「オペレーション・フラッシュポイント コールド・ウォー・クライシス」の、実に9年ぶりになる続編。
膨大な石油資源が眠っていると噂されていた樺太近海の島、スキラ。アメリカとロシアの合同企業は、長年の開発が実り、ついに石油の発掘に成功する。
だが2011年、中国人民解放軍の強硬派が突如として島を占領。ロシアと中国の関係は急激に悪化する。
中国との緊張を、大陸とスキラの両方で維持する余力の無いロシア軍は、アメリカに支援を要請。こうしてUSSイオー・ジマLHD-7が北日本海に派遣されることとなった……。
いいんですか、このストーリーは?(笑)
一応FPSにジャンル分けされるんですが、本作は「ガンアクション」ではなく、あくまでも「戦争体験」。プレイ感覚は、混同されがちな「コール・オブ・デューティー」なんかとはまったく別物です。
他のFPSでは無敵だぜイヤーッハァーッ! という人でも、たぶんそのテクニックは本作では通用しません。
両手に銃をかまえて戦場に乱入! 俺様の早撃ちは確実かつ無敵! この超絶乱射テクの前に、臓物をぶちまけろ! とかやってると、本作ではこっちが蜂の巣。
なにせ「戦場」です。相手も殺されないように必死です。どこからか静かに、こちらに死の照準を定めています。
その照準の的にならないように、周囲に気を配らなくてはなりません。移動はほぼ中腰、ときには匍匐前進し、遠近、あらゆる状況をチェックしながら、草むらの中を進んでいきます。
銃を撃つにも、状況判断は欠かせません。何も考えずに銃声を響かせると、そこから自分の位置が特定され、仲間もろともデッドエンド。
もしも銃撃などされてしまったときには、即座に治療しなければなりません。
本作には、一瞬でHPを回復してくれるような薬草もポーションも存在しません。理由は簡単です。そんなものは現実に存在しないから。
傷を受けた場所により血の流れ出るスピードも違います。当然、HPは減り続け、ほうっておくと失血死。
自分で治療することもできますが、衛生兵を呼んで治療してもらったほうが確実に直ります。これも当然ですね。
目の前で銃撃され、倒れた仲間を助けようと近づいても、敵兵の銃撃は容赦しません。自分が近づく前に倒れたアイツに集中射撃で、名も無き栄光がまたひとつ、戦場に散っていきます。
自分ではどうしようもできない戦場のリアルに、ゲームとしてのエンターテインメント性は皆無。
慎重に、とにかく慎重に。相手を全滅させることよりも、まず自分が生き残ることを優先させなければなりません。
本作の目的はまさにそこで、戦場の勇者として死ぬことではなく、名も無き一歩兵として生き残ることこそが至上命題なのです。
重要なのはまず「情報」。敵の位置や数、配置を調べ上げ、それを撃破するために戦術を練ります。部下への指示コマンドは豊富にあるので、試されるのは純粋に自分の戦術眼です。
残念ながら部下のAIはあまり賢くなく、犠牲にできない衛生兵と、その他のボンクラども率いて、だだっ広いマップの「○キロ先のフラッグ」とか無茶な指令をこなさなければなりません。
銃撃をするにしても、300メートルも離れれば肉眼で敵兵を確認するのはまず無理。弾丸も、重力による自由落下補正がしっかり計算されているので、そこまで考えて撃たないと当たりません。
あらゆる意味で厳しいのが戦場の掟。
はっきり書きますが、これは「FPS」ではありません。ジャンル的にはむしろシミュレーションに近いです。
ちまちました命令とじっくりとした行動か要求されるので、短気な人には完璧にむきません。下手に動くと、それだけで死にます。
とにかく異様に難しいので、ある程度FPSになれた人でも、気軽な気持ちで手を出すと痛い目を見るでしょう。いくつかある操作の謎仕様のおかげでスピーディーに行動することが難しく、それも難易度の異常な高騰に拍車をかけてしまってます。
プレイしていて、「爽快感」というものもまったくありません。「極度の緊張感」を楽しめる人だけに門戸を開いた、究極の間口のせまさ。それこそが、本作の本作たるゆえんかもしれません。
(2010.11.11)