炎の料理人 クッキングファイター好

1998年5月21日発売/日本一ソフトウェア/84点

「料理人」です。しかも、「炎」で「ファイター」です。このタイトルからまさか「大使閣下の料理人」とか「美味しんぼ」のような、静かな本格的料理モノを想像する人はいないと思います(あったら面白いとも思いますが)。
 漫画で言うところの料理モノのいうと、前述のような高級感あふれる本格モノか、「ミスター味っ子」のようなアクション漫画のノリを持ち込んだライトなもの、もしくは「OH! MY コンブ」とか「グルマンくん」みたいな作家生活の黒歴史になりそうなものまで様々ですが、その中でも本作は、一人の少年料理人の熱い料理対決人生を描く、「ミスター味っ子」のノリを100倍に濃縮して「暁!男塾」で叩き割ったような、ネジが外れまくった一大アクション巨編です。
 いや、冗談抜きにしても、本作に登場する数々の台詞を本気で読み上げると、血の温度が2〜3度上がるどころか、ヘタすりゃ血管切れます。

 もちろん「料理ゲーム」ですから、様々な料理で様々な敵と対決していくわけですが、ここに「炎」で「ファイター」という、詰め込まなくてもいい要素を詰め込んでしまったために、無駄にアクションがはちきれてます。
 料理対決ですからまずは材料を集めなければ何も始まらないのですが、いきなり生きた動物(食材)を撲殺ハンティング。(ここらへんがファイター)
 自分がハンティングしているということは、当然、対戦相手も食材をハンティングしているわけですが、なんでも「ファイター」なこのゲーム、ここで当たり前のように対戦相手もハンティングできます。撲殺して食材や料理を奪え!

 邪道喰いはやめろぉおぉッ!
 どうでもいいけど、ラーメン二刀流も充分邪道だよね。

 ストーリーは「母の仇を追い求め数々の敵と戦いながら成長を重ねる主人公が、最後に実の父親と対決」という、鉄板と言えば鉄板な展開。味将軍ならぬ味魔王と修羅のごとき戦いを繰り返していくのですが、その「熱さ」「暑さ」が、もうアルファケンタウリ辺りまで突き抜けてます。

「ぬぉぉぉぉぉ!! これは正にっ!! 噴火寸前の活火山!! 旨いっ!! うまいぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「なっ、なんだっ!! あの男を中心に、自然界の力がみなぎっているぅぅぅぅぅっ!!」
「あああっ!!? 手、手が勝手に動くゥ!! この料理を食いたくてしかたがねぇ!!」
「何故だッ! 何故なんだっ、兄さぁぁぁぁぁぁんっ!!」
「こっ、これは二つの食材の見事な調和が二重奏となり、母に抱かれるかのような優しい味だぁぁッ!」
「当たり前! 当たり前! 当たり前!」
「お前が好きだ! お前が欲しい! クミィィィィィィンッ!!」
「脳みそがぁぁぁ〜、俺の脳みそがぁぁぁぁぁぁ〜」

 こんなのが全部で10話続きます。どうでもいいけど料理しろよお前ら。
 異常な高さの洗脳度の中で、いつの間にかコントローラーの十字キーを魂こめてブン回している自分がいます。これだけ熱いゲームの主人公「好(ハオ)」の声優は檜山修之。やっぱりあんたか!(笑)

 ちなみに本作、その暑苦しさやキャラクターデザインは「機動武闘伝Gガンダム」に、ストーリー展開や声優のキャスティングは「ミスター味っ子」に強い影響を受けているようで、もともと熱い素材を組み合わせたら、予想以上に激しい化学反応で手に負えなくなったという症例の代表的な一本。
 相手が作った料理を奪えることもあってか、難易度は高くありません。ここは必死こいて攻略するのではなく、好やその周囲の人間たちの異常な熱さに身も心も焼かれながら、ブチキレ完全燃焼するのが正しい楽しみ方です。味影のイベントは特に必見です。
(セリフだけでなく、本作は画面上に表示されるテキストがすべて狂ってます

「人は生きるために食うのではない! 食うために生きるのだっ!」

(2008.01.14)