栄光のマゾヒスティック・ロードだと思ってしまう今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか?

 世界中で数えられる年間の行方不明者、実に数百万人。
 彼らの一部は、死体となって、そして更に一部は、異形の怪物と化して社会に戻ってくる。
 彼らは、おぞましい外見と残虐な能力で、一般人を次に次に襲い……、こう呼ばれた。
 ナイトウォーカー、と。
 ナイトウォーカーに対し、これまで自衛的防御しか手段を有しなかったアメリカ合衆国は、ここに来て対ナイトウォーカー特殊部隊を設立。ついに攻勢に打って出る。
 彼らの能力を弱める雨の降る、とある街。雨中の死闘は、静かに幕を開けるのだ……!

 本作はナイトウォーカーが幅を利かせる街に潜伏し、隠密行動をとりながらボスを倒すのが目的のアクションゲーム。

 まず見ていただきたいのは、そのパッケージ。なんか犬歯が異様に発達し、顔面の皮を剥がれたと思しき化け物が、プレイヤーに向けて激しく吠え立てています。
 ゲーム内容が一目でわかるので、ギャルゲーと間違えて買っていく人は1000%スパーキングでいないと思いますが(いたらトッ捕まえて、どんなギャルが好みなのか聞いてみたいものですが)、正直な話、怖すぎデス。ストレートに恐怖を煽りすぎて、一番大事な部分で売り上げを妨げているのではないかと、ノミの心臓の私などはいらぬ勘繰りをしてしまいますが、大きなお世話ですね、すいません。

 まぁね、ゲーム中にはこのパッケージに負けないくらいヒデェ死体がゴロゴロ出てきますので、ボクらのCEROのレーティングも余裕でZ指定、薄着ギャル一人も出てこねぇ18禁(死体除く)。
 AQのゲームにしてはコンフィグが親切(チュートリアルステージがしっかりしているので、説明書を読まなくても充分プレイできる)で、移動時と戦闘時で別々に視点の変更が出来るんですが、戦闘が増える後半面では特に、視界に映るのは死体死体死体!
 なんかもう、胃の中が、昼食で食べたものとは別のもので一杯になりそうです。慎重に慎重に匍匐前進してて目の前に皮を剥がれた死体が突然出てきた日なんか、テンション暴落ですよ。

 ゲーム内容を解りやすく一言で言えば、ヴァンパイアが相手のメタルギアソリッド(トゥームレイダースのほうが近いか?)なわけですが、流石に怪物、敵の性能は攻め込む側の人間様よりも遥かに上なわけで、隠れるのに失敗して見つかると瞬殺!
 プレイヤーのライフの意味が全く無いほど清々しい即死ぶり。

 いや、まぁ、確かに説得力もあるし、スリルという演出的な意味でも解らなくは無いんですが、もうちょっとこう、バランスのとりようがなかったでしょうか。
 基本的に、死んで死んで死に倒しながら効率の良いルートを探していく我慢系なので、自分の堪忍袋の耐久度を試すには最適のゲームではあります。ゲームの出来自体が、よりエキサイティングに堪忍袋の耐久度に挑戦しているのは内緒だ!
 登場人物がみんな馬鹿で足を引っ張りまくってくれるのに加えて、我らが主人公ジョン・ロイド氏は根っからのマゾ体質なのか、とにかく危険なほうへ危険なほうへわざと行こうとするので、それほどマゾッ気のないプレイヤーとしては、感情移入のしようもありません。
 また、コンフィグ系はけっこう丁寧に作られてるんだけど、武器のカスタマイズ要素やキャラのレベルアップ等のヤリコミ要素は殆ど無し(メダル集めくらいかな?)。
 その武器も、ショットガンとスナイパー以外はあまり意味が無いような気もします。

 もうAQインタラクティブのゲームの特徴になっちゃてるんですけど、なーんか中途半端なんだよねえ。
 特殊部隊所属のロイド氏のアクションは、そうとも思えぬほど貧相だし、恐怖の演出も、ひたすら死体がゴロゴロしているだけで確かに「エグい」とは思うんだけど、恐怖感を煽るにはちょっと乏しい。まだパッケージの方が怖いです。
 クールに任務に徹するといえば聞こえは良いですが、要は作り込みが甘く、遊びの要素は少ないということで、オフラインオンリーなら割とすぐに飽きるかもしれませんね。

 その一方で、オンラインではゲーム内容がガラッと変わります。
 作りこみが甘いのは相変わらずなんですけど、クールで地味一辺倒のストーリーモードとは違い、馬鹿笑いしながら大暴れできるのが非常に楽しいです。この差はいったいなんなんだ?

 結局、ストーリーモードの謎は全部解けてないみたいなので、続編を作る気があるのかもしれませんが、ゼーガペインの二の舞だけはやらかすな!と声を大にして言いたいんだけど、100%無駄だろうなぁ……。

(2007.02.23)