アイデア・ファクトリー(以下「IF」)創設10周年記念タイトルという重い宿命と、同社の代表作品である「スペクトラルフォース」シリーズのストーリーをギュッと凝縮する、という壮大な野望の下に生まれた作品。
それだけに、本作は随所に力が入ってます。
まず、女の子のグラフィックが可愛い!
中村龍徳の描く女の子の絶妙なエロかっこよさが最高です。
そして、…………女の子が可愛い!
さらに! さらに……うーん、うーん……。
……すまん、これ以上は無理だった……。
正直に書きます。その社名の通り、アイデアは良かったんだ。
デキとしては、すばらしくIFらしさが出てるんですよ。
いかにもIFらしく、シナリオ、キャラクター、システム、声優と、なにもかもがすばらしく中途半端。
まずキャラ。
中村龍徳のキャライラストは素晴らしいんですが、それをゲームに降臨させると、あら不思議。
えーと……集団とっちゃん坊や?
顔はリアル風で、身体は2.5頭身〜3頭身のパロディ風味というこのポリゴンは、「幻想水滸伝3」と「バーチャファイターキッズ」を足して「シンプソンズ」で叩き割ったような程よい不気味さで、どういうファンのどこを掴もうとしたんですか?
2005年といえば、「デビルメイクライ3」「バイオハザード4」(カプコン)、「ランブルローズ」(コナミ)、「サクラ大戦3」(セガ/PS2版)、「キングダムハーツ2」(スクウェア・エニックス)、「真・三國無双4」(コーエー)、「ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド」(エレクトロニック・アーツ)など、各社ともすでに、充分に等身大でキレイなグラフィックをPS2で実現してた時期で、アクションとRPGというジャンルの壁があるにしても、「2年くらい遅れてるかな」というのが正直な感想。
あと、ちったあイラストに似せる努力をしろよ。
この、中村イズムを自ら放り出したようなポリゴンが、これまた絶妙に下手な声で喋ります。
宮村優子演じるヒロインのヒロはさすがにまともに聞けますが、あとの配役、とくに男性キャラの声優はほぼ全滅。妙にカッコつけた棒読みが多く、必殺技のカットインとか見てたら、なんかヘンな笑いがこみ上げてきます。
そして、シナリオ。
よく言えば、シナリオライターが自分の限界を超えて壮大なテーマに挑戦した野心作。
悪く言えば、無知な子供がカッコつけて書いた三文芝居。
必死にキャラに恰好いいこと言わせようとしてるんだけど、とにかく「薄い」し、演技の棒読みもあって「ちゃちい」。
美味しく調理できそうな材料(設定)はたくさんあるのに、本当にもったいないことするなあ、と、プレイしながらほぼ最初から最後まで思ってましたね。
また、「シリーズの複数の作品の流れを凝縮する」という制限があるとはいえ、いくらなんでも省略しすぎ。
ほかのシリーズをやらずにコレだけをプレイするのが、そもそもの間違いなのかもしれませんが、大陸の覇権をかけた壮大な戦争をやらかしているはずなのに、サラッと一言二言の解説で状況を流すだけで勢力地図すらなく、戦闘が起こっても、大陸のどこで戦っているのかすらわからん有様。
そんな状況で
「新生魔王軍(プレイヤーの勢力)は大陸の三分の二を制圧した」
とか
「ムロマチ軍は魔王の勢力を城に追いつめた」
とか言われても、「え!? いつのまに!?」と逆にこっち(プレイヤー)が驚きます。
最後に、戦闘。
ボタンのタメ押しで、三段階に攻撃力を調整できるのは面白かったけど、よかったのはそこだけ。
キャラのモーションがいちいち長く、しかもスキップできない(クソゲーではありがちですが)ため、物凄く時間がかかります。
し かも、何もしていない状態では、敵の動きが異様に遅いため、テンポの悪さに拍車がかかることに。
「□ボタンを押している間は、敵が速く動くぞ!」。
最初から速く動くように作れよ! ボタンを押してもらわないと速く動けないようなボンクラどもが魔王軍に反逆しようなんて、百年早いわ!
更に、
本作の価値を見出すなら、「スペクトラルフォースに始まり、スペクトラルフォースに終わる」という、シリーズ間のシナリオの補完。
クリアしたところで、素人のカラオケそのもののエンディングテーマを聞かされるスタッフロールに、ガクッとくること請け合い。なぜ宮村優子に歌わせない?
2005年の発売ですが、グラフィックで2年、システムで5年、シナリオでは10年、他社に比べて遅れてます。この集大成版をプレイして「じゃあ他のスペクトラルフォースのシリーズにも手を出してみるか!」とは、ちょっと思いません。
価格が500円以上なら、手を出さないことをお奨めします。
これだけではないんだけど、アイデア・ファクトリー……。大きなお世話ですが、そろそろゲーム製作は諦めて、その社名の通り、他社にアイデアを提供する事業に特化したら?
(2010.10.30)