ニード・フォー・スピード モストウォンテッド

2005年12月10日発売/エレクトロニック・アーツ/91点

 Need for speedです。しかもMost wantedです。直訳すると「速度の必要性 最も欲しい」です。意味はわかりませんが、言いたいことはひしひしと伝わってクルのです。
 やはり男にはスピードが必要な時があるのです。あまりに早すぎるとパートナーとの間に決定的な不和が起こりうる可能性がありますので、TPOを弁えるのは大切なことですが、それでも男は速度を求めなければならない時期があるのです。
 ……車の話ですよ?

 さて、レースゲームをあまりプレイしない私にとって、「大暴走」というキーワードで想起するのは、1990年代中盤はエヴァ、後半はアイリスと八神庵、21世紀以降は真の紋章と暁の断片なわけですが、本作では大都市の道という道をカーチェイスで大暴走! 相手が警察だろうがライバルだろうがお構い無しにブッ飛ばしまくります。
 どうにも玄人向け(シミュレータの一面が強いもの)が受ける傾向にある現在のレースゲーム市場で、これほどまでに爽快感にこだわった一品は貴重なんじゃないでしょうか?
 どちらかといえば全米で大問題になったにも関わらず全世界で800万本も売れたブッチギれゲーム「グランド・セフト・オート3」に雰囲気が近いかも。
 ハビブ・ザーガープア(代表作「マスク」「スターウォーズ エピソード1」)が制作指揮した映像はハリウッド映画を強烈に意識しているようで、見ようによっちゃ少々濃いですが、実力は折り紙つき。決して「スマートさ」を追い求めているわけではないので、この独特の「濃さ」が作品に良く合ってます。

 とにかく「暴走こそ正義」が唯一にして絶対価値である本作にとって、目的は「ブラックリストの上位に載ることを目指して走りまくる」ただこれだけ(「モスト・ウォンテッド」とは「最重要指名手配犯」の意)。
 ステアリングやアクセル、ブレーキ、ニトロといった「お約束」のシステムに加えて「スピードブレイカー」の存在が面白い。ニトロは手に入れるまでが大変ですが、ボタン一発で超加速が可能、それも普通の「レースゲーム」とはまた違う感覚で超加速が味わえるので、爽快感は満タンです。
「スピードブレイカー」はある意味その逆で、「速度」ではなく「時間」を減速させる、つまりゲームそのもののスピードを落とすボタン。これでスローモーションにすることで、対向車や障害物を避けやすくなります。実際のところ、この「スピードブレイカー」をうまく使いこなさないと、このゲームでは勝てません。

 本作には「チャレンジ」「アーケード」「ネット対戦」とモードがありますが、なんといっても面白いのが「シナリオモード」。ただひたすらライバルを追い抜きブッ倒し、賞金を得て、車をチューンして更にレベルの高いライバルを探して街中をブッ飛ばします。
 ブラックリストに載るほどの実力者と戦うにはいくつかの条件をクリアしなきゃいけませんが、当然のように「交通違反を繰り返しての罰金総額」なんてのが設定されているあたりが、完ッ璧に確信犯。中にはパトカーにカーチェイスを挑んで勝利しないといけないバトル形式もあるんですが、普段、あまりハメをはずすことなく生活している身にとっては、レベルが上がり、親の敵のように目を血の色に染めて集団で追っかけてくる警察と戦うのはアンリアルの極みで、なんだかいけない魅力に取り付かれてしまいそうです。

 とにかく、なんでもかんでも戦って力づくで奪え!というのがいかにも洋ゲー的な思想ですが、マシンスペックにモノを言わせて力づくで生み出された三次元の大都市を、極めまくった車でもってスピードで陵辱していくこの快感は、ゲームの中でしか感じることのできないものでしょう。実際にやったら完璧に犯罪だし。
 暴走族(今は珍走団か?)だの飲酒運転だの、現実の世界でマナーの守れない愚者たちは本物の警察に任せておいて、良識的なプレイヤーは本作で無茶をやりきり、公道では安全運転に徹しましょうね。

(2006.09.17)