ブルードラゴン

2006年12月7日発売/マイクロソフト/62点

 ファイナルファンタジーの生みの親で「ミストウォーカーのヒゲ」こと坂口博信と、同じくファイナルファンタジーの音楽を担当した植松伸夫、「ドラゴンボール」の鳥山明が手を組んだ大作RPG。
 この冬(2006-2007)、Xbox360最大のキラータイトルですね。

 内容に関しては後述しますが、まあメチャクチャな勢いで暴走してますね、坂口さん。
 本体との同梱セットである「Xbox360コアシステム ブルードラゴンプレミアムパック」をはじめ、Xbox360タイトルの中ではかなり善戦していることもあって気を良くしたのか、経歴不明の鷹野常雄原作・「デスノート」の小畑健作画のコンビで「少年ジャンプ」で漫画化したのを皮切りに、既にPS3への移植・シリーズ化や、アニメ化も決定しているそうです。
 ジャンプの漫画版の第一話が、いきなり「BASTARD!」(萩原一至)の丸パクリかよ!? などと、違う方面で話題になっちゃいましたけど。
 まあ、このゲームらしいと言えばらしいですけどね(問題発言)。

 本作は、よく言えば昔ながらのシンプルな、悪く言えば古臭いRPG。ドラゴンクエストシリーズを、方向性をそのまま進化させたらこんな形になるかな、と言う感じ。
 はっきり言っておきますが、間違ってもドラクエが嫌いな人はプレイしないほうがいいです。
 作ったのは坂口さんですが、鳥山さんがシナリオのかなり深い部分までアイデアを出しているためか、ストーリーのノリ・テンションは限りなくドラクエに近い気がします。
 ヤリコミ要素は多く、物凄く丁寧に作られてはいるのですが、ツッコミ要素も多いですね。

「ファイナルファンタジー12」や「ドラゴンクエスト9」がフィールドからバトル画面に変わらないオンラインMMORPGタイプのバトルシステムに移行していく中、昔ながらのコマンド選択式を採用。武器に「自分の影を使う」というのがかなり新鮮ですが、戦闘の難易度自体はかなり低いです。
 そのせいで、本作のウリである筈のスキルのカスタマイズをやりこむ必要がほとんどないのは残念。バリバリア(一度倒した敵は触っただけで倒せてしまう凄まじいスキル。たぶん秘孔を突いている)の存在のおかげで、戦闘時間は更に短くなり、やりがいは余り無いです。
 ボス戦のBGMがボーカル入りだったのはビビッた。「里見の謎」をインスパイア!?(違う)

 グラフィックは、他の360タイトルに比べて、飛びぬけて優れていると言うことはありませんが、気合はかなり入ってます。フィールド上で活躍するキャラもストーリーも正しく鳥山ワールド。それを、マシンパワーを駆使して忠実に3Dに起こしているので、好きな人はかなり感動できるかも。
 個人的な趣味の問題で申し訳ないんですが、私は最近の鳥山絵はあまり好みではないので、ちょっと引いた、と言うか、気持ち悪かったけれど…(だったらやるな、というもっともな意見には反論のしようもありませんが)。
 難点は、キャラクターの動きがやけにもっさりしていることと、処理落ちがかなり激しいこと。鳥山絵の再現に全力を尽くしてしまったのか、戦闘でもフィールドでも、かなりチラつきます。鳥山絵の苦手な人にはちょっとキツイね。
 更に、これは他の360のタイトルも同じなんですが、普通のテレビだと、素晴らしくテキストが潰れまくります。以前にもどこかで書きましたが、切り捨てる相手を間違えとらんか?
 あと、いまどきフィールドで視点が変更ができないと言う仕様は、細かいところで作りこまれている本作にしてはちょっと残念なところですねぇ。というか、作りこみすぎで調べられる箇所が多すぎて、逆に困った。

 個人的に一番残念だったのは、実はストーリーだったりします。
 本作はDVD三枚組という特大ボリュームなわけで、かなりヤリコミ要素も用意されてるんだけど、ストーリーに重点を置いてキャラクターの個性を抑えた結果、かえってどちらも地味になちゃったような気がする。
 ボリュームはあるんだけど淡々と流れていくと言うか、凄くテンポよく進むんだけど盛り上がりには欠けるとう言うか。
 それでいて、主人公のシュウが「アルトネリコ」のライナーとはまた違う意味で真性の馬鹿野郎なので、最高にとっつき辛いのも地味にキツイ。…というか、シュウが16歳と言うのは幾らなんでも無理があると思うのだが。

 本作を乱暴に片付けてしまうと「最新機種で作った大昔のゲーム」。具体的に言い直すと「ドラクエ風味に焼きなおしたFF3」といったところでしょうか。グラフィックが良い、という以外は、新鮮味は全くないです。
 余りにシンプル、余りにオーソドックス。面白くないわけじゃないが、目から鱗というわけでもない。更に頻繁にフリーズする。このあたりの捕らえようによって、ちょっと評価はブレルかもしれませんね。
 あ、あと実績解除はけっこう辛いよ。

(2006.12.26)