ぽっちゃりプリンセス

2009年12月25日発売/SCE/73点

 敵味方16人ずつのグループに分かれ、六つの職業を切り替えながらお互いの国のプリンセスを奪還しあう、ほぼオンライン専用のストラテジー。
 基本的にはシンプルな陣地の奪い合いゲームなんだけど、そこに、


「ぽっちゃり」

 という要素を突っ込んでしまったが故に、色々とブッ壊れてしまった奇ゲー。

 何が凄いってまずその設定。両陣営とも、最初に相手のプリンセスを誘拐した状態ではじまるのだが、敵にプリンセスを奪還されないためにどうするかというと、プリンセスにどんどん甘いものを食べさせて、太らせて運べないようにしてしまえ!
 あはは、確かに重いものは運びにくいよね。この企画出したやつ出て来い(笑)。
 ダイエットブームに逆行するにもほどがあります。
 また、キャラは可愛く描かれているものの、その可愛いキャラが、攻撃されたときには洋ゲーもビックリなほど大量に血を撒き散らすサマは、ユーモラスというかシュールというか、思わず乾いた笑いで見てしまいます。
(流血表現をOFFにすると、血のかわりにお菓子や玩具をばら撒く。なんとなく、万引き犯が射殺されたような風景で、それはそれでシュール)

 こんなシュールなゲームですが、システム面では、意外と骨太。
 村人、木こり、戦士、魔法使い、僧侶、レンジャーという六つの職業にはそれぞれしっかりした特徴があります。「特別に強い」という職業が無く、しかもほぼ自由に職業が切り替えられるので、初心者なら初心者なりに、上級者なら上級者なりに活躍できるシステムは、シンプルながら奥深い。
 また、支城の占拠や資材の調達など、戦闘以外にもやらなきゃいけないことは意外と多い。

 難点をあげれば、やっぱりまず気になるのは、スコアアップの基準がかなり謎なところ。
 採掘や木材の伐採のスコアの比率が凄く高く、木こりで木を切り続けるだけでも高得点がマークされる(そして自分の階級が上がる)のは、やっぱりやりこんだ人には納得がいかないのでは。
 そして、タイトルにもなっている「ぽっちゃり」と太らせたはずのプリンセスは、肉体の構造が常人と違うのか、物凄いスピードで痩せていくので、無理に太らせる必要を感じない。
 また、死んだキャラは自軍の城内で復活するんだけど、それゆえに対戦は防御側が圧倒的に有利。防御側は死んでも死んでも守っている城からどんどん復活して出てくるのに、攻めている側は死んでしまったら、遠くの自分の城に飛ばされて復活。
 マップが広大なこともあってか、あるていど防御側に経験があると、攻め込んでプリンセスを奪うのが非常に困難になり、試合はこう着状態になりがち。
 そのため、試合そのものが凄まじく長い。一試合平気で二〜三時間かかるので、軽く手をつけるには勇気が要るし、負けたら負けたでチームから人が抜け、次からさらに勝ちにくくなる(人数が足りないぶんはCPU操作になるんだけど、基本的にAIは賢くない)。
 このあたりのバランスの悪さはいかんともしがたい。

 設定が奇抜で、操作は簡単、職業間のバランスもよく取られているなどの良い点もあるけど、公式サイトがゲームを知る上で本当になんの役にも立たず(ここまで役に立たないオフィシャルサイトというのも凄いが)、ゲーム中での解説もほとんど無い、戦力差に対する措置が何も無いなどの欠点もあり、良くも悪くも1500円という価格なりの内容。
 一度浸かってしまえば価格以上には確実に遊べますが、人は選びます。そこのとこはご理解しておいてください。

(2010.11.05)