暴れん坊天狗

1990年12月14日発売/メルダック/83点

 えー、クソゲー、バカゲー、トンデモゲーと、呼び方こそ様々ですが、内容とかシステムとか、どこか一部分でもトチ狂った部分があるゲームは大抵、この枠にカテゴライズされます。
 その中でも、特に面白くないものを「クソゲー」、どこか一部分でも笑って楽しめるものを「バカゲー」と、私は勝手に分けているわけですが、この「暴れん坊天狗」は、その「バカゲー」の中でも、特に記憶に残る珠玉の一品です。

 いやね、「どこか一部分でもトチ狂った」と書きましたが、この「暴れん坊天狗」、そのサジ加減が奇跡的に素晴らしいんですよ。
 本作は横スクロールのシューティングゲームですが、ゲーム部分は非常によく作りこんであります。自機のやられ判定が大きく、変な慣性が効くので操作が難しいのですが、そこまで計算に入れてバランスとったんじゃないかと思えるくらい良い出来。
 ま、ヘンな部分が無いか、と言えばそんなことは全然なくて、どう見ても背景なのに当ると瀕死直前まで体力が激減する(本作は残機制ではなく、体力ゲージ制)垂直ビームや落雷は恨み言の一つも言いたくなってきますけどね。
 ゲーム部分の出来がいいのは、当然といえば当然で、本作を開発したのはあの「源平討魔伝」の開発者。下積みがあるもんで、そりゃ良く出来ているのも頷けます。

 それほど(難しいけど)ゲームとしての出来がいい本作、それでは、なにがいったい「トチ狂っている」のか?

 それ以外全部。

 まぁタイトルが「暴れん坊天狗」ってだけでかなり壊れてるんだけど、とにかくそのストーリー、システム、キャラクターからエンディングまで、その常人の想像の遥か斜め上を行く壊れっぷりは、尋常じゃないです。


 タイトル画面からしてコレ。
 なにかやってくれそうなあらぬ予感がビンビン来ます。

 まず、舞台は現代のアメリカです。これはいいですね。
 そして主人公(=自機)。
 これはもう、タイトルキャラクターですから一目瞭然ですね。天狗です。
 ……はい、天狗です。僕らは天狗の面を操作して、アメリカを破壊救います。

 ストーリーは、

「三人の王子敵対する時、メリケン国に凶星来たる。凶星あしきわざを行ひ、この世を我がものにせんとす。平和は空から打たれ、大地ゆれうごき、天地あれくるひて、世の人々みな亡者と化す。」

 これら「悪い宇宙人」からメリケン(=アメリカ)を救う為に、我等が日本国の天狗様が、なぜかわざわざ太平洋を越えて大活躍するのです。すげぇぜ、アメリカ国辱もののストーリー(笑)。
(ちなみに海外版では、天狗ではなく落ち武者の生首がアメリカを救うらしいです。アメリカ人もあまり嬉しいとは思わないのでは?)

 さて、ストーリーの壊れっぷりを堪能して頂いた後は、システムの壊れっぷりを堪能していただきます。
 対空ショットが目玉で、対地ショットが唇です。
 これでもかと襲い来る敵機を、目玉と唇飛ばして次々と撃破する我等が天狗様!
 このご時勢、こんな過激な芸風の方は、お笑い芸人にもいません。

 凄いです。私、神宗教の類は一切信じていませんが、天狗様なら信じてもいいとすら思えてきます。

 天狗様もシューティングゲームの自機という扱い上、無論パワーアップをなされます。もちろん、天狗様のそれは我々人間の文明の生み出した戦闘機とは一味違います。
 人間を食います。OH! ジャパニーズ・カニバリズム、恐るべし!
 天狗様は敵機やビルなどを軽快に破壊なされるのですが、時折、その中から「HELP!」と叫んで手を振っている人間がいます。天狗様はその人間達を食し、パワーアップを遂げられるのです。
 天狗様のタメに贄となるのですから、メリケン人も本望でしょう。

 もうここまで来たら何がきても驚きませんが、トドメはボスキャラの皆様方。


 1面、自由の女神


 2面、謎の巨大マッチョ親父


 最終面、宇宙人


 そしてエンディングで唐突に出てくる厳島神社。

 もう、なにからなにまでワケが解りません。誰か教えてくれ!
 このゲームの企画者は、本物の天才か本物のアレか、どちらかだと思います。
 とりあえず、厳島神社が天狗様に関連しているということは、広島県出身者として誇りにして生きて生きたいと思います。

 ……たぶん来週には忘れていると思いますが。

(2006.08.14)