さて、最初にこのタイトルと、このパッケージを見せられて、正確にゲーム内容を当てられる人が何人いるでしょうか?
パッケージだけを見ると、怪しげなクリーチャーが三匹と、その後背により凶悪そうなモンスターが写っています。私がそこから導いた予想は、正面に鎮座しているクリーチャー三匹が、悪戯を仕掛けてくる後ろの凶悪モンスターに対抗するために色々と知恵を練る、教育テレビでは決して扱えない「ほのぼの残虐アドベンチャー」。
……だったのですが、もちろんそんな予想が当たるはずもなく、本作は自分の「庭」を開墾し、開発し、自然に集まってくる「ピニャータ」(パッケージにいる動物たち)の相手をしながら癒される開発育成シミュレーション。
それを考えれば、内容を正確に表しているパッケージと思えなくもありません。不純な発想しか出来ない私の頭脳を、スパローミント(鳥型ピニャータ)に捧げて鳥葬されてきます。
もともと「ピニャータ」とは、メキシコで伝統的に作られている人形のことで、ゲーム中に登場する動物たちは、その点を良く表現しており、そこはかとない「味」があります。
いかに洋ゲーとはいえ、自分で一生懸命に庭を整備したのに、寄ってくる動物が四つんばいで這ってくる、X-MENやスパイダーマンに登場しても違和感が一切ないクリーチャーとかだったら、その場で首を括りたくなるほどイヤですが、流石の外国人も、そんな情景には癒されないようです。
……その割には、オープニングムービーはドギツい色使いから登場する動物から、すべてが「クリーチャーの狂宴」としか表現できないほど凄まじい世界を作り上げてますけど。
ここが、本作を諦める人の第一関門。
プレイヤーは荒れ果てた大地に住む娘「リーフォス」の依頼で庭を造り、大地を蘇らせます。
最初に与えられるのはシャベル一本のみで、人に物を頼む割にはやっつけな準備が不安を掻き立ててくれますが、ヘルプ機能が充実しているので、行動に迷うことはありません。
条件を満たすたびに新たなピニャータ(動物)たちが現れて、ガーデンは段々賑やかになっていきます。ここで残念なのが色使い。洋ゲーにありがちな原色ビシバシな派手な動物たちが動き回ってくれるので、物凄く目が痛くなります。
ここが本作を諦める人の第二関門。
この二つの関門さえ乗り越えてしまえば、後は止め時を忘れるほど没頭できます。
庭を造り、ピニャータたちを集め、その世話をする、と書くだけならばけっこう地味ですが、やれることはそれなりに多め。ピニャータを集めるだけならば、無計画にほいほい開発してもそれなりに集まります。しかし、本作の肝は中盤、特定のピニャータを集めたり、庭の開発が進んで池を作れるようになる以降です。
ピニャータも野生動物ですから、住み着いてもらうまでには手間がありますし、野生ならではの相性もあります。ピニャータたちがケンカをしないように世話をし、子孫繁栄のために仲を取り持ち(相性が高くなると卵を産みます)、外部の厄介なトラブル(病気のピニャータを壊してしまう人間とか、凶暴な野生のピニャータなど)からガーデンに住み着いたピニャータを護らなければなりません。
どちらかと言うと、大家族の親、というよりは、子供用プールの監視員のような気分&忙しさですが、動物を飼う、ということはそういうものです。私の家族は揃って動物好きで、一番多かった時期には、実家に猫六匹、犬三匹がニャーニャワンワン騒いでたんですが、あの忙しくも微笑ましい時代を、思わず思い出してしまいました。
ピニャータたちに愛着が持てるようになると、世話の煩わしさが手間に感じなから不思議です。
自分の庭の中で「食物連鎖」が文字通りの意味で起こってたり、平気でピニャータが交尾してたりと、どう考えても子供向けじゃありませんし、最終的なゲームの目的がないので、自分なりに目的と計画性をもってプレイしないと、わらわらと無制限に増え続けるピニャータたちに途方にくれることになります。
そのほのぼのした印象とは裏腹に、しっかりとビジョンを描いてプレイできる大人向けのゲームですね。そうして一旦はまりこむと、原色の動物たちが住むマイガーデンに腰を落ち着けてしまい、脱出するのが難しくなるほど、のんびりと熱中してしまいます。
本作、日本での売り上げはあまり芳しくないようですが、明らかにパッケージで損してます。
正直言って、パッケージやムービーでこれほど損をしているゲームも珍しい。日本で発売するなら、パッケージくらいはもうちょっとジャパナイズしたほうが、評判は良かったのではないかと思うのですが……。
かなりはまれるゲームだけに、その点だけが残念です。
(2007.04.19)