ライオット・アクト

2007年2月22日発売/マイクロソフト/85点

 悪辣な3つの犯罪シンジケートが支配する大都会のジャングル「パシフィックシティ」を舞台に、街の治安を取り戻すべく武器や車両を駆使して犯罪撲滅をめざせ!
 これだけを一見したところ、同日更新の「ゴッドファーザー」と、立場を真逆にした警察ゲームのようにも思えますが、やってることは一緒です。

 ……というか、本作の開発会社である「リアルタイムワールド」の設立者はデビッド・ジョーンズ。つまりは「グランド・セフト・オート」を開発した張本人であり、「GTA」の遺伝子という意味においては、間違いなくこちらの方が本家だったりします。

 まずはパッケージ。実に中途半端にジャパナイズされたアメコミ調が、あらゆる意味でヤバげですが、

 テメェ、桃白白! なんでこんなとこに出張してるんだ!

 正義の力を得たエージェントとなり、与えられたミッションを完遂しつつ、3つのシンジケートのボスを倒せばゲームクリアと、聞くだけなら非常にシンプルな内容の本作ですが、エージェントの性能をかなり自由に成長させられる上、プレイの幅も広いので、クリアの方法は何通りもあります。
 要は手段を選ぶ自由はプレイヤーにあるということで、ある程度はやりたい放題。武器や車両の供給を止めて、じわじわと兵糧責めにすることもできますし、直接敵の兵隊を減らしながら、敵の勢いをそぐことも出来ます。

 プレイヤーの分身となる「エージェント」はDNAを改造することでパワーアップする、という特異な能力が与えられており(要はミュータントなわけだが)、スキルを成長させることで、異常にパワーアップしていきます。そのパワーアップ度合いが並外れているので、笑えること必至。
 なにせ、スタート開始直後は普通の人間(でもないが)だったのが、パワーアップでビルの外壁を平気で登っていくわ、自動車を素手でひっくり返すわ、スパイダーマンか超人ハルクかといった具合で、X-MENの一人として別のゲームに登場しても、まったく違和感はありません。
 とりあえず、ステージ上にある場所なら、どこにでも行けます。ジャンプ力を最大まで上げ、ビルからビルに飛び移る快感には、冗談抜きで10秒ほど悶絶。パワーアップするごとにグラフィックが目に見えてマッチョになっていくので、図らずも笑いの神様まで降臨する有様。

 敵ボスを倒すと「グッジョブ!」と褒め称えてくれる市民達ですが、いざ敵シンジケートをすべてブッ潰した後は、超名作WEBコミック「HYBRID INSECTORみたいに、護ったはずのその市民から狙われることになるに違いありません。

 ナレーションを勤める「次元大介」小林清志氏の、落ち着いたふうを装いながらの静かな暴走っぷりがまたいい味出しまくり。
 色んなところにホイホイ行けて、簡単パワーアップで大破壊。笑いの神様まで降臨して、ストレス解消にはもってこいのゲームです。

 で、二日間くらいでその笑いの神様が去ってしまうと、残念ながら飽きるのは早いかも。

 開発者がGTAと同じ、ということで、当然のように一般市民も巻き添えにして吹き飛ばすことも出来ますが、やはり主人公が法の側に立つ者という体面を護るためか、一般市民を傷つけるとペナルティを課せられてしまう(スキルが下がる)のが、少々辛いところ。
 それなのにロックオンが少し使いづらく、簡単に市民を巻き添えにしてしまいます。

 また、なによりも内容のシンプルさが飽きへの直進行をフルバーニアンで加速。
 方法こそ色々あれど、結局は「敵を倒す」という目的しかないため、それを達成してしまうと終わってしまいます。
 色々出来ることには間違いないんですが、それがストーリーに影響あるかというとそうでもなく、プレイヤーが暴れているのと無関係にイベントは淡々と進んでいきます。

 処理落ちもローディングも洋ゲー特有の理不尽な難易度も殆どなく、ゲームとしてのストレスを感じることなく楽しめる本作。なんでZ指定になっているのかわからないほど、残酷描写も大人しめ。
 それだけに、この演出的なシンプルさは残念ですが、時折立ち上げて、馬鹿笑いしながら暴れてさっと止める、というプレイが今のところは一番いいかも。
 今後のダウンロードコンテンツに期待してみたいものです。

(2007.02.28)