シャイニング・ウィンド

2007年5月17日発売/セガ/75点

 とりあえず乳

 メガドライブで1991年に登場した「シャイニング&ザ・ダクネス」以降続く「シャイニング」シリーズの最新作。2004年の「シャイニング・ティアーズ」と本作「ウィンド」とは世界観を共有しており、その名もズバリの「シャイニング・ティアーズ・クロス・ウィンド」というクロスオーバーのアニメシリーズも存在します。このアニメがなかなかよくできており、このクオリティができるならなんでウィンドのアニメは(以下削除)。

 本作のジャンルはRPGになっていますが、どちらかといえばキャラゲーとしての傾向の方が強いかも。Tony氏の描くキャライラが素晴らしく、思わずジャケット買いしちゃった人もいるんじゃないでしょうか?
 後述する心剣システムもそうですが、オープニングムービーも、個人的に好きな「テイルズ」シリーズに劣らず、アニメも歌も大変良いです。PS2だしアニメが良いのは当然じゃん?と思われる方もいるかもしれませんが、なかなかどうして、良いアニメムービーというのも、思ったほど多くはないのです。

 最後は絵柄の好みで決まっちゃうかな、とも思いますが、少なくとも私的にはTony氏のセンスはバックスクリーンへの大ホームラン(オヤジくさい表現)。ジャケ買いでも天は俺を見放さぬ!とかキャラが魅力的ならそれだけで御飯三倍はいけるゼ!という自信のある人は、この時点での購入もOKです。
 個人的にはキャラのネーミングセンスに惹かれましたね。獣人の国セイランに、三国志が元ネタの人が何人かいるのが嬉しいのですが、日本から本作の舞台であるリーベリアに召喚されたキャラの名前が無理やり外国人風の名前になってるのは笑った。
 主人公がキリヤ・カイト⇒霧谷魁斗、キリヤの幼馴染がシーナ・カノン⇒椎名夏音。キリヤとシーナの友人で、ライバルと登場するトライハルトに至っては「虎井春人」と、苗字+名前の合体技(しかも「虎井」は母方の姓という小技つき。本名は西園寺春人)。他にもヒルダレイアやクレハというキャラがいますが、元の名前がわかるかな?
 これらのキャラがけっこういい味出してまして、シーナの姉さんぶりがちょっと鼻につきましたが、主人公キリヤには嫌味がなく、トライハルトが敵国に力を貸しているキリヤのことをあれ・・はおれのだ」少々ヤバげなセリフを吐いたりと、わりと気が抜けません。
 ちなみにクレハは私のです。あげません。

 システム面で一番面白いのが「心剣」。
 心剣士(ソウルブレイダー)であるキリヤは、パートナーとの心象イベント(アドベンチャー形式)を経て心の扉を開いてもらい、その精神と信頼の証である「心剣」を成長させていきます。この心剣、最初にパートナーの胸から“生えてきた”ものをキリヤが引っこ抜くのですが、男性パートナーはともかく、女性パートナーのアニメはそこはかとなくエロティック。このへんが、「シャイニング」シリーズ唯一の12禁たる所以か?
 しかし、心の扉を開いてパートナーとの絆を深めていくこのシステム、どこかで見たような……。

 あ、「アルトネリコ」のコスモスフィアだ。

 似ているとは言いましたが、イベントの尺でもしょーもなさでもアルトネリコのが上。短いイベントが各キャラ五本しかなく、全体的なボリュームはありませんが、出来はウィンドのほうがやや上かと思います。
 仲間の心剣を手にするたびに、
「海のように広くて深い。これが王たる者の心か。これが、背負った覚悟の大きさか!」
「運命の波に立ち向かう龍のように、猛々しい想いが泉のように湧き出してくる!」

 と、石田彰ボイスで味皇様のようなコメントを吐くキリヤに、思わず注目です。

 さて、これだけキャラについて書いといてなんなんですが、RPGのキモはやはりストーリーと戦闘。
 ……なんですが、ぶっちゃけこの二点についてはあまり書くことがありません。キャラクター同様世界観もかなり魅力的なんですが、その事情というか状況を、全部キャラのセリフで言わせようとするんですよ。その結果どういうことになるかというと、あふれかえる説明口調。かーなーりー不自然。
 また、けっこうブッタ切りかつ唐突にストーリーが展開するのですが、主人公たちみんな、やたらと物分りがいいのね。プレイヤーが納得する前に超光速でキャラが納得してどんどん進んでしまうので、場合によってはストーリーに置いていかれることも。
 このへん、面白いんだけど言いたいことはいくらでもあるのですが、もう少し細かく描写できれば、キャラの魅力が更に上がったかもしれないのに、残念ですね。
 マルチエンディングで、それぞれに納得出来るオチがついているのがせめてもの救い。

 かなり偏った書き方になってしまいましたが、本作はかなりキャラゲー要素の濃いRPGです。
 シナリオ等にはあまり期待せず、魅力的なキャラクターで即席恋愛アドベンチャー的な楽しみ方をできる人にはお勧め。そうでない人には、それなりに。
 大量の敵が出てくる後半戦のバトルは、画面がごちゃごちゃで油断していたらなにがなんだが解らなくなりますが、そこらと海龍王の遺跡あたりに気をつけていれば、戦闘で苦労することもないと思います。
 購入するときは、スパッと目的を割り切りましょう。

(2008.01.14)