シスター・プリンセス

2001年3月8日発売/メディアワークス/79点

 さて、本作「シスタープリンセス」は、「電撃G'sマガジン」の読者コーナーから誕生し、その後様々なメディアで登場してから、現在まで続く「妹キャラ萌えブーム」の一大潮流を巻き起こした、ある意味金字塔です。
 もはや語ることでもないですが、本作の最大の特徴は、「あなたには12人の妹がいます」「12人の妹は、みんな兄であるあなたが大好きです」という、いやがうえにも、というか、ほぼ強制的に萌えの世界に引きずり込む、すべての物理法則から開放されたが如き強烈な設定。
 特にこのPS版は、その四番バッター、切り札として、全国の「お兄ちゃん」たちをいろんな意味で萌え上がらせた、罪深きソフトです。

 まずオープニング。

「9人の妹が3人増えて12人になりました」

 いきなりこれです。どんな電波系のゲームでも、これほどインパクトのあるテキストは珍しいでしょう。
 当然ですが、このメッセージを受け入れられるかどうかが、本作を楽しめるかどうかの踏み絵です。

 登場する妹達は、

兄の呼び方特徴
可憐「お兄ちゃん」一番普通?
花穂「お兄ちゃま」兄を応援するチアリーダー
「アニィ」スポーツ大好きの元気系
咲耶「お兄様」フェロモンNo.1
雛子「おにいたま」一番年下。サビシイサビシイ病
鞠絵「兄上様」病弱で内気、遠慮深い
白雪「にいさま」味見と称して兄を実験に使う将来の大シェフ?
鈴凛「アニキ」化学系少女。兄は財布
千影「兄くん」本物の「魔力」を持つ正真正銘のオカルト娘
春歌「兄君さま」精一杯兄を守る暴走ボディガード
四葉「兄チャマ」イギリス生まれの兄ストーカー
亞里亞「兄や」フランス生まれの泣き虫っ子

 これら、キャラが立ちに立ちまくった妹達が集団で襲いかかってくるのですから(違う)、世の男性プレイヤーの多くが陥落してしまうのも、また仕方が無かろうというもの。
 なにせ、ゲーム中に飛び交う「」の数は、これまでに発売された全ゲームソフトに登場するの数をしのぐ、という噂まであるくらいです。

 長年、同居している異性が、徐々に性的な欲求の対象から外れていくことを、心理学の用語で「ウェスターマーク効果」と言いますが、妹キャラを攻略対象にする恋愛ゲームでは、実はこれが最も難敵。
 実際に妹を持つ男性からは、「実の妹には萌えねぇよ」という意見もしばしば聞かれますが、その原因が、この「ウェスターマーク効果」です。
 では、それを解決するに、最も手っ取り早い方法はなにか?
 話は簡単。主人公と妹を、別居させてしまえばいいのです。
 本作の妹たちも、主人公とは別居しており、もう会いたくて会いたくて仕方が無いご様子。
(この、離れ離れになっていた肉親に対して恋愛感情(性的魅力)に近いものを抱いてしまうことを、「ジェネティック・セクシャル・アトラクション」と呼び、「ウェスターマーク効果」の「逆刷り込み」とされています。恋愛SLGでも、これを効果的に用いた名作があります)

 なにせ、妹達とは別居しているはずなのに、妹が出てこないシーンが殆どないという、超妹フィーバーぶりです。
 妹達の好感度はメールを読むだけで上がっていくので、難しいことは考えなくても言いという低い難易度が、受け入れられたのかもしれません(これはシステム的には諸刃の剣で、狙いの妹がいても、他の妹のメールを読むだけでその妹も好感度が上がってしまうため、気付けば他の妹とエンディングを迎えている、ということも)。

 内容自体は、イベントの数こそ多いものの、テキストのレベルは正直、アドベンチャーとしては低いです。また、その余りの甘ったるさは、慣れていないと、二時間くらいで舌を噛み切りたくなってきます。
 しかしそんなことがどうでもいいくらい奇抜すぎる設定が、プレイヤーを萌えの深みに押し流してくれます。こんなパワーのある設定も、珍しいです(笑)。

 私はその余りの甘ったるさに、2回クリアした時点でリタイアしてしまいましたが、こういうゲームは嫌いじゃありません。
「義理の兄妹エンド」「本当の兄妹エンド」という二通りのエンディングがあるので、インセストタブーが苦手な人もそうでない人も安心です(?)。

(2006.05.24)