どこでもいっしょ

1999年7月22日発売/SCE/99.9点

 かつては朝の情報番組で「トロと旅する」というコーナーが作られ、現在はプレイステーションの情報コンテンツ「トロステーション」のナビゲーターを務めるなど、すっかりSCEの顔となったトロ。
 このタイトル自体は知らなくても、ピコピコと可愛い足音で歩く子猫のトロは知っている、という人も多いんじゃないでしょうか。
 本作は、画面内の自分の部屋に居ついたポケットピープル(ポケピ)たちに言葉を教えていき、そのポケピとの会話を楽しむという、一種のコミュニケーション・ツール。正直、「ゲーム」という枠組みで捉えていいかどうかは微妙ですが、この麻薬的な面白さ(というか、「楽しさ」)を知ってしまえば、そんな詮索なんてどうでもよくなってきます。

 とにかくもーなんつーか。画面の中で楽しそうに動き回るポケピが、可愛いったらありゃしません。
 本作に搭乗する「ポケピ」は、一番有名な子猫(?)の井上トロ、哲学ロボのR・鈴木、紅白出場を目指すウサギの三原ジュン、格闘蛙リッキー、そして犬の山本ピエールの5人(5匹)。
 言葉を入力してその意味をカテゴリを選択したり、「〜って場所?」「〜ってせつない?」など、会話していくことで、ポケピたちは言葉を覚えていきます。ポケピたちは、その言葉を用いてプレイヤーと会話していくのですが、もちろん教えていく内容によっては、ものすご嬉しそうな顔でドメスティック・バイオレンスを語るトロとか、哲学的にオバマ政権を批判する鈴木など、なかなかアナーキーな相棒の出来上がり。
 こればっかりは、プレイヤーの知識・性格・性癖がモロに出るので、自分の内面を映し鏡で見るような居心地の悪さを感じることもありますが、それ以上に(あるいはそれゆえに)ポケピたちに愛着が沸くので、心配はありません。
 なにより、画面の部屋の中でいろいろなリアクションをとるポケピたちを見てたら、逆にかまってやりたくて仕方なくなってきます。

 基本的にはPS本体ではなく、ポケットステーションでプレイするのが主な遊び方であるのも特徴。もちろん、ポケステによるプレイでも言葉を教えることも会話することも出来ますが、PS本体では出来ない「めいしこうかん」「しりとり」といった遊びはむしろ、こちらこそがコミュニケーション・ツールの正しい使い方なのではないかと思うほど。
「しりとり」は、ポケステの通信機能を利用して、同じく「ポケピ」を住まわせている他人と、それまでに教えた言葉で文字通り「しりとり」を遊べるというもの。無論、「ん」で終わる言葉をなるべく教えないほうが勝率が高いわけですが、むしろ、相手が「ポケピ」にどうのような言葉を教えているのかモロバレになってしまうのが、このモードの真骨頂。
 学校で女の子としりとりをしている最中に自分の「ポケピ」がエロい言葉を連発し、微妙な顔で女の子に後ずされた男の子の話など、この手の悲劇には枚挙に暇がありません。

 さて、相手をしてあげられない時間が増えてくると、寂しがったポケピたちは、最後にお別れの日記を残して去ってしまいます。ふとこのゲームのことを思い出し立ち上げてみたら、そこにはお別れの日記。もう、なんとも言えない寂寥感が満ち溢れてきて、「正直、すまんかった!」と謝りたくなってきます。
「ペット・ロス」ってホントにあるんだな〜と、胸に思い知ることに。それで、新しいポケピを登録したら、「(前のポケピ)に、ここを教えてもらったの」とか言いやがるもんだから、嬉しさと寂しさでまた泣いてしまうワケですよ!

 確かに、ロード時間が長いとか、細かい不満点はあります。しかし、「感情移入度」という面では、これに勝るタイトルはそうそうありません。ヘタすれば、ホントの話友達になってしまいます。
 PS2やPSPで続編がたくさんあるので、今でも充分に楽しめる本作。未プレイの方に、ぜひ楽しんでほしい一本です。

(2006.02.15)