ステラデウス

2004年10月28日発売/アトラス/27点

 第二次世界大戦で戦争における「大艦巨砲主義」が完全否定されてから早年。ゲーム業界でも、早くから大鑑巨砲主義は失敗が多く、どちらかといえば大物・有名人ばかりをスタッフに起用したゲームは、往々にして期待ばかりが膨らんで、発売後に膨らみきった期待が音を立てて割れる確率の高いこと。
「あの有名ミュージシャンが音楽を担当している!」「あの大物イラストレーターがキャラデザを担当!」とはいえ、それがゲームそのものの面白さに直結するわけではないと、買ったあとで気づくんだよ、いつもよう! この野郎!(←なにか苦い記憶があるらしい)

 本作は、発売前から水野良(「ロードス島戦記」「ギャラクシーエンジェル」等)、副島成記(「女神異聞録ペルソナ」「真・女神転生3」等)、岩田匡治・崎元仁(「伝説のオウガバトル」「ファイナルファンタジータクティクス」等)、緒方貴宏(「真・女神転生NINE」「魔剣シャオ」等)など、その製作スタッフの豪華さが注目され、2004年秋の大作として期待されたソフトでした。
 なるほど、確かに大御所や実力派をそろえて完全な布陣のように見えます。
 特に「ロードス島戦記」に影響を受けて小説を書き始め、「ソードワールド」でテーブルトークRPGに親しんだ身といたしましては、やはり水野良の存在を無視するわけには参りません。
 ここまではよかったんだ、ここまでは。続く開発担当の名前を見逃すとえらい目にあいますが、そこにこそ最大の罠が潜んでいました。

 なんでこのメンバーでPINEGROWなんだよ! もっと他に頼むとこあっただろうに。
 PINEGROWの名前を知らなくても、「HOSHIGAMI(星神) -沈みゆく蒼き大地-」(PS)を覚えている人がいるかもしれません。あれを作った「MAXFIVE」が現在の「PINEGROW」です。
 ん? 本作のタイトルは「ステラデウス」。「ステラ」はイタリア語の「恒星」。「デウス(ゼウス)」は同じく「神」のことです。「恒星の神」……「星神」……あああ!?

 まあ何と言いますか、ふたを開けてみれば「ああ、やっぱり」という印象。明らかに、製作に携わったビッグネームの特徴が相殺しあってます。ぶっちゃけ、かなり「微妙」。
 一言で言い表すなら、「大切なネジが二本ほど抜けちゃったタクティクスオウガ」。序盤のノリなんかは特に「まんま」のような気も。

「HOSHIGAMI」もそうだったんだけど、「見てくれ」はいいんだよな、「見てくれ」は。この辺が騙される人が多い原因の一つでもあるんですが、それに内容がついていってません。
 戦闘を行う「マップ」と、アイテムの購入やパーティーの編成を行う「フィールド」の二つのパートで成り立っているこのゲーム。とにかく、色々と「面倒くさい」。特にシミュレーションRPGのキモである戦闘が、色々な意味で残念です。
 まず、なによりも戦闘直前の編成で、ユニットの装備やスキルの付け替えができないのはシミュレーションRPGとしてはどうなんでしょうか?
 移動するには「AP」というポイントがいるんですが、APと移動は別にしたほうが良かったんじゃないかなぁ。先に近づいたモン負け。クラスチェンジしても殆ど意味がなく、展開が進むにつれて使えなくなります。似たようなシステムの「東京魔人学園」みたいな爽快感はまるでありません。
 ストーリーが微妙な割りに戦闘バランスがわりときつく、ストーリーだけを追ってたら借金の利子みたいな速度でどんどん強くなっていく敵に撲殺。ストーリー以外のところでクエストがあったりアイテム合成が出来たりするんですが、そのクエストでレベルを上げないと二進も三進もいかなくなります。 ストーリーを早く進めたい人には徹底的に不向き。
 あと、戦闘はこういうゲームのお約束か、必殺技の演出が飛ばせません。金かけている割には演出が微妙なできなのが、更に物悲しい。おかげで、戦闘が淡々とした作業に変わるのが早い印象。特に最後の章辺りまで来ると、もう戦闘が長く感じて仕方ありません。

 戦闘以外でも、カッコいい人物が多く声優の演技がぴたりはまってるわりに印象が薄いキャラや、音楽も印象深くていいのに何故か戦闘のときのボイスだけが篭り過ぎで割れまくり、と、あらゆる意味で中途半端。
 82センチのわりに震えまくるリーンのバストが数少ない見所かも。
 
 兎にも角にも、「微妙」としかいえません。あるいは「期待のし過ぎ」からくるガックリ感。
 面白くないわけじゃないけど、面白いとも言えない。そんなんとも言えない空気は、実にPINEGROWらしいところ。
 そんな「らしさ」、取っ払っちまえ。

(2008.01.14)