第二次大戦下のヨーロッパで活動し、終戦間際、ドイツ軍に拷問の末23歳の若さで銃殺されたイギリス情報局秘密情報部所属の実在の女スパイ、バイオレット・サボーをモデルにした「バイオレット・サマー」を操作して、様々な隠密任務をこなしていくステルスアクション。
主人公を実在の人物、しかも女スパイに設定したことで斬新さを持たせていますが、ゲームそのものは、よく言えば基本に忠実、悪く言えばありがちな、シンプル極まりないスニーキングゲーム。
無論、敵の背後から忍び寄って忍殺することが主な任務なんですが、与えられる弾丸がかなり少なく、銃を景気よく連射するわけにはいかないこともあってか、求められるのはテクニック以上に、何と言っても根気。
発見されたらほぼ即死、というバランスなので、あちこちに隠れて息を潜め、敵の動きやライトの点滅を見極め、タイミングを計ってこっそりKILL! 場合によっては現場の仕掛けを利用して敵を罠にかけることも可能です。
病床にあるバイオレットの記憶を追体験していく、という変わった手法でシナリオは進んでいきますが、元が実話なだけに、わりと悲惨というかかなり重苦しいので、少し人を選んでしまうかもしれません。
第二次大戦下という世界観に極めて現実臭が濃く、日本語に翻訳してあるのは主人公のセリフのみで、敵は全てドイツ語でしゃべるという徹底振り。よくぞここまで拘った、と褒めてあげたいところですが、そこはゲームの悲しさ、謎の注射で敵の動きを止めてみたり、追いはぎのように死体をあさってみたり、お前は本当にスパイか。
画面が暗すぎ、明らかに敵がロボトミー手術を施されたロボットすぎる動き、ステルスが超絶万能、それなのになんでか最終面のみステルス不可という謎仕様、というストレス部分もあるものの、雰囲気は最高でトライ&エラー必須の難易度も良好。
確かにハマれる。ハマれるんだけど、何かが一本足りないんだ。
迫力はあるけど敵はバカ。
やれることは多いけど目的はほぼ暗殺のみ。
雰囲気はあるのにBGMがまったく印象に残らない。
マップは広いのにルートは(ほぼ)一本道。
やりがいはあるけどやりこみ要素はない。
低ポイントを付けてこきおろすには勿体無いけど、高ポイントを付けるほどでもないという、このモヤモヤ感を何とかしてくれ。
チョロっとプレイしてサッと止めるのが最高の楽しみ方だと思うけど、飽きるのも早いでしょうね。