四八(仮)

2007年11月22日発売/バンプレスト/-6000万点(主観)/4.8×10-999999999(客観)

 あるとき、あなたのもとに一本の電話がかかってきます。
「あるゲームの体験版を送らせてほしいので、住所と名前を教えてほしい……」
 そして主人公の元に届いたゲーム「四八(仮)」。
 このゲームをプレイし始めたあなたの周囲で、奇怪な現象が起こり始める……。

 本作はタイトルに「(仮)」とついていますが、体験版とかではなく、しっかりした製品版です。製品版なんです、これでも。
 日本全国・四十七都道府県に伝わる「恐怖の都市伝説」を紹介するミステリーアドベンチャーを語った観光案内ソフトです。
 いや、冗談でもなんでもなく、収録された各都道府県の都市伝説のうち、半分以上がただの観光案内か、その県には無関係のエピソードか、さもなくば意味不明なんですよ。

 例えば、私(=KEEF)の出身地である広島県のエピソードは「ヒバゴン」。広島県北部の比婆郡全域・及び庄原市付近(今は比婆郡も庄原市)で1970年代にさかんに目撃されたUMA、いわば広島版ビッグフットで、重松清の小説「いとしのヒナゴン」のモデルにもなった、30代以上の広島県人ならたぶん誰でも知っている有名モンスターです。
 なるほど、広島を舞台に扱うには魅力的ですが、この「ヒバゴン」、実はただ歩いてる目撃情報があるだけで、どこかの牛を獲って食ったとか、地元の人に殴りかかったとか、そんな勇ましい話はまったく無いんですよね。
 これを都市伝説として扱うには、ある程度の脚色が必要なんですが、さてどのようなアレンジがされているのか?

 地元の女子高生・富沢さんが持ってきた写真から妙な猿(ヒバゴン?)が飛び出して終わり。

 何が書いてあるか分からないと思いますが、プレイした私も何が起こったのか分かりませんでした。しかし、何度見ても上の一行で終わり。
 なんと、広島の都市伝説は一瞬で終わる「一発ネタ」

 え〜〜〜〜〜……。

 しかも、写真から飛び出してくるのは猿だけではないようです(ランダムで変わる?)。こうなるともう、広島である意味さえありません。
 さすがに、ここまで極端な一発ネタは広島だけですが(なんか広島に恨みでもあるのか、飯島さん?)、山口県なんかもステキです。それなりに長いテキストで恐怖を煽りますが、言ってることを要約すると平家蟹の解説です。

 ミステリーでも都市伝説でもねえだろコレ。

 そのほかにも、

 などなど、大半のシナリオがこんな感覚で、プレイしてて「?」と首を傾げてしまうものが凄く多いです。別に現地に取材に行かなくても書けるような(しかも小学生でも書けるような)薄っぺらいシナリオばっかり。しかも「話で怖がらせる」というよりは「一発ネタで驚かせよう」という話ばっかりで、呆れるというか、失笑。
 一応、登場人物はみんな実写なんで、ある意味でびっくりするといえばびっくりするんだけど……。
 しかも、珍しくミステリーっぽくなってるものもあると思えば、地元で怒られてしまいそうな扱い方(特に福島県。訴えられるぞ、あれ)。

(ちなみに、宮崎県のストーリーで「鹿児島県にある」と紹介される神社は、実際は福岡県にあります。もう何を信用していいのかすらわかりません)

 そして、バックログ機能もオートモード機能も存在しない地獄のような環境(スキップ機能は一応あるが、無いのも同然なほど出来が悪い)で、全都道府県のシナリオを読破すると、四八番目のミステリー「あなたシナリオ」(全12話)が始まります。
 そこでの主人公の設定がまた快感です。
「あなた」は「四八(仮)」というゲームにハマリ、廃人寸前になります。

 ねえよ! 48億%ねえよ!

 しかもこの「あなたシナリオ」、本作プロデューサーの飯島多紀哉氏が自ら出演し、このクソゲー(あ、言っちゃった)をやたらと自画自賛したうえに、「僕も身に覚えの無い誹謗中傷を受けている」って、あんたねえ。
 やたらと面倒な「契力(封印された各県の話の封印をとくのに必要)」や話ごとの登場人物の関連、アドベンチャーなら最低限搭載されてないといけないはずなのに搭載されてないスキップなどのシステム、お約束のように搭載された擁護不可能なバグ。これを名作と言えるのはあなただけだ(笑)。
(ただし、後の同人誌では、氏自ら本作を「クソゲー」と認めている……が、原因は人のせいにしている)

 本作を作った飯島多紀哉氏(旧名・飯島健男)は、PC98などで「ラストハルマゲドン」や「BURAI」などをヒットさせた名クリエイターでした。
 が、家庭用に戦場を移してからなんとなーくおかしくなり始め、(「学校であった怖い話」のヒットはあったが)自分の会社パンドラボックスから発売した「1980円の超大作」こと「パンドラMAXシリーズ」の大失敗で会社を潰して以降は、一時期業界から退いて、なぜかインドネシアで翻訳業をされていたようです。
(自社作品のイベントを開催しようとしたとき、出演者の声優の事務所からギャラを請求されて「金の亡者め!」と見当違いの批判をしたなど、香ばしいエピソードが山のようにあるようです)
 その後、2007年に名義を変更して表舞台に復活して以降、「ONI零 戦国風雲百花繚乱」「Apathy 鳴神学園都市伝説探偵曲」といったクソゲーを立て続けに連発し、ついにこの究極最終人類絶滅決戦兵器「四八(仮)」を世に送り出してしまいます。
 かつての栄光も今は昔。どうしてこうなっちゃったんでしょう?
(現在は同人活動が中心で、ヒット作「学校であった怖い話」の続編を作って成功している模様)

(2011.03.31)