フォールアウト3

2008年12月4日発売/ベセスダ ソフトワークス/87点

 ファンの間で評価が高かった「ジ・エルダースクロールズ4 : オブリビオン」を製作したスタッフが再び贈るRPG。

 核戦争後の世界を舞台に繰り広げられるサバイバルワールド!
「フォールアウト」とはすなわち原爆が落とされた後に降る「死の灰」のこと。タイトルから既に世紀末感覚満点ですが、このタイトルにこめられたスタッフの本気度合いを感じ取れ! と言わんばかりに拳気オーラを全開にした結果、海外のゲーム賞を総ナメにしたという本作。
 世紀末やら核戦争やらのキーワードから「北斗の拳」を想像するオールドジャンプファンもいるでしょうが、この戦争後の荒れ果てた大地の中で必死で生き抜いていく様は、まるで「オブリビオン」の思想でもって「北斗の拳」をゲーム化したようなもの。
 ありとあらゆる感覚が摩滅し、絶望という感情しか残っていないこの人類社会の中で、あえて世紀末救世主的な道を行くのも、時代に流されてアンモラルな犯罪道を貫くのも自由自在。
 見渡す限りの荒涼とした砂漠と、無骨極まりない殆ど遺跡と化した文明の残骸に嫌になって、池に目を落としてみれば、二足歩行のカニがすばらしいグラフィックでわさわさ動いてたり。

「オブリビオン」ではやや無骨だったシステムが洗練され、だいぶ遊びやすくなっている印象。
 世紀末という世界観は統一されており、どこもかしこも寂れたとこなかりで、雰囲気は最高。台詞が全て日本語に噴きかえられているので、雰囲気を理解しやすいのも好印象です。
 ジャンルは一応「RPG」になってますが、システムは「FPS」に近く、この辺で人を選んでしまいそうな気もしますが、V.A.T.Sという独自のシステム(時間をストップさせて、考えながらプレイできる)で間口を広げようとしている努力は良し。
 海外産によくあるように、モンスターやら、モンスターみたいな悪漢やら、敵の攻撃は特に苛烈で、弱々しい最初のうちは逃げ回るのに必死ですが、ナイフから小型核弾頭まで、あらゆる武器を使いこなせるようになると世界が一変。
「貴様の頭を治すのは、この秘孔だぁ〜」とか言いながら残虐行為に及んでも罰する者は誰一人いません。
 そのくせ、ストーリーが進んでも、名前のあるサブキャラは死体がそのまま放置されたままなので、食物連鎖の厳しさを感じながら、今日も今日とて木偶人形を狩り続ける日々を送ります。

 そういえば、サブキャラなんかは死んだら二度と生き返らないんですが、自分は放射能に汚染された水を飲んでも、金さえ出せば医者にいくらでも治してもらえます。
 核戦争後、ということで、水や食料などが放射能に汚染されており、食べ続けると体内に放射能に汚染されてしまうのですが(ここで映画「ノストラダムスの大予言」を思い出す人もいるかもしれませんが)、前述のとおり、金さえあればいつでも直る銭ゲバ仕様なので、あんまり意味なかったですね。

「どこにでもいけて、何でもできる」というと、「FABLE」とかネットのMMO-RPGを想像しそうですが、舞台が「世紀末」というこの一点において唯一無二の存在である本作。
 何をして生きようが、誰を抹殺しようが、街をどうしようが、何から何まで自由です。
 頭や腕はブッ飛びまくるし、血なんか水がわりにドバドバ流れまくるので、グロ表現が苦手な人は近づかないほうが無難。
 現代のグラフィック技術の粋を集めすぎて必要以上に気持ち悪くなったゴキブリなどがわんさかいるため、その辺が苦手な人にもお勧めできませんが、これでも北米版に比べれば残虐表現はそうとう抑えられてます。
 また、ゲーム自体がめざすところも、バイオレンスよりもブラックユーモアを追求しているせいか、予想していたよりも胃にもたれることはありませんでした。

 メインストーリーは中だるみがないものの、尺自体は短く、空気が重いまま進行しますが、そのぶんはサブクエストで充分に補完が可能。
 善人にも悪人にもなれるので、その辺でストーリー分岐があっても面白かったとは思いますが……。
 また、移動手段が徒歩しかないのに、マップがそりゃもう、途方もなく広いので、目的地を探すだけでも一苦労です。マップはもう少し狭くてもよかったかもしれません。
 オブリビオンに比べると、カスタマイズ系の自由度が極めて低くなってしまったのも、残念といえば残念ですね。武器、壊れやすいしなー。

 とにかく、最初に大地に放り出されたときに、一度は途方に暮れてしまうかもしれませんが、時間がたてばこの世界に配置されたオブジェクトのすべてに意味があることが、じわじわ分かってくるでしょう。

(2010.01.10)