スプリンターセル 二重スパイ

2007年2月22日発売/UBIソフト/35点

 もう何本出ているのかも良くわからない「トム・クランシー」シリーズのステルス・アクション。「メタルギア」シリーズが似たようなシステムですが、「メタルギア」が「物陰に隠れる」のに対して、こちらは「暗闇に潜む」のが最大の違い。
 かつてXboxやPS2で「スプリンターセル」「パンドラトゥモロー」「カオスセオリー」と続いた「スプリンターセル」の第四作目にあたります。本作の英副題は「Double Agent」ですが、これまで英題で通してきたんだから、わざわざ無理に訳すことなかったんじゃないかな、と思うのですが、「俺は日本語に訳さないと死ぬんだよ!」という60年代以前の映画ファンの人がいて、周囲のスタッフをナイフかなんかで威嚇しながらパソコンを占拠して訳したんでしょうか?
 まあ「BIG MAN ON CAMPUS」(1989)が「屋根裏の怪人/キャンパスの春は大珍事!とか、「THE LEADING MAN」(1996)が「妻の愛人、夫の恋人」とか、たまに「もうちょっと何とかならなかったのか」というダサい邦訳タイトルの映画もありますので、ギリギリそうされなかっただけでも幸いかもしれませんか?

 主人公サム・フィッシャーは、NSA(アメリカ秘密諜報組織)の一員でありながら、テロ組織「JBA」の内部に潜入、テロリストに信用させその詳細をつかむために、自分もテロリストになりきってテロに加担しなければなりません。
 二つの顔を持つということは、そのどちらかに重点を置かねばならないということ。テロに加担しすぎれば、組織の情報を得やすくなるかわりにNSAの信用を失っていき、逆にテロリストの信用を失えば命の保障などありません。もちろん両方の信頼を同等に保てればよいのですが、マルチストーリーの本作ではどうしてもどちらかに傾いてしまいがち。
 気配を殺せ! 心を殺せ! 殺しきれなかったら即死(矛盾)。
 中道を好む日本人にはキツい決断を要求されますが、海外では大ヒットしたそうで、ホントに外国人はキッツいゲームが好きなんですねぇ。まぁ「ブレインデッド13」が大ヒットするような国ですから、日本人とのゲーム観は次の大絶滅が起きるまで埋まらないのかもしれませんが、過去のシリーズと違い、なぜか本作は日本語の吹き替えが存在しないので、その溝を埋める気はないようです。

 玄田哲章がいないスプリンターセルなど、ただのセルだ!ぶるぁああ!

 ……いや、なんでもないです。吹き替えがないということは、当然ストーリーを追うのに字幕を凝視しなくてはならず、その隙に即死。難易度は前作「カオスセオリー」より落としてあるらしいのですが、どうしてか音ゲージがなくなってて、結局難易度アップ。
 おのれら、殺す以外の愛情表現を知らんのかい。
 とにかくJSAのアジトをウロウロするのが非常に辛い。ただでさえ時間制限があるのに、動きがやけにもっさりしているので、かなりイライラします。
 元々UBIのゲームは作りこみが甘く、コーカライズもデバッグもまともにやってるとは思えないのですが、それにしても本作はあまり感心できませんね。グラフィックも綺麗とは言えず、AIもわりとバカだし、ミッションの内容が異常に偏っててプレイしながらウンザリ。
 なにより、あんなカクカクした動きで大量の荷物を持ち歩くスパイがどこの世界にいるよ?
 どう考えても見つかるような状況ではないのに、なぜか見つかって殺されてしまうなど、敵の能力も良くわかりません。我々が相手をしているのは千里眼の能力を持ったスペースブラザーかなんかでしょうか? 一切聞いてないけど。

 過去の「スプリンターセル」をプレイしたことがあると、ちょっと残念な完成度でしたね。UBIの春は大珍事!

(2008.05.10)