ザ・登山RPG

2002年3月28日発売/D3パブリッシャー/33点

「君は知っているだろうか…
 まだ誰も制覇したことのない山が存在していることを…
 各国の有名登山家をことごとく蹴散らしたその山は、いまや魔物と呼ばれ恐れられている。あらたな挑戦者ももはや現れようとしない。
 現存する登山家で、この状況を打破できるのは、もう君しかいない。
 世界登山家協会より依頼する。
 危険な山を征服し、世界中の登山家の名誉を取り戻してほしい。
 補助隊員が必要であれば、世界登山家協会に加入している者を使用してかまわない。ただし、こちらで用意した資金でまかなってくれ。
 君の活躍を期待している。
 〜以上〜  世界登山家協会より」

 このシナリオ書いた人、絶対まともに山登りしたことないだろ!と、思いっきりツッコミを入れたくなりますが、なにはともあれ「SIMPLE 1500シリーズ Vol.92 ザ・登山RPG」です。

 ゲームの目的は次々と現れる山々の難関を突破しながら、最終的に世界六箇所の山を制覇すること。富士山とかアンデスとかロッキーとか、どこもかしこも制覇されたことのある有名な山々なので、OPの「まだ誰も制覇したことのない山」が結局どこなのか、最後まで解りませんけれども。

 さて、登山というとシミュレーションあたりを想像してしまいがちですが、本作は「RPG」です。
 登山の敵としてよく例に出されるのが「高山病」「雪崩」「凍傷」などですが、本作では本当にそういう名前の敵と戦いながら頂上を目指します。
 いや、だからですね、「高山病」とか「雪崩」とか「凍傷」とか言う名前のモンスターが出てくるんですって、ホントに。

 協会が用意した補助隊員を振り分けて複数のパーティーを作り、文字通りの意味でお山様に挑戦していきます。えーと、これは山野井泰史「垂直の記憶―岩と雪の7章」のゲーム化作品でしょうか?
 補助隊員は「アタッカー」「クライマー」「シェルパ」「ナース」の四種類で、それぞれに特殊技能があります。パーティーは自由に編成できるので、偏った編成も可能ですが、全種類入れないとテントも張れない回復も出来ない特攻野郎Aチームの一丁上がり。
 かなり愉快な必殺技を繰り出しながらも「高山病」や「守り神」(山の守り神を倒したらいかんだろう……)に次々と倒されていく補助隊員を見ていると、どうしてもジェニファー・ジョーダン「K2 非情の頂 -5人の女性サミッターの生と死-」が思い出されて、涙が止まりません。

 本作の戦闘は、基本的に補助隊員のパーティー(複数)に指示を出して戦わせ、やばそうになったら撤退→別のパーティーで上を目指す、というもの(しかも戦闘自体はオート)。戦闘のバランスは少々きついものの、戦闘中に逃げ出してもその直前に「テント」を張った場所まで撤退するだけなので、こまめに「テント」を張っていけば、あまり苦労することはありません(こまめすぎると逆に苦労するけど)。
 ただし、ステージのボス戦は総力戦です。各ステージには、「山頂」という名のボスが待ち構えています。ええ、「山頂」です。
 彼ら(?)山頂を倒すことで、文字通りの意味で「山を征服する」ことになるのですが、流石に山頂は一筋縄ではいきません。なによりも、異常なほど多いHPが一番の驚異。
 いやぁ、富士山がこんな凶暴な生物(?)だったなんて、どんな本にも書いてないだろうなぁ。

 とにもかくにも、典型的な「真面目に製作されたバカゲー」です。難易度はかなり高いですが、これから世界の頂上に挑戦するという人は、前哨戦としてこれに挑戦すると必ず役に立つ、ということは間違っても無いです。

(2006.05.22)