THE KING OF FIGHTERS 2002

2002年12月19日発売/SNKプレイモア/60点

!このレビューは、かなり感情的な文章を含んでいます。ご注意ください

 本作は、94年に第一作が出て以降、度々開発中止の噂が立ちながらも毎年コンスタントに発売されている格闘ゲームです。「2002」でなんと9作目。ストリートファイタシリーズを除けば、同タイトルを冠したアーケード用のゲームとしては、最長の部類に入るのではないでしょうか?(家庭用では「北斗の拳」っていうのがあるけど)。
「94」は純粋なお祭り、「95」から「オロチ編」のストーリーが「97」まで続き、再びお祭りの「98」をはさんで、「99」〜「2001」まで「ネスツ編」が続きました。
 そして本作は、「98」以来のお祭り編となります。

 まずさっきも言いましたが、ここ3年間使用されてきたストライカーシステムがなくなり、本来の3on3に戻りました。ロケテストや発売後の私の周辺も、概ね好評で、特に否定的な意見は聞きませんでした。
 実を言うと、前作である「2001」開発当初に、すでにストライカー廃止の動きはあったそうです。しかし韓国のファンやイオリス社の勧めもあって、「2001」では結局、タクティカルストライカーとしてシステム自体は残った、というエピソードがありました(エンターブレインのインタビューで、メインプランナーの秦俊之氏が言ってました)。
 と、まぁそんな経緯を知っていたので、「2002」には正直、どんなもんかと不安だったんですが、ブレッツァにも(そしてイオリスにも)、まだ良心は残っていたようです
 それで肝心の出来のほうですが、けっこう遊べます。「2001」に比べれば、バランスも「98」に近くなって、わりと良好。比較の問題だけど。
 毎年のことですが、勝利デモ等のデザインセンスは、本当にいいです。ここらはSNKの美しき遺産でしょうか。

ただし!

 これも毎年のことなんだけど、今年も例に漏れず、とにかくパクリが激しいです。「君ら、パクリしかやることないんか?」ってくらいで、なんか呆れたと言うか、失笑してしまいました。

 そして、毎年恒例のバグ。今年もやっぱりあります。
「2001」にあったメイ・リーのモード切替に関するヤツとかは今年もあるみたいです。京の「罰詠み→ずらし鬼焼き」はわざと残したのかな?
 結局、評価としては、「どこでもキャンセル」とか相変わらずクセはあるものの、ファンなら問題なく遊べるでしょう。開発がブレッツァソフトに移ってからの作品としては、一番いいできです。……かなり大味だけどね。

 さて、ここから、ちょっと話がそれます。最近のKOFのメインイラストを描かれているノナ氏のこと。
 私は、この人の絵は正直言って好きです。ちょっとアクが強くて、好き嫌いは分かれるとは思うけど、これまでイラストを描かれてた氏とはまた違った魅力があります。でも、問題はそんなことじゃありません。
 前から疑問に思ってたんですが、ノナ氏は、ひょっとして自分が担当するKOFについて、恐ろしく無知なのでは?という気がひしひしとするのです。

 まぁ詳しくは設定集等を読んでもらうとして、例えば「2001」のボツイラスト。私は、これを見て腰が抜けそうになったよ(笑。世間のKOFファンが呆れそうなイラストが、ずらずらと並んでます。イオリやセスは完全に目がイっちゃってるし、マキシマは怪獣だし、チョイはボヤッキーだし、クラークの顔は金平糖だし……。

 で、それらにそえられたノナ氏のコメントがまた勘違い連発。

「もともと京のイメージはデビマンの不動明さんで、悪い奴らしいんです。そのまま描いたら没りました。爽やかじゃない!って(笑)」

 いきなりこれです。キャラの容姿のモデルとキャラクター性のモデルの区別がついてません。クリエイターの割りに、オリジナルキャラクターというものを作ったことがないのでしょうか?

「(註:マキシマは)一番がっかりしたキャラです。いいじゃないですか怪獣で。かっこいいじゃない怪獣。駄目ですか怪獣は?……駄目ですね」

 確かに怪獣はかっこいいけど、怪獣じゃないものを強引に怪獣にするのはどうかな。だいたい、マキシマを「怪獣」って思ってる人、他にいるの?

「くノいちだからエロく描かねば! と思っていたのですが、世間の舞のイメージとだいぶ離れてるとのこと。ちょっと卑猥すぎましたかね?」

「くのいち=エロ」というストレートな発想は個人の自由だけど、それを(既に市民権を得てる)特定のキャラに勝手にあてはめるなよ(笑)。大体、なんでSNK時代に餓狼チームいたノナ氏が、世間のファンの舞に対するイメージっていうのを理解してないのさ?

「(註:チョイのイラストの)コンセプトは猫の威嚇です。フーッ!って。丸顔の爽やかスマイルで描いたらOKが出ました。チョイってそんなキャラでしたっけ!?」

 ……チョイが爽やかキャラっていうのは、確かにちょっとイメージから外れるとは思うけど、だからといってノナさんが描いた、アゴが長くて鼻がでかい、悪趣味なボヤッキーみたいなチョイは、ファンのイメージをさらに100万光年くらいぶっちぎっちゃってると思うんだけど。

「クラークもがっかりしたキャラの一人です。この黄金糖みたいな顔がイカスのに……。泣く泣く直しました」

 そういうことがやりたいんなら、元来そういう顔のキャラでやるか、同人でやりなさいね。上のチョイもそうだけど、なぜオフィシャルイラストで顔の骨格まで変えようとするの?

なぜかロバートがすごく苦手なんです。マフィアの息子で女たらしらしいんですけど。ガルシア財団って実は悪?

 ロバートはマフィアじゃねえぇ!!

 確かに外見上は女たらしに見えるかもしれんけど、ロバートはユリ一筋なナイス・ガイなんだよ、本当は。
 さすがの私も、このコメントには、何を疑うより先に、自分の正気を疑いました。
 というか、
 近年、ストーリーやエンディングで馬鹿にされ続けている「龍虎」ファンを、更に足蹴にする発言、絶対に許すまじっ!!!!

「〜らしい」という言葉を連発していることからも分かるとおり、ノナさんがそのキャラについて、実はよく知らずに描いているのが、よく分かります。
 他のKOFのオリジナルキャラは、こんなに極端にダメダメじゃないんですが、やっぱり少し、ファンのイメージとは、ずれてる気がします(オフィシャルイラストで採用された方は、幾分マシです。……あくまで比較の問題なんだけども)。
 とにかく、彼の様々なコメントを拝見する限り、彼がキャラの外見から勝手に持った先入観を、イラストにふんだんにとりいれているのは、間違いないでしょう。でも、そういうのは大概にファンのイメージとはずれるわけで。
 大体、スタッフに聞けよ、キャラの性格や特徴くらい! 今までのシリーズに関わったことがなくても、プロとしての自覚が少しでもあれば、こんな無責任なことはできないと思うんですが……。

 なんだかんだ言っても、メインイラストは、雑誌や攻略本など広告媒体における、そのゲームの「顔」です。だからこそ、イラストレーターは、その作品をよく理解して描くべきなんじゃないんでしょうか?
 ましてや、無知なんて、言語道断です。……ノナ氏のイラストが好きだから、よけいに複雑なんだよ……。だって、ノナ氏がやってることは、例えば「三国志を全く知らない人が、中国史の本に三国志の漫画を書いて、お金を貰っている」みたいなことなんだもの(「たかだかボツイラストで、ぐだぐだ言うな!」とか言われそうだけど、採用だろうがボツだろうが、メインでやっている以上、それなりの責任はある、と私は思うのね。例えば、あなたは、自分で作った商品のパッケージをあるイラストレーターに頼んだとする。そんな時、あなたは、その人に自分の商品の予備知識をまったく与えずに、描かせますか? 描かせたら、どうなると思いますか?)。
 ついでに言うと、ブレッツァには、はたろー氏や九十九一氏、dice氏など、明らかにノナ氏よりも一般受けしそうな(要するに上手い)イラストを描ける人が沢山います。なんでそういう人を「KOF」という看板タイトルのメインに据えないのか、かなり疑問です。
(というか、SNKがつぶれて以降は、KOFで権力握るイラストレーターには、ロクな人がいませんけど)

 ブレッツァ自体は、ちゃんとファンの「KOF」に対するイメージをわかってるみたいなんだけど、その割には、パクリの度合いの酷さとか見てると、どこまで真面目にやってるのかはかなり疑問。
(さすがに『鉄雄』がそのまま出てきたときは、顎が外れるほど大笑いしました。声まで一緒じゃん(笑)。もうなにがパクリでなにがパクリじゃないのか、信頼度まるでゼロです)

 SF作家の山本弘氏は、著書の中で

「結局、本の内容を良いものにできるかどうかは、2点に集約される。書き手の技量と、題材に対する愛だ。愛のない人間には、題材を深く突っ込んで正しく分析することなどできはしない」
(「こんなにヘンだぞ!『空想科学読本』」)
 と、書いています。これは別に本だけでなく、いろんなジャンルに当てはまるのではないでしょうか?

 ブレッツァには、「KOF」に対する「愛」はあるでしょう。しかし、2001及び2002のパクリの酷さを見る限り、ちょっと「愛」の向く方向が違うのではないかと思います。
 ノナ氏はまったく逆。確かに絵はお上手です。しかし、その対象になる物への「愛」が感じられません。「愛」がないから、「ロバートはマフィアの息子」と発言したり、簡単にクラークを金平糖アゴにできたりと、キャラ本来の性質・性格を無視できるのでしょう。
 残念ながら、絵柄が大幅に変わった「2002」のキャライラストに対するノナ氏の分析・感想は、私はまだ未見ですが、少なくとも2001の時よりも「愛」に溢れていることを、1ファンとして望まずにはいられません。

 ノナ氏もそうですけど、FALCOON氏といい、同人的な感覚でしか仕事ができない人が商業用のゲームを作ると、ロクなものが出来ませんね。

(参照:『KOF2001 - FIGHTING OBSESSION』(エンターブレイン刊))

(2005.04.18)