iDOL M@STER

2007年1月25日発売/バンダイナムコゲームス/84点

 さぁ、ついにアイドルマスターが家庭用に降臨ですよ、プロデューサーさん!
 本作は、2005年7月26日にアーケード版が発売されて以降、一部に異様に濃いファン層を確立し、「シスプリ」の「お兄ちゃん」ならぬ全国の「プロデューサーさん」を廃人に追い込んだ、狂乱のアイドル育成シミュレーション(アイドルプロデュース体験ゲーム)。
 プロデューサーとして新人アイドルをプロデュースし、レッスンとオーディション挑戦を繰り返しつつ、自分以外に何人の人間を廃人に追い込めるか……げふん、どれだけ多くのファンを獲得できるかを競うゲームです。

 ゲームセンターでは、三国志大戦タイプの大型筐体+専用リライタブルカード(×2枚)使用媒体で登場。
 筐体と一体になっている「タワー」で、集積された全国のゲームセンターでプレイする「プロデューサーさん」のランキングデータや、彼らが育てたアイドルのテレビ出演映像にライバル意識を燃やしながら、自分のアイドルを育てるという、こういうジャンルが好きな人間ならば、極まりまくったトリガーハッピーが自分から望んで戦場に足を踏み入れるが如く、能動を装い萌え+浪費散在確定ゾーンへご招待。

 私の友人にも、この「アイマス」に狂って人生を踏み外したのが何人かいますが、

「アイマスを始めたのは、運命の人に会うため」
「千早スパイラル」
「ひんそーでひんにゅーでちんちくりん」
「要チェックです!」
「ああ、穴掘って埋まりてぇ!」

「小鳥さんプリィィィィズ!」

 と、ゲームをプレイしてない人間には呪文でしかない用語を連発していました。知らない人が聞いたら警察に通報されそうですが、要はそれだけ破壊力があるということでしょう。
 格闘ゲームをしない人から見た必殺技名や、三国志を知らない人から見た武将名なども、こんなもんだろうしね。
 ……ここまで酷くはないか。

 私はアーケード版をプレイしたことはないので詳しくは知らなかったのですが、流石に大型筐体ゲームで、カードを使用し、更に複数回プレイが大前提のシミュレーション、ということで、やはり総合するとかなりの金額が必要ならしく、通信機能が発達した家庭用での登場を待ちわびる声は多かったようです。

 で、私もこの360版で初プロデュースに挑戦してみたのですが、確かにね、こりゃ好きな人はどこまでもハマるわ。
 登場する育成対象のキャラクターは、

 そして、この360版から登場となった新キャラクター

 の実質9人。あずささん以外は10代ということもあり、「Hしたい」等の不純な動機は沸きにくいのですが、それが逆に長期の「育成」というジャンルと相まって、純粋な愛着が沸いてきます。

 ……ここで、プレイ感の類似例としてPSの「熱血☆情熱アスリーツ 〜泣き虫コーチのダイアリー〜」とか持ち出したら、万単位の集団で嬲り殺されそうなのでやめておきます……。

 流石にアーケード版の完全移植は無理だったようですが、「アイドル育成」には欠かせないオリジナルソングを新たに収録するなど、「出来るところで全力」という姿勢は好感度大です。
 本当はバグでしかないアクシデント(ステージでアイドルが歌っている最中に、バグでスカートが消えることがある)がプレイヤーに衝撃を与えたのも、良い方向に相乗効果を齎したのかもしれません。


放送事故。1:30あたり。

 ただ。

 やはりキャラクター・ゲームということで、育成対象であるアイドルに愛着が持てないと、相当辛いです。
 正直、ゲーム内でやってることは、レッスン(5種類のミニゲーム)とオーディションと少々のイベントのみ。シミュレーション・ゲームとしては、凄まじく単調な繰り返しなので、気にせずに乗り切るには相当の「愛」が求められます。

 また、ゲーム内のキャラはトゥーンシェードで描かれているのですが、これがまた絶妙に微妙。
 グラフィック自体はかなり綺麗なんですが、数多のプレイヤーの趣向の最大公約点を狙ったような絵柄は、嫌味はないけど特別に美しいわけでもなく……、といった具合で、特徴がありません。
 これを売りにするのはちょっと辛いかな。

 そして、本作のウリの一つであり、同時に敷居を異様に高くしている原因になっているのが「歌」。
 さすがに歌唱力は素晴らしいですが、アイドルの歌だけあって、少量の電波含有は標準装備と思ったほうがいいです。

 結局のところ、好きな人は地獄の底までハマれると思いますが、門自体は狭いです。
「ゲームをしよう!」と思って意気込んで買うと、ちょっとガッカリすることになるかもしれません。
 自分がプロデュースするアイドルと共に、血路を歩んでいく覚悟を持って、挑んでください。芸能界は、かくも厳しい世界なのです。
 違う意味で。

(そういえば、後に続編やPSP版、お徳パックも出るほどの人気がある本作、その人気が絶頂だった2006年には、当然のようにアニメ化の話もあったんですが、ついぞ放送したという話は聞かないんですが、あれはどうなったんでしょう?
 キャラの性格が原作と大幅に違ったり、舞台が原作とはまるで関係ないSFロボット学園という設定にされていたり、無能なダメプロデューサーが野心だけを全開にした、典型的すぎるほどのクソアニメになりそうな雰囲気で、個人的に(違う意味で)楽しみだったんですが)

(2007.02.23)

2013年追記:実はこの記事から6年後に上記のSFロボット学園アニメ「アイドルマスターXENOGLOOSIA(ゼノグラシア)」を初めて見て、超がつくくらいに大ハマリしました。ゲーム版の「アイドルマスター」とは完全に別物で、同じなのはキャラの名前くらい(アイマスのキモであるはずの声優さんから全て違う)ですが、強引ながらもとにかく熱いストーリーでぐいぐい引き込んでくれます。聞けば「舞-Hime」のスタッフが結集しているのだとか。
 私がDVDを全巻買ったシリーズは、後にも先にもこの「アイドルマスターXENOGLOOSIA」だけで、自分が「アイドルマスター」の世界に入ったのは、ゲームよりもむしろ「XENOGLOSSIA」からでした。こちらもかなり面白かった2011年のゲーム版のアニメ化「アイドルマスター」ですら、DVD買うところまではいきませんでした(絶対こっちのほうが売れているとは思うけど)。当時の自分の「食わず嫌い」を恥じるばかりです。m(_ _)m
 この「XENOGLLOSIA」のアニメ化にはゲームを作ったナムコと、アニメを作ったサンライズの間に複雑な事情があった模様(もともと、なんでアイドル育成ゲームのアニメ化の話をロボットアニメ・バトルアニメの老舗へ持っていったのかは分かりませんが、どうも時期的にアーケード版「アイマス」の人気が頭打ちになったあと、ニコニコ動画で人気が再燃する直前、という一番微妙なタイミングでアニメ化が決まったらしく、企画そのものがナムコからサンライズに丸投げされ、「しょうがないから舞-Himeのキャラを変えて作ろうか」というとこに落ち着いたという、あくまで噂です
 当然、「ぷちます」にもハマリ中。劇場版「アイドルマスター 輝きの向こう側へ」は三回見た行きましたが、これはファンとしては自慢できる回数ではないのだろうな……。
 スマホ版(シンデレラガールズとミリオンライブ。とにかく金をかけて何ぼの課金ゲーム)は投資金額が大きくなりそうなので手はつけていませんが、キャラクターは大好きです。「キノコ栽培系ボッチアイドル」などの狂ったアイデア、頭のどの部分を使ったら出てくるんだろう?
 そういえば、男性アイドルを育成する(課金ゲーム)「Side-M」のほうはどうなっているのでしょうか?