クレイジータクシー

2001年1月27日発売/セガ/90点

 本作は、タクシー運転手になって、様々なお客様を様々な条件下で目的地にお送りする、レースアクション。
 最近はタクシー業界も、法律も仕事環境も安定せず、業界全体が厳しい時代を迎えていますが、そんな冬の時代だからこそサービス業として、お客様第一でありたいものです。

 お客様の都合に合わせて、海の中を爆走。

 お客様は神様であられるからには、その都合をまず優先するのは当然です。お客様がどこで待っておられようと、即座に駆けつけ、お客様のために目的地まで最速・最短時間で向かうのは、タクシードライバーとしては基本中の基本。

 そのお客様第一主義を阻害するものは、法律であろうと対向車であろうと、すべて邪魔者です。
 お客様のためにこれらを徹底的に取り除くことは、サービス業者としての当然の職務なれば、お覚悟あれ!!

 とにかく最大にして究極の目的は「お客様を最も速く、確実に目的地までお送りすること」。この「1+1=2」よりも簡明で当然な目的を達成するためには、常に最高スピードで車を走らせなければならないのは当たり前。
 だから本作のタクシーには「スピードメーター」なんて女々しいものは存在しません。ギアチェンジなんか、前進とバックしかありません。アクセルを踏め踏むだけスピードが上がる、実にわかりやすい仕様。
 とにかくスピードを出せ! 必死に出せ! 停車するくらいなら死ね! と言わんばかりの気合です。感情を持っている人間が相手のサービス業とは、本来はこのように厳しい職種なのです。

 さて、お客様を目的地にお送りするためには、意外と多くの障害が存在します。それは、信号であったり、対向車であったり、歩行者であったり、人工物であったり、自然物であったり、要するにこの世に存在する何もかもが障害なわけです。
 主人公であるタクシードライバーは、なによりもお客様のためにこれらの障害物を破壊し、無視し、時には利用しつつ、目的地へと向かいます。
「顧客満足度」という正義遂行のためには、どこを走ろうとOKです。自分こそが正義です。一方通行を逆走しようが、公園を暴走しようが、街中でドリフトを極めようが、すべてお客様のためです。
 こうしてお客様にご満足いただけると、多額のチップをいただけます。サービス業を志して本当によかったと思える瞬間です。お客様の笑顔は、社の宝なのです。
 ですが、もしもご満足いただけなかった場合、お客様は、そこがどこであろうが、車から飛び降りてしまいます。猛スピードで疾走中だろうが、海の中を走っていようが、関係ありません。それは、サービス業者としては、耐え難い瞬間です。
 自分のどこが悪かったかをよく反省し、もっとスピードが出せるように、腕を磨きましょう。

 ……と、なんだかめちゃくちゃ書きましたが、すべて事実です。
 車の操作は実に簡単で、ジャンプ、ダッシュ、バックダッシュ、ドリフトなど、慣れれば豪快なアクションを簡単にすることができ、もともとのスピード感もあわせて、凄まじい爽快感です。
 ノリノリのBGMに合わせて、どんな場所でも、どんなようにでも走ることができる、最も簡単なストレス発散法であり、しかも、サービス業者としてお客様のために切磋琢磨する、就労哲学の基本まで学べてしまう、一本で二度美味しいゲームです。
 ゲームよりもよほどクレイジーな事件が続出するこんな時代だからこそ、本作のような作品を、鏡として、同時に反面教師として、生活に役立てていきたいものです。

(2009.02.01)